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[選手権予選]星稜、エース不在も15年連続の全国へ:石川

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[11.3 全国高校選手権石川県予選決勝 星稜1-0金沢桜丘 金沢市民]

 北陸の名門校がエース不在という苦境の中で全国切符を勝ち取った。第92回全国高校サッカー選手権大会の石川県予選は3日に金沢市民サッカー場で決勝戦を行い、星稜が1-0で金沢桜丘を下して15年連続24回目の全国大会出場を決めた。

 星稜は、約2か月前に負傷したMF寺村介が戦線離脱中。前回の全国大会で得点を挙げている寺村は今季の主将を務めており、名実ともに大黒柱として存在感を発揮している。その主将不在が響いたのか、星稜は金沢桜丘に苦しめられた。

 星稜は、キックオフ30秒後にFW森山泰希がファーストシュートを放つ出足の鋭さを見せたが、金沢桜丘の徹底した守備に苦しんだ。2トップでボールを落ち着かせることができず、得意のサイド攻撃も封じられた。敵陣に押し込むもののミスが目立ち、反撃の機会を与える嫌な流れが続いた。金沢桜丘は攻撃の回数は少ないが、前線で動き回る扇谷開登のロングスローが効いた。6分にはロングスローのこぼれ球をMF山本菫が中距離からボレーで狙うなど反撃。攻めあぐねる星稜は、セットプレーから縦のフィードボールをDF寺田弓人がそらしてゴール前でチャンスを作ったが、金沢桜丘が意地を見せてしのいだ。前半は一進一退のまま時間が過ぎ去った。

 星稜の攻撃のリズムが上がったのは、後半に入ってからだった。10分に本来は先発のMF稲垣拓斗、56分には動きにキレのあるFW仲谷将樹を投入。すると19分に右サイドで仲谷、右MF阿部雅志とのパス交換からオーバーラップしたDF森下洋平がクロスを上げてチャンスとなり、ゴール前へ滑り込んだ稲垣がボールをネットの中へ押し込んだ。「今大会で初めて先発を外れたけど、途中からでも試合に出たら絶対に決めてやろうと思っていた」という稲垣の値千金の先制点で星稜は肩の荷が下りた。

 金沢桜丘はそれでも左MF近藤健太が攻守に奮闘。鋭いパスカットから攻撃の時間を作って抗戦した。金沢桜丘は終盤に入ると、主将の宮田雄介を前線、パートナーの坂井翔太を中盤へと2枚のCBを押し上げてチャンスメーク。36分、山本菫のFKに宮田と坂井が飛び込んだ場面はビッグチャンスだったが、坂井のシュートはゴールの上へ外れた。1-0のまま試合終了のホイッスルが鳴ると、両チームとも肩を落とすという奇妙な光景がピッチに広がった。

 地力に勝る星稜にとっては、思わぬ大苦戦だった。先制点をアシストした森下は県大会MVPに選出されたが「全国大会よりも相手が引いて守ることも多い県大会の方が大変だと思っていたけど、こんなに相手に攻められることになるとは思わなかった。相手にサイドを封じられて自分の特徴も出せなかった」と反省しきりだった。それでも全国出場という結果に意味がある勝利だ。河崎護監督は「こんな内容になっちゃったけど……」と瞬間的に苦い表情を見せたが「よし、これで年を越したぞ。(前回4強のため与えられる)シードは大きいな」と破顔一笑。主将の寺村も全国大会には問題なく間に合う見込みで、下級生が多く出場していたこともあり、チームとしてはまだ上積みが見込めるなど強みになるポイントもある。全国大会ではまた違った一面を見せるだろう。

 日本代表の本田圭佑(CSKAモスクワ)や豊田陽平(鳥栖)らを輩出している星稜は、いまや全国大会の常連だ。前回大会では準決勝まで勝ち進んで国立のピッチを踏んだが、優勝した鵬翔(宮崎)にPK戦で敗れて涙をのんだ。本田を擁した04年度もベスト4。全国大会で狙うのは、初のファイナル進出とタイトル。県予選決勝は苦戦を強いられたが、寺田は「昨年は国立へ、と行っていたから準決勝で負けたのではないかと思う。今年の目標は優勝」と歴史を塗り替える決意を口にした。

[写真]先制点を挙げて喜ぶ星稜・稲垣

(取材・文 平野貴也)
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