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[MOM746]鵬翔MF矢野大樹(3年)_逆境にもチームを鼓舞し続けた主将

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.19 全国高校選手権決勝 鵬翔2-2(PK5-3)京都橘 国立]

 プレッシャーに打ち勝った。1-2で迎えた後半39分、鵬翔(宮崎)はDF日高献盛(3年)がPA内で倒され、PKを獲得。決めれば同点、しかし外せば優勝が遠のく重要な場面で、主将のMF矢野大樹(3年)がキッカーを務めた。

「緊張したけど、思い切り枠に蹴れば大丈夫だと思って、思い切って蹴った」。国立競技場に詰めかけた2万4937人の大観衆が固唾を飲んで見守る中、ゴール左上に豪快に蹴り込む同点PK。京都橘(京都)に傾きかけていた流れを土壇場で引き戻した。

 2-2のまま延長戦でも決着が付かず、PK戦へ。先攻の鵬翔一人目のキッカーを務めたのも矢野だった。「考え過ぎたら後悔する。枠の中に思い切って蹴ろうと思った」と、後半39分の場面とほぼ同じコースへ迷いなく蹴った。PK戦一人目の重責を果たすと、後攻の京都橘は一人目のFW仙頭啓矢(3年)が右ポストに当てる失敗。結局、鵬翔は5人全員が成功させ、初優勝を決めた。

 今大会4回目のPK戦勝利。準決勝・星稜戦に続いて2度のビハインドを追い付き、最後はPK戦で競り勝った。延長戦前の円陣。矢野はチームメイトに「夏の合宿の方がきつかったぞ。今は楽しいし、がんばれるぞ」とゲキを飛ばした。

 夏休みに鹿児島・志布志で行った合宿では、徹底的に走り込んだ。「コーチは言わなかったけど、明らかに『走り込み合宿』だった」と、DF芳川隼登(2年)は振り返る。「全身をつる選手もいた」という体力づくり。同じ夏の関西遠征では大学生との練習試合を繰り返し、「明らかに自分たちより強いチームと試合をして、やられながら守備をする精神力が付いた」と言う。

 どんなに押し込まれても、たとえ失点しても、折れない心。どんな苦境に立たされても、跳ね除けるたくましさ。矢野は1-2と2度目のリードを許した場面でも「星稜戦と同じ展開だった。『星稜戦と一緒だぞ』と声をかけたし、みんな絶対に追い付けると思っていた」と力説した。

「まさかここまで来れるとは思っていなかったし、優勝できてうれしい。個性の強い選手が多くて、まとめるのは大変だったけど、この仲間と一緒にサッカーができて幸せだった」。どんな逆境にもチームを鼓舞し続け、日本一のキャプテンとなった矢野。松崎博美監督も「全員が成長したが、一番は矢野という精神的な柱がみんなを引っ張ってくれた」と賛辞を惜しまなかった。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 西山紘平)

【特設】高校選手権2012
連載:高校マン・オブ・ザ・マッチ

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