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鵬学園が粘りの金沢市立工ゴールこじ開け、決勝進出!一週間でまた成長して「王者」星稜に挑戦:石川

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後半36分、鵬学園高CB八十島陸翔の決勝点を喜ぶ

[10.30 選手権石川県予選準決勝 金沢市立工高 0-1 鵬学園高 金沢市民]

 鵬学園が苦しみながらも「王者」への挑戦権を獲得――。10月30日、第100回全国高校サッカー選手権石川県予選準決勝が行われ、鵬学園高がCB八十島陸翔(2年)の決勝ヘッドによって1-0で金沢市立工高に勝った。

 16年度大会予選で星稜高の連覇を17で止めて初優勝し、19年度大会で2度目の優勝。台頭続ける鵬学園が、3年連続での決勝進出を果たした。とは言え、先発の約半数が下級生のチームは硬さもあったか、この日は思うようなサッカーを表現できない80分間に。攻め続けるものの、1点が遠かった。

 対戦した金沢市立工は、秋までサッカーを続けた3年生5人と1、2年生中心のチーム。それでも、初戦から3試合連続無失点で87年度以来34年ぶりとなる準決勝まで勝ち上がってきていた。

 守備に重きを置いて戦う金沢市立工に対し、MF金澤吾介主将(3年)が「自分たちは勢いを持って行くことが得意なので、引いてくる相手でもどんどん前からプレスを掛けたり放り込んでどんどん迫力を持ってやりました」という鵬学園は前半だけでシュート9本。ボールを保持し、得意の縦に加えて幅を使った攻撃からクロス、ミドルシュートへ持ち込んでいた。

 右SB金田壮太郎(3年)や左SB能口亮河(3年)のクロスに181cmFW加納里玖也(2年)が決定的な形で飛び込むなど、ゴール前のシーンを創出していたが、金沢市立工はDF梅田慶次郎(3年)やDF吉田元気(3年)、DF松本結心(2年)が最後の局面で身体を投げ出して決定打を打たせない。

 釘抜謙太監督が「粘り強さが彼らの強みだと思いますし、誰が交代で出ても頑張れるという、チームの一体感が強みかなと思います。(今日は)鵬さんのタレント力を、時間とスペースを奪うというところを、チームとして意識していた」という金沢市立工は、ファーストディフェンスの寄せを徹底。すべてを消すことはできなかったかもしれないが、それでも各選手の献身的な動き、ゴール前の粘り強さが鵬学園のリズムを狂わせていた。

 鵬学園は昨年からのレギュラーが八十島だけだ。経験値の少ないチームはなかなか楔にボールを入れられず、追い越すアクションもわずか。後半は右SHとして先発したレフティーFW坂本陽斗(2年)を前線へ移行し、加納との強力2年生2トップへ組み替えた。だが、立ち上がりに加納が競り勝ち、坂本の放った左足シュートはゴール右へ。その後も金沢市立工の守りをなかなかこじ開けることができない。

 金沢市立工も攻撃回数を増やせなかったが、後半の飲水タイム明けから吉田を前線へ上げて勝負に出る。ただし、攻撃の精度を欠き、危機管理の意識高く守る八十島とCB鈴木樟(1年)の壁を破るまでには至らない。

 鵬学園もセットプレーで八十島の高さが違いを生み出していたが、金沢市立工GK宮本駆(1年)の好守に阻まれたほか、終盤も落ちることなく足を動か続ける相手の前に苦戦。それでも後半36分、鵬学園は金田の左CKをファーサイドの八十島がジャンプヘッドで合わせる。フワリと舞ったボールは、クロスバーのわずかに下側を抜けてゴールラインを越えた。待望の1点に喜びを爆発。この後、金沢市立工をゴールに近づけなかった鵬学園が被シュートゼロで決勝進出を果たした。

 苦しみながらも準決勝を突破した鵬学園は、赤地信彦監督が「本当に王者だと思っている」と評する星稜高と11月7日の決勝で対戦する。1年前の決勝は奪還に燃える星稜が挑戦心を全面に出して鵬学園を飲み込み、5-0で快勝した。

 鵬学園にとっては、雨中での屈辱的な敗戦。雪辱のチャンスを得た赤地監督は、「このために一年間やってきたので、ここからは生まれ変わったくらいの一週間を作っていきたい。(これまで2度)全国経験させてもらったんですけれども、(子どもたちにとって)人生の中でも大きな経験になるので、何が何でも行かせてあげたい」と語る。

 何としても星稜の壁を越えて選手権へ。金澤は「もっと一つ一つ細かいところを突き詰めて練習して行って、みんなでもっと声を掛け合って行ければ一週間で成長できると思います。(決勝では)どんどん前からプレス掛けて、星稜に何もやらせずに勝ちたい」。今年、インターハイ3位の星稜は迫力のある攻撃やセットプレー、力のある選手たちがハードワークする部分も特長。鵬学園は挑戦心を全面に出して、「王者」以上の迫力で今年は自分たちが奪冠する。
 
(取材・文 吉田太郎)
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