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負けた試合でも「絶対に点を」。静岡の10番、富士市立FW山藤大夢は人一倍のこだわりを持ってゴールへ

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U-16静岡県選抜で10番を背負った富士市立高FW山藤大夢は相手の脅威になるも、悔しい無得点

[4.16 高円宮杯プリンスリーグ東海第3節 富士市立高 0-1 清水桜が丘高 富士市立高G]

 試合後、注目FWはピッチ脇で仰向けとなり、両手で顔を覆っていた。「前節勝って、連勝を狙って、自分自身も前節2点決めて今回も決めて勝つという気持ちで入りました。なかなかチームも点獲れずに自分も点を獲れなくて……」。自称“オレが、オレが、というタイプ”のストライカー、富士市立高FW山藤大夢(3年=FCV可児出身)からはチームが勝てなかったこと、自身が無得点に終わったことへの感情が溢れ出ていた。

 山藤は昨年、05年の早生まれとしてU-16静岡県選抜に選出。10番を背負い、国体出場を懸けた東海予選・愛知戦で先制点を決めている。本大会が開催されなかったために全国舞台での活躍をすることはできていないが、すでに関東の強豪大学への練習参加をするなど、高い評価を得ている点取り屋だ。

 この日は4-3-3システムの左FWとして先発。前半は攻撃を組み立てる部分に尽力する形となっていたが、28分に強烈な左足シュートを見舞い、2トップの一角へ移行した後半の12分には右中間でスルーパスに反応して右足を振り抜いた。

 抜け出しを最大の武器とする山藤にとって、得意の形だったものの、シュートはDFに当たってサイドネット。その後も中央からゴールを目指し続けて左足を振るシーンもあったが、時に3人掛かりで対応する清水桜が丘高の守りを破ることができない。

「ピッチが濡れているとかあって上手くパスが回らなくて、相手も(ガツガツ)来ていてやりにくいのがあった」と山藤は振り返る。後半20分に失った1点を追う展開の中、山藤は左サイドから仕掛けて突破。クロス、ラストパスへと持ち込んでいた。定評のある抜け出しだけでなく、個でDFを剥がす力、そして左右両足のシュートも見せた10番だが、清水桜が丘の守りは鉄壁。ゴールをもたらすことはできなかった。

 右利きだが、左足もプレースキッカーを任されるほどのレベル。小学1年時に右足を痛め、「(小学1年生で)休むという選択肢がなくて、右で蹴ったら痛いから左で蹴ろうと。あとはチームに左利きいなくて、当時、本田圭佑選手に憧れていたのもあって、左利きって格好良いなと、(右足が治った後も)左足でも蹴り続けていました」。入りは「格好良いから」だったが、左右両足のパワーショットは富士市立の杉山秀幸監督も驚く武器になっている。

 その指揮官は、「点の獲り方の幅を広げてもらえれば」。まだまだ強引にDFを剥がしに行ってロストするシーンもあるだけに、我慢して周囲を活用する力も必要だ。上手く“サボっているように見せながら”1チャンスをモノにする力もある。本人は「やっぱりどこの位置でもゴールを狙えるようになりたい」と、1対1からのシュートやクロスからのシュート、ターンからの崩しなどにも挑戦中。もう一段階上へ行くために個を磨きながら、仲間と連動して決める力も高めて行く。
 
 得点へのこだわりは人一倍だ。「本当に意識しています。負けた試合でも自分は絶対に点を獲って結果を残す。あと、勝った試合でも正直、得点者の名前に自分が入っていないと悔しい。チームが勝つのが第一。でも、勝つなら決めて勝ちたい。泥臭くてもなんでも良いから(記録の得点者欄に)山藤大夢という名前を」。そのためにまだまだやるべきことがあると理解している。

 大学への練習参加でプレースピードも、守備の強度も、自分の持っていた“基準”との差を実感。また、3月の静岡県高校選抜の活動で、同じく小柄ながらも年代別日本代表歴を持つMF高橋隆大(静岡学園高)やMF安藤阿雄依(清水ユース)が強烈な武器を備えていることを再確認し、FW斉藤柚樹(清水ユース)、FW伊藤猛志(磐田U-18)からストライカーの風格と身体の強さや守備の献身性を学んだ。

「追いつくために、もっと頑張らないといけない」

 今年、自分の名と富士市立の名を広めて次のステージへ。この日の悔しさや人一倍の得点意欲、ライバルたちの存在を糧に練習を重ね、どんな試合でも得点するストライカーになる。
 
(取材・文 吉田太郎)
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