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[選手権]史上初のPK戦4勝、鵬翔の「気持ちの強さ」が生んだ初V

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[1.19 全国高校選手権決勝 鵬翔2-2(PK5-3)京都橘 国立]

 歴史が変わった。宮崎県勢として初の日本一。頂点に上り詰めた鵬翔(宮崎)の松崎博美監督は「最高ですね。気持ちの強い子ばっかりで、最高です」と、満面の笑みで教え子たちをねぎらった。準決勝の星稜戦に続いて2度のビハインドをそのたびに追いつき、最後はPK戦で勝ち切る。1大会でPK戦で4勝を挙げたのは、全国高校選手権が首都圏開催となって以降、史上初の快挙だ。

「こんな経験はない。気持ちの強いPKをずっとやってくれた。技術以上に、気持ちで押し切った」。相手GKにコースを読まれようと、強いキック、コースを狙ったキックでPKを決める。5人目のキッカーを務めたのはGKの浅田卓人(3年)。落ち着いてゴール左に蹴り込み、初優勝を決めた。

「PK戦に持ち込めば、勝つ自信はあった。自分が決めたら勝ちだった。迷うことなく、思い切り蹴った」。そう振り返る浅田は、PK戦にもつれ込んだ今大会の4試合すべてでキッカーを務めた。1回戦、2回戦は成功させていたが、準決勝の星稜戦では、やはり決めれば勝利が決まる5人目を任されながらゴール上に外していた。

「PK戦になるかなっていうときに、自分で(準決勝のPK失敗を)思い出した。あのときは躊躇したところがあったので、今度は思い切り蹴ってやろうと思った」。嫌な記憶を引きずることなく、GKでありながらキッカーとしての重責も果たした。

 83年のサッカー部創設とともに監督に就任した松崎監督にとって、30年目の節目で初めてたどり着いた国立競技場、決勝、そして優勝だった。「今までやってきてよかったな、いい子たちを持ててよかったなと」。スタンドの応援団のもとへ挨拶に行ったときには感極まった。

 昨年1月、一人息子である康博さんが34歳の若さで急逝。5日の準々決勝・立正大淞南戦後にいったん宮崎に戻ると、6日には一周忌の法要が営まれた。準決勝のため再び上京した10日には、宮崎空港に向かう途中にチーム全員で墓参りをし、MF矢野大樹主将がチームを代表し、「絶対に監督を喜ばせますので、見守っていてください」と誓った。

「監督を喜ばせたい気持ちが強かった。少しは恩返しできたのかなと思う」。62歳の指揮官を胴上げした矢野は、そう言って感慨に浸った。「一番は子供たちの精神的な強さ、チームワーク。僕らが何かをしたとかはない」。最後まで選手を称え続けた松崎監督。「勝因は気持ちの強さとあきらめない気持ち。宮崎の子供たちにも、自分たちもやればできるんだということを選手たちが教えてくれた。大きな扉を開いたと思う」。どんな逆境に立たされようと、どんなにプレッシャーのかかる場面を迎えようと、それを気持ちで跳ね返す勝負強さが鵬翔にはあった。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 西山紘平)

【特設】高校選手権2012

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