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小学生の頃から憧れていたチームで目指す日本一。青森山田の新守護神、GK代田昂大が”声”で示す絶大な存在感

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青森山田高のゴールマウスを託された新守護神、GK代田昂大

 失点をしないことは、もはや当然のノルマ。シュートすら1本も打たせないことを求められているチームのゴールキーパーに、掛かるプレッシャーの大きさは想像もつかないが、それすらも楽しんでしまうようなメンタルが、この男からは感じられる。

「今年も期待は凄くされると思うんですけど、その期待や重圧に負けないような、それを跳ね返すぐらいのメンタルの強さを持って、試合でも良いパフォーマンスを続けていきたいですね。去年を超える結果は出ないですけど、内容的に去年を超えたいと考えていますし、そういうチームを作っていけたらなと思います」。

 小学生の頃から憧れていたチームで、日本一を目指す権利を手繰り寄せた青森山田高(青森)の新守護神。GK代田昂大(2年=サガン鳥栖U-15出身)が明るく発散していくエネルギーは、三冠王者のディフェンス陣をポジティブに勇気付けていく。

 とにかく声が出る。厳しい声も、鼓舞する声も、このゴールキーパーは積極的に言葉として発していく。「自分は他のキーパーに比べて身長が小さいので、それを他でどう補おうと思った時に、コーチングの声だったり、セービングだったり、ポジショニングだったり、そういうところでカバーしていこうと自分でも決めていますし、それはコーチにも言われていて、やっぱり存在感を出したいので、特にコーチングの部分を頑張っています」。

 憧れているのは、日本サッカー史に残るレジェンドだ。「川口能活選手が好きですね。自分が生まれた時ぐらいの選手なので、実際のプレーは見たことがないんですけど、動画とかで調べて、あの迫力だったり、身長を他の部分でもしっかりカバーできている部分は参考にしていますし、ああいうキーパーになりたいなと思っています」。川口同様に177センチという身長を感じさせないパワフルさを、代田も身に付けている。

 三冠を勝ち獲った正守護神からは、学ぶことが多かったという。「(沼田)晃季さんは凄くストイックな方で、いろいろなことを真面目にやっていましたし、安定感もあったので、すべてを含めて自分の力ではまだまだ試合に出られなかったなと。晃季さんだからこそ全国優勝できましたし、信頼感を得ていたのかなと思っています」。

 昨シーズンの主戦場はプリンスリーグ東北。「尋さんはキーパーの中だったら一番仲がいいと思っていて、結構笑わせてくれるので、好きです(笑)。尋さんもすべての部分で飛び抜けているというか、安定しているので、自分は安定感の部分で負けていたのかなと思います」。基本的には鈴木尋(3年)が試合に出ていたが、代田も2試合でスタメンの機会を得た。

「どっちもモンテディオ山形ユース戦で、1試合目は後半の終了直前に追い付かれて、そこから最後に劇的に決めて勝ったんですけど、その失点は自分の判断ミスでもあったので、それで引き分けていたら自分の責任にもなってしまうことで、1失点の重みを知りました。2試合目は2年生主体でやった試合で、3年生のいる相手に2-1で勝ったんですけど、その試合も直接FKを決められて、ボールを見送ってしまったので、失点の重みが凄く大きいなと感じました」。それぞれの失点から、ゴールキーパーに求められる最大の仕事を再確認することができた。

 中学時代はサガン鳥栖U-15でプレーしていたが、実は以前から緑のユニフォームに憧れていたという。「小学生の頃に廣末陸選手を見て、『選手権に出たい』という憧れがあったんです。ユースも確かにいいんですけど、やっぱり青森山田で全国に出て、優勝したいという想いがずっと頭の中にはあって、中3の時にセレクションがあると聞いて、そこで『チャレンジしよう』と思って、そこに懸けましたし、自分の気持ちを貫きました」。進路を1本に絞って受けたセレクションに見事合格。青森山田の門を叩いた。

 この日のゲームでも、キャプテンのDF多久島良紀(2年)を欠いたDFラインは昨シーズンから総入れ替えとなっているが、安定したパフォーマンスを披露。代田もチームメイトへの信頼感を口にする。

「今のメンバーはプリンスも県新人も一緒にやってきている仲ですし、2年間ぐらいずっと一緒にやってきているので、コミュニケーションも取れていて、そこに多久島が入ってくれば信頼感もより生まれると思うので、コミュニケーションの部分で困ることはないですね」。そもそも圧倒的な安定感を有した昨年のDFラインも、前年からは全員が入れ替わっていた。“先輩たち”の凄まじい成長を見ていた彼らにとって、目指すべき到達点は明確に描いている。

 守備陣に求められるハードルを問われ、答えた口調が印象的だ。「1試合を通じて“被シュートゼロ”を目指すというのは本当に凄いことなので、プレッシャーは感じていますけど、自分たちは結構シュートを打たれているので、まだまだだと思います。1本を打たれて、その1本が決まってしまったらキーパーのせいなので、そこに掛かる責任は大きいですね」。言葉とは裏腹に、表情には笑顔が浮かぶ。この守護神、なかなかの強心臓だ。

 イメージは、もちろんある。被シュートゼロで試合を終える光景も、その先に待っている日本一に沸く自分たちの喜ぶ姿も。王者のゴールマウスを託されたゴールキーパー。たとえ鉄壁の守備陣が崩されたとしても、青森山田の最後尾には、代田という絶大な壁が立ちはだかる。

(取材・文 土屋雅史)

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