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JFAが鈴鹿の「八百長未遂」認定!! 元役員らにサッカー活動停止処分、詳細に明かされた不正の全容は…

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 日本サッカー協会(JFA)の規律委員会は5日、JFLの鈴鹿ポイントゲッターズに八百長未遂行為があったとして、2020年の当該試合を没収試合とした上で、500万円の罰金処分を下したと発表した。行為を主導した元役員には2年間のサッカー活動停止処分。また代表取締役社長には1か月間、チームオーナーには3か月間のサッカー活動禁止処分が下されている。

 JFAの発表によると、問題が起きたのは2020年11月29日に行われたJFL最終節のソニー仙台戦。対戦相手のソニー仙台の結果次第で他3チームにJ3昇格のチャンスがあり、ソニー仙台に敗れたほうが翌年以降の鈴鹿の昇格のチャンスが大きくなる可能性があるという中、試合2日前に行われたスタッフミーティング(監督在席、選手不在)の場で、チームオーナーが「もう昇格も降格もないので、この試合は必ず勝たなければいけない試合ではない。負けてもいい試合なので若手や出場機会のなかった選手を使ってほしい。仮に0対1で負けていて、残り時間が少ない場合、日本vsポーランド戦の時のように追いつこうとせずに、そのまま負けるという選択肢を選んで欲しい」と発言した。

 また試合1日前のチームミーティング(監督・選手在席)では元役員が意図的に試合に負けるよう指示。出場する数選手に対して個人名を挙げ、「同一地域の他チームに昇格されないように負けて欲しい」「試合の終盤に3対0以上でリードしていなかった場合、DFラインとGKの連携ミスからオウンゴール等で失点して欲しい」「わざと失点するようにペナルティーエリア内でファールをしてPKを与える」と具体的な行為も指示していた。

 その後、選手からの反発を受け、代表取締役社長が「クラブとして不正行為をしてほしいという意図は断じてない」「明日チームは全力で戦ってほしい」と説明。監督・選手と「正々堂々と戦う」意思を確認するために誓約書を交わした。誓約書には代表取締役名義で「クラブは選手に場合により負ける選択肢を打診したが、これを撤回し、正々堂々と戦おうと指示した」、14選手の署名入りで「私達選手監督スタッフはピッチで正々堂々と戦う」と記載。一方、5選手が試合に参加せず、遠征から外れた。

 試合は0-1で敗戦。もっともJFAによると「意図的に負け試合をしたことをうかがわせる事情は見られなかった」といい、規律委員会がスイス・Sportradar社に依頼した調査でも「各国におけるスポーツ賭博等に絡んで試合結果を操作しようとする動きや徴候は確認されず、また、選手を含む関係者といわゆる八百長に関係する犯罪組織等との関連性も確認されなかった」としている。

 こうした八百長の疑いについて、国際サッカー連盟(FIFA)は懲罰基準を設けている。「八百長行為」とは「作為若しくは不作為により、直接若しくは間接に、試合の経過、結果若しくはその他の側面に不当に影響を与え若しくは操作する行為、又は、何らかの手段によりそれらを共謀し若しくは企てる行為」。違反した者には「最低5年間のサッカー関連活動の禁止処分及び最低1000万円の罰金を科す。重大な違反の場合には、永久的サッカー活動の禁止処分を含むさらなる厳しい懲罰が科されるものとする」という罰則が定められている。

 今回の鈴鹿の行為において、争点となったのは「不当性」だ。JFAによると、この規定においては「行為の目的(動機)が金銭的な利得であることを要件とはしていない」ため、金銭目的かどうかは不当性の判断には影響しない。一方で「①リーグ戦の終盤において、来シーズンを見据えて若手選手に経験を積ませるために、敢えて当該試合の勝ちにこだわらずに若手選手を積極的に登用したり、②予選リーグの最終戦等において、他チームの試合経過等を勘案して、以降の対戦相手を有利にするために、試合の途中から消極的な戦術を採るといった行為」は不当性がなく、「チームの育成方針やスポーツ上の戦略として許容される」と解釈されている。

 その上でJFAは鈴鹿の行為について「かなる場合にこの『不当性』が認められるかは、個別の事案に即して慎重に検討する必要があるが、少なくとも、選手やチームの関係者に対して、試合開始前に、当該試合に積極的に負けるように指示する行為は、『試合の経過、結果に不当に影響を与え、操作する行為』に該当すると解すべきである」と判断。不当性があると認定した。スイスのCavaliero & Associates法律事務所にも参考意見を依頼し、同様の意見を受け取っているという。

 こうした認定に基づき、JFAは関係者の懲罰について審議。元役員の発言は「選手やチームの関係者に対して、ソニー仙台戦の開始前に、当該試合に負けるために選手名を挙げて具体的な失点方法まで指示していることから、試合開始前に、当該試合に積極的に負けるように指示したといえ、懲罰基準『試合の経過、結果に不当に影響を与え、操作する行為』にあたる」と判断した。一方、この発言はオーナーの発言に誘発されていたこと、金銭的な利得を目的とするものではなかったこと、ソニー仙台戦における意図的な敗退行為はなかったこと、すでにチームを離れていることが「酌量すべき事情」とされ、「最低5年間のサッカー関連活動の禁止及び最低1000万円の罰金」という基準から大幅に減刑された「2年間のサッカー関連活動の禁止」処分となった。

 またオーナーの発言は「『仮に0対1で負けていて、残り時間が少ない場合』という限定、すなわち、試合の流れを見ながら戦術を変更するという緩やかな方針の指示であり、試合開始前に、当該試合に積極的に負けるような指示があったとはいえないことから、懲罰基準の『試合の経過、結果に不当に影響を与え、操作する行為』には当たらない」と判断された。一方、「チームのオーナーという影響力の強い立場にありながら、本件行為(元役員の行為)を誘発する発言をして本件の発端を作っており、その責任は重いといわざるを得ない」とされ、「3か月間のサッカー関連活動の禁止」処分が下された。

 代表取締役社長は「チーム運営会社の代表取締役社長として本件行為を止めなければならなかったにもかかわらず、これを放置した責任は重いものの、最終的には、誓約書を作成するなどして試合の操作が起こらないように努めたことは酌量すべき情状と認められる」と判断され、「3か月間のサッカー関連活動の禁止」処分が下された。

 加えて元役員の行為は「発言がチームとしての指示であったことを社長自らが認めていることを併せ考えれば、元役員の発言がチームとしての指示であったことは明らか」と判断。チームにも懲罰が下された。懲罰基準に照らせば「当該試合の没収、競技会への参加資格の剥奪及びその他の追加的懲罰」が下されることになるが、「本件行為に何らの責任も負わない選手にとって著しく不利益を課す結果となる」とし、「当該試合の没収処分及び追加的懲罰として500万円の罰金」が相当とされた。

 またJFAは最後に「本件において、チーム幹部からの指示であったにもかかわらず、それを毅然として拒否し、試合のインテグリティを保全し、全力でプレーした選手及び監督の勇気ある行動は称えられるべきであり、当委員会として選手らと監督に対して、敬意を表することを付言する」としている。

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