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[選手権]京都橘躍進の立て役者・仙頭、得点王決める今大会5点目も涙のPK失敗…

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[1.19 全国高校選手権決勝 鵬翔2-2(PK5-3)京都橘 国立]

 まさかの光景だった。PK戦、京都橘(京都)の1人目として登場したFW仙頭啓矢(3年)の右足シュートが右ポストを叩く。橘躍進の象徴的存在だった7番のPK失敗。体調不良の影響から先発を外れたDF高林幹主将(3年)に代わってキャプテンマークを巻き続け、この日も1-1の後半19分に左サイドを抜けだしたFW小屋松知哉(2年)の折り返しを右足で合わせて今大会得点ランキング首位に並ぶ5得点目を挙げるなどMVP級の活躍を見せてきたFWは、目の周りを赤く染めたまま「最後ボクがPKを外してしまって、チームを日本一に連れて行くことができなくて悔しい気持ちでしかないです。ボクの力不足でチームに迷惑をかけてしまった。申し訳ないです」と口にした。

 勝ちたかった。「雪の影響がある中、ずっとボクを支えてくれた方や、学校からたくさんの方が応援に駆けつけてくれた」思いに応えたかった。その中で仙頭は前半から攻撃の起点として存在感を発揮。小屋松やMF中野克哉(1年)にスルーパスを通し、ゴール前では果敢にゴールを狙い続けた。そして1-1の後半19分には渾身の勝ち越し弾。チームを初優勝へと近づけた。だが、3点目を奪うことができず。仙頭もシュート9本で1点に終わり、優勝旗を京都へ持ち帰ることができなかった。歓喜に沸く鵬翔の隣で得点王の仙頭は涙を流し続けた。

 それでも自身にとっては高校入学後初となる全国舞台で6試合を戦った。周囲も「想像以上」と驚く快進撃の中、今大会トップレベルのボールコントロール技術と得点力、攻撃センスの高さでチームを引っ張った。そして仲間とともに日本一へあと一歩にまで迫った。「(自分たちの代は)最初はレベルが低いとか言われていたんですけど、決勝までこれて幸せでしたし、最高の仲間と一緒にサッカーができて幸せでした」と胸を張る。自身が「最高のパートナー」と認める小屋松をはじめ、この日先発した6人が自分たちの悔しさを必ず晴らしてくれるはず。「全国準Vチーム」としてプレッシャーとも戦うことになるであろう後輩たちへ向けてゲーム主将は「絶対に全国制覇をしてほしいと思います」とエールを送った。

 高校卒業後は関東大学リーグ1部の東洋大に進学する。関東1部へ初挑戦する新鋭で実力を発揮し、高校で果たすことのできなかった日本一、そしてプロ入りへ再挑戦する。今大会を通して何度もスタッフやチームメート、関係者への感謝を口にしてきた仙頭は「今後のサッカー人生で活躍して恩返しできたら嬉しい」。準Vの悔しさはもちろん忘れない。“今大会の顔”とも言える存在は、自分のため、そして支えてくれた人たちのためにも新たなステージでの活躍を期す。

[写真]準優勝に涙の京都橘・仙頭(中央)
(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 吉田太郎)
【特設】高校選手権2012

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