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[新人戦]選手権3位の先輩超えへ、高川学園がバチバチの公式戦初戦。立正大淞南との好勝負を制す

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勝利の瞬間、高川学園高イレブンに笑顔が弾けた

[3.12 中国高校新人大会1回戦 立正大淞南高 1-2 高川学園高]

 新生・高川学園が、バチバチバトルの公式戦初戦を制す――。第14回中国高校新人大会が12日に開幕し、1回戦屈指の好カードとなった立正大淞南高(島根)対高川学園高(山口)戦は、高川学園がFW山本吟侍(1年)の2得点によって2-1で競り勝った。高川学園は13日の準々決勝で八頭高(鳥取)と戦う。

 今冬の全国高校選手権で14年ぶりの3位に入った高川学園は、山口県高校新人戦が中止となったため、これが新チームの公式戦初戦。同じく新チーム公式戦初戦の立正大淞南との名門対決は、キックオフ直後から両校の選手たちが大声を響かせ、バチバチにバトルし合うハイテンションな戦いとなった。

 ともに公式戦経験がないためか、やや空回りするくらいの序盤。その中で立正大淞南はU-17日本高校選抜歴を持つFW香西銀二郎(2年)やMF進海翔(2年)が強引に縦へ割って入ろうとし、注目ドリブラーのMFダ・シルバ・イゴル・ヤン(2年)がファーストタッチからスピードに乗った仕掛けを繰り出そうとする。

 高川学園は、レギュラーとして選手権3位を経験しているCB岡楓太(2年)が出足の速さと身体の強さを活かした守りで対抗。また、右SB藤井蒼斗(1年)の的確なカバーリングなど決定打を打たせない。攻撃面では右のMF武藤尋斗(2年)が鋭いドリブルで突破口に。立正大淞南も昨年の経験者であるゲーム主将MF肥塚秀斗(2年)がルーズボールに素早く反応したほか、CB三輪陽斗(2年)が空中戦で圧倒して見せるなど0-0で試合を進める。

 高川学園は前半1本目のセットプレーで話題の“トルメンタ”を採用しようとしたが、立正大淞南に警戒されたことで取りやめるシーンもあった。その高川学園は21分、空中戦で苦戦していた注目FW山本吟が左中間への抜け出しから強烈な左足シュート。立正大淞南も23分、この日非常に多くボールに絡んでいたFW多田侑磨(2年)が香西とのワンツーからフィニッシュに持ち込む。

 高川学園の江本孝監督は「バチバチにさせて頂けるのがありがたいです。それも初戦から」と語っていたが、ともに新チームとは思えないような球際激しい攻防戦は、0-0のまま前半を終了した。

 後半、立正大淞南は右サイドで柔らかいドリブルを見せていた右SH野田叶(2年)とヤンのサイドを入れ替えると、開始直後に野田の展開から右のヤンが仕掛けて決定機を作り出す。高川学園も後半に存在感を増したFW梅田彪翔(2年)のドリブルなどで対抗。好勝負は高川学園期待の1年生10番がスコアを動かした。

 後半10分、高川学園は右中間でFKを獲得すると、山本吟が右足で壁の外側から巻く低弾道シュート。これがニアサイドのゴールネットに突き刺さり、リードを奪った。歓喜を爆発させた高川学園はさらに16分、山本吟が前線で競り勝ち、抜け出した梅田の右足シュートが左ポストをかすめる。

 高川学園は21分、GK福島真斗(2年)が立正大淞南FW多田に放たれた決定的な一撃をビッグセーブ。また、苦しい時間帯でMF山本陽主将(2年)がハードワークを継続するなど勢いが落ちない。だが、立正大淞南は25分、連続攻撃で押し込むと香西が「いつもの(練習の)3人シュートの形で楔に入って前を向いてフリーだったので打った」という左足シュートを決めて同点。立正大淞南が喜びを爆発させた。

 紙一重の勝負をモノにしたのは高川学園だった。後半31分、交代出場FW藤岡大誠(2年)の仕掛けからPA右へ流れたボールに山本吟が猛然とアプローチ。やや遅れて飛び出してきたGKよりも先にボールに触れてファウルを誘い、PKを獲得した。これを山本吟が自ら決めて2-1。この後、立正大淞南は同点機を作り出していたが、GK福島やCB岡、CB中島颯太(2年)中心に守り抜いた高川学園が強豪対決を制した。

 高川学園は選手権ベスト4からの新チームのスタート。江本監督は「(自分が監督としてベスト4からのスタートは) 経験したことがないからモヤモヤします」と苦笑するが、「でも子供たちには勘違いしないようにトレーニングでは求め続けてきたので。(先輩が連れて行ってくれた選手権、残してくれたものに)雰囲気や肌で感じられているものがあるから自分達のプラスにしていきなさい、と」と伝えているという。

 インターハイ3位の星稜高(石川)、同8強の岡山学芸館高(岡山)、宮城の名門・仙台育英高、神奈川の強豪・桐光学園高を破っての選手権4強は価値のあるもの。一方で青森山田高(青森)に0-6で敗れた悔しさは新チームの選手たちの心に刻み込まれている。

 今年、武藤とともにチームリーダーを務める山本陽は、「青森山田戦であのような負け方をして強度の違いだったり、みんなチーム全員で変えていかないといけないなと話して、練習から意識してやっていました。今日の試合では入りから全員が声を出すというのを意識して流れに乗って、強度の高さは意識できていたんじゃないかと思います」。青森山田のような強度を出すことはまだできていない。だが、あの敗戦から学んだこととして、精力的に身体作りや走力強化。こだわってきた部分を表現した公式戦初戦でもあった。

 山本陽は「今日はみんな気迫があって、本当に勝ったときに喜びを爆発させていましたし、こういうゲームが続くと成長していけるんじゃないかと思います。自分たちは去年の代よりも力が無いと言われているのがあって、でも、それは『伸びしろがある』と言い換えられるので、先輩たち以上に成長して追い越したい」と誓った。江本監督が「己に勝つ」ことを求めていたように、まずは日常含めて先輩たちに追いつくこと。険しい道程を再び乗り越えて、1年後の選手権は国立で笑う。

(取材・文 吉田太郎)

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