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「メンバー交代でどちらがパワーアップするかという展開」で明暗分かれた柏と名古屋

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現役時は“ドーハの悲劇”も経験した長谷川監督(上)と井原監督

[8.30 天皇杯準々決勝 柏 2-0 名古屋 三協F柏]

「負けて悔しいです、本当に」。試合後の会見で、名古屋グランパス長谷川健太監督は、開口一番感情を露わにした。

 試合後には、アウェーに駆けつけたサポーターから健闘に拍手が送られる一方で、一部からは敗戦に厳しい声が飛ぶ場面もあった。「サポーターが怒る気持ちもわかりますし。応援にきてくたファミリーのみなさんのためにも、なんとか勝たなければいけない試合だった」。指揮官はタイトルを見据えていた天皇杯での敗退に唇をかんだ。

 4日前のリーグ戦から、名古屋は7選手、柏レイソルは8選手を入れ替えて臨んだ試合は、互いに決定機がないまま最初の45分を終え、後半も同様の展開で時間は推移していた。「メンバー交代でどちらがパワーアップするかという展開」(長谷川)で、後半10分を過ぎたタイミングで、両監督はほぼ同時に最初の交代に踏み切る。柏は同15分にFW細谷真大とMFマテウス・サヴィオ、名古屋は同16分にFW永井謙佑、DF森下龍矢、DF中谷進之介と互いに主力をピッチに送り込んだ。名古屋は「後ろを補填しながら前のパワーをアップ」と起用の意図を長谷川監督は明かす。

 スコアが動いたのは、柏の交代から9分後だった。サヴィオのアシストから、MF戸嶋祥郎が先制点をもたらした。さらに、後半アディショナルタイム2分にはサヴィオが2点目を挙げて勝利を確かなものとした。途中出場のサヴィオが1G1Aと試合を決めるかたちとなり、柏の井原正巳監督は「交代で入ってくれた選手が自分の役割をまっとうしてくれた」と評価する。

 筑波大時代は長谷川監督の2学年後輩であり、日産自動車、日本代表でもともにプレーした井原監督は、現役最多勝利数を誇る敵将に対し「胸を借りるつもりで戦わせてもらいました」と意気込んでいたという。2016年、井原監督が福岡、長谷川監督がG大阪を率いていたときにも対戦しているが、この日が井原監督にとって対長谷川監督初勝利となった。「初めて勝つことができてほっとはしていますけど、まだまだ指導者としての実績はこれから積み上げていかなければいけない」と兜の緒をしめた。

 一方、敗れた名古屋の長谷川監督は、「出た選手はみんながんばってくれた。メンバーのチョイスであったり、交代であったり、反省しなければいけない点はあった」と自戒の念をこめる。「残りのリーグ戦、ルヴァン杯に全力を傾けたい」と残りのタイトルへ視線を向けた。

(取材・文 奥山典幸)
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奥山典幸
Text by 奥山典幸

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