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注目校・尚志相手に「今、できること」を全力でやり切った学法石川。指揮官「ナイスゲーム」「感動しました」

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学法石川高は注目校・尚志高相手に堂々の戦い。後半40+2分の失点で敗れたが、好勝負を演じた

[11.7 選手権福島県予選決勝 尚志高 2-1 学法石川高 西部サッカー場]

「今、できること」を全力でやり切った。2連覇を狙った学法石川高は、U-22日本代表CBチェイス・アンリ(3年)擁する注目校・尚志高相手に見る人の心を打つような戦い。前日に延長戦、PK戦まで戦っているにも関わらず、最後まで戦い、走り続け、プリンスリーグ東北優勝校を飲み込みかけた。

 この日は怪我を抱えるエースFW佐藤武流(3年)がベンチスタート。前半はボールを握られ、押し下げられてしまったものの、PAでのカバーリングやしっかり競ることを徹底していたチームは相手の攻撃を凌ぎ続ける。

 チームメートを鼓舞する右SB原田雄斗(3年)や、強度高い守備を見せるCB円道竣太郎主将(3年)の存在も大きく、各選手が良く集中していた。前半28分にはクリアボールを拾われ、クロスから失点したものの、前半は被シュート3でこの1失点のみ。逆に1年生FW金子晴流が前線で健闘し、前半10分には鋭い動きを見せていたFW平田愛斗(3年)のクロスにMF森隼真(3年)が決定的な形で飛び込むシーンもあった。

 当初は体力面も考慮して後半10分からの勝負を想定していたようだが、佐藤とFW阿部吉平(2年)を後半開始から同時投入。もちろんリスクもあったが、前に出る覚悟を持って後半に臨んだ学法石川は開始直後に連続で決定機を作り出して見せる。

 ここでは取り切れなかったものの、円道中心に全員で相手の攻撃を食い止め、何とか足を伸ばしてそのシュート精度を乱すなど1点差を継続。そして、33分にロングスローから円道が同点弾を叩き込んだ。ここで試合を落ち着かせる考えもあったはずだが、稲田正信監督は「自分も強気に行こうと。子どもたちに強気に、と言っているのに守りに入るのは……」。前に出たチームは35分、原田のパスから阿部が右足シュートを打ち込み、38分にも円道のインターセプトと縦パスから佐藤が決定機を迎える。

 だが、シュートはわずかにゴール左へ。学法石川はこの後も前に人数を掛けて勝ち越し点をもぎ取りに行ったが、40+2分、敵陣での左ロングスローのカウンターから決勝点を奪われた。

 涙のロッカールームで、稲田監督は「ナイスゲームだった。感動しました」と選手たちにメッセージ。そして、最後には「今日はこれ以上出せない。ナイスゲーム。お疲れさまでした」と今できることの全てを出し切った選手たちを労っていた。

 尚志相手に引いて守り勝つことを狙うのではなく、前にも出て勝負した80分間。稲田監督は「もっと走れないし、もっとキツイんじゃないかなと思っていましたけれど、相手が走らせてくれましたし、(学法石川の選手たちから)高校生活をサッカーに懸ける気持ちが伝わってきたので。きょうもまた一つ成長させてもらいました。まだまだやらなければいけないけれど、今のできることを最大限やってくれました。結果は仕方ない」。

 これまでは組織力で差を埋めようとしてきたが、尚志に対抗するため、また全国で戦うために鍛えてきた個を発揮。その上で足りない部分をグループで粘り強く埋めることもこの日はできていた。

 今、できることを精一杯やり切った。だが、結果は1点差で惜敗。稲田監督は1、2年生たちに「本当、来年(選手権に)行きたいんだったら、もっとこだわっていかないと上に行けない」とメッセージを送っていた。また、円道は、「この悔しさはピッチに立って経験したり、ベンチに入って実際に肌で感じた選手にしか分からない悔しさだと思うので、これから冬とか夏にまた苦しい時期がやってくるので、この悔しさを忘れずに、来年こそはここでもう一回リベンジという形で尚志を倒して、全国に行ってくれればと思います」と後輩たちに期待。先輩たちが力を出し切って敗れる姿を見た1、2年生たちがその姿勢を受け継ぎ、よりこだわって成長を続けて来年、福島の大きな壁を超える。

(取材・文 吉田太郎)
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