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流経大柏はサブ組も責任感あるプレー。ブレずに努力続けてきた琉球内定GK猪瀬は貴重な15分間に

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流通経済大柏高の琉球内定GK猪瀬康介は笑顔でピッチへ(写真協力=高校サッカー年鑑)

[1.12 選手権準決勝 瀬戸内高 0-5 流通経済大柏高 埼玉]

 5-0の後半30分、流通経済大柏高はGK松原颯汰(1年)に代えて今大会初出場となるGK猪瀬康介(3年、琉球内定)をピッチへ送り出す。笑顔でピッチに入った猪瀬は36分にFW左部開斗主将(3年)が交代すると、キャプテンマークを受け継いでプレー。相手のシュートをしっかりとキャッチするなど、埼玉スタジアムでの15分間を無失点で終えた。

 スタンドには「オマエが出る時は一生懸命応援するから」と応援してくれる仲間の姿。1年生にポジションを譲り、心折れそうになっている時に「これでオレらが折れたら負けだな」と励ましあったGKの仲間の思いも背負って、猪瀬はピッチに立った。

 キャプテンマークを渡された際に目頭が熱くなったという猪瀬だが、チームの代表としての責任感を持ってプレー。今月9日に来季からのFC琉球加入内定が発表されたGKは、自分が普段、松原にアドバイスしていることと同じ様に、自信を持ってゴールマウスの前に立ち続けた。

 強い気持ちでピッチを目指し、流経大柏の代表として責任感あるプレーをしたのは猪瀬だけではない。チャンスを与えられた各選手が全力でプレー。MF渡会武蔵(2年)はゴールを決めると、喜びを全身で表現していた。ベンチからギラギラとした雰囲気を出し、チャンスをモノにしようとする仲間たち。猪瀬は「出て、『オレが絶対にやってやる』という思いが強いからこそ、渡会も決められたと思う」とその活躍を喜んでいた。

 猪瀬にとって、プロ入りを前に経験した埼玉スタジアムでの15分間は非常に貴重なモノになった。有力な守護神候補としてスタートした1年は怪我に苦しんだ。得たチャンスをモノにし、結果も残す後輩GK松原をすぐには認めることができなかったという。「(松原は) 1年生とは思えない物怖じしないプレーをしている。最初は認めたくないというか、周りは認めているんですけれども、自分は認めたくないという気持ちがあった。『松原スゲーな』という声には耳を塞ぎたくなる思いでした」と振り返る。

 だが、その声を受け入れ、自分はとにかく練習に打ち込む毎日。プロになるという目標を掲げ、Aチームで先発出場できなくても毎試合最高の準備をし、貪欲に成長を目指してきた。その猪瀬は、12月の練習参加で「1日目から一番いいくらいのプレーができた」ことで琉球からの評価とプロ入りを勝ち取った。

 そして、短い時間ながらも選手権出場。続けてきた努力が報われてきている。ただし、彼の姿勢は今後も変わらない。「15分間ですけれども出れた経験は大きかったですし、次の試合もチャンスがある。自分はできる準備はしてありますし、松原が出た時もいつも通り『自信を持ってやってこい』と声をかけてあげたい」。2日後の決勝も最高の準備をしてチームの勝利に貢献するだけだ。

 本田裕一郎監督が「彼も能力がある」と信頼する3年生GK。サブの立場でもブレずに努力を続けて自身の夢を一つ叶え、同時にチームを支えてきたGKは決勝でもピッチ内、外側にかかわらず、チームメートたちと一緒に最後まで流経大柏のゴールを守り抜く。

(取材・文 吉田太郎)

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