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[MOM3761]青森山田MF藤森颯太(3年)_国立の舞台で圧巻の3アシスト。青森育ちのスピードスターは「最後はみんなで笑って終わりたい」

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3アシストでチームの勝利に貢献した青森山田高MF藤森颯太(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.8 選手権準決勝 高川学園高 0-6 青森山田高 国立]

 不思議とここまでは結果が付いてこなかった。周囲が明確な数字を残していくにもかかわらず、なかなかゴールもアシストもできない試合が続いていたが、この大事な国立の舞台で3アシストを決めてしまうのだから、恐れ入る。ただ、それを追求するのも、すべては勝利のため。みんなで掲げた日本一のため。

「2年連続決勝で負けて準優勝という結果に終わっているので、自分たちの目標でもある三冠というのも懸かっていますし、何としても優勝したいです」。

 青森山田高(青森)のスピードスター。MF藤森颯太(3年=青森山田中出身)がこの日は、自慢の走力と同じぐらい磨き上げてきた右足の高精度キックで、チームの勝利を力強く引き寄せた。

 準々決勝でも東山高(京都)に苦戦を強いられながら、何とか逆転で勝ち上がってきた青森山田。選手たちにとっては初めての国立競技場。相手は『トルメンタ』で大会の話題をさらっている高川学園高(山口)。少ないチャンスを生かして勝ち上がってきているチームであり、得点を奪えない時間が長くなればなるほど、相手に“やれる感”が出てくるのは百も承知。だからこそ、何より大事なのは先制点だった。

 前半3分。その右足が、高川学園の希望を早くも打ち砕く。左サイドで青森山田が得たFK。藤森が正確に蹴り込んだ軌道は、FW名須川真光(3年)の頭にドンピシャ。飛び付いたDFも掻き出せず、ボールはゴールネットへ到達する。

「試合の立ち上がりということで、大事なセットプレーになってきますし、良い位置でFKをもらえたので、いつもやっているようにボールを蹴り込むだけという形で、あとは『合わせてくれるかな』という印象で蹴ったんですけど、上手く味方の選手が入ってくれて、開始3分ぐらいで先制できたのは非常に良かったかなと思っています」。まずは、1アシスト。

 前半26分。その右足が、みんなで練り上げたアイデアを具現化する。ここも左サイドで手にしたCK。キッカーの藤森が中央を確認してから丁寧に入れたボールを、大きく回り込みながらフリーで飛び込むDF丸山大和(3年)が、豪快なヘディングでゴールネットへ突き刺す。

「前日練習でトリックの練習をしていて、ファーのボールの供給を自分が求められている中で、練習では少しボールがズレてしまったり、なかなか合わない場面が多かったんですけど、それを修正してきっちり良いボールを供給できたので、あとは大和がしっかり決めてくれて良かったかなと思っています」。鮮やかに、2アシスト。

 後半29分。その右足が、チームの勝利を決定付ける。3点をリードした状況の中、名須川にいったんパスを預けると、そのままインナーラップ。抜群のスピードでマーカーを追い越しながら、左足でまたぎつつ素早く右足クロス。FW小湊絆(2年)が中央から丁寧にゴールへ叩き込む。

「相手に前に入られながらも、最後まで駆け抜けて、相手の前に入れ替わって、そこからクロスまでというのは考えていたんですけど、少しフェイントを入れながらクロスを上げないで、コースを少し空けて、股を狙ってクロスを供給して、そこをうまい形で決めてくれたかなと思っています」。スピードとテクニックで、3アシスト。国立の芝生の上で、緑の11番の右足が猛威を振るう。

 自らゴールを奪うチャンスも、確かにあった。前半28分と42分にはともにMF松木玖生(3年)のパスから、フィニッシュまで持ち込んだものの、前者はGKのファインセーブに阻まれ、後者は枠外に。大会初ゴールはお預けとなった。

「しっかり点を決めたかった気持ちはありますけど、チームの勝利が大前提だと思うので、それに貢献できたということは嬉しく思います。でも、次の決勝で勝てないと意味がないので、今はそこに向けてチームで良い調整をしようという段階です」。自らのゴールも欲しいが、それを追求するのも、すべては勝利のためであり、みんなで掲げた日本一のため。その想いが変わることはない。

 中学時代から青森山田の一員として、そのプライドを胸にボールを追い掛けてきた。このユニフォームを纏って戦えるのも、あとわずかに1試合だけ。望んでいる結末は、あえて言うまでもないだろう。選手権を前に、藤森が話していた言葉が印象深い。

「中1からみんなで、同じピッチでずっと6年間仲間と切磋琢磨してきたというのもあって、応援してくれる仲間にも感謝していますし、日頃の感謝の気持ちはやっぱりピッチでしか現わせないので、最後はみんなで笑って終わりたいですね」。

 最高の仲間と、みんなで笑って終わるために。6年間の集大成。藤森が最も欲しいものは、国立で戦う最後の1試合も、もちろん変わらない。

(取材・文 土屋雅史)

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