[12.29 全国高校選手権1回戦 西武台高 0-1 三重高 NACK]

　開幕前日に思ったようだ。丸刈りにしようと。それだけ、気合いを入れて臨んだ選手権初戦。三重高(三重)FW吉良元希(3年)は最前線で体を張り続け、チームの勝利のためだけに戦い抜いた。

　高校サッカー最後の舞台。悔いは残したくなかった。その思いが行動に移ったという。開会式の前日、男は丸刈りになった。「僕自身、人生で初めてだった。でも、最初で最後の選手権で本当に悔いが残らないようにしたかった。失うものなんて何もないので、そっちゃいました」。そう笑ったが、その気持ちはプレーに表れていた。

　前半9分にカウンターからDF大地山開(3年)が決めて先制に成功したものの、その後は西武台に押し込まれる時間帯が続いた。ターゲットとなる吉良を最前線に残し、時にはフィールドプレーヤー9人がPA内まで戻ってゴールを守り続ける。

　仲間を信じて前線で待つ吉良は、届けられたボールをキープして時間を生み出そうとする。ボールを受けた際、多くの場面で1対2と数的不利な状況。しかし、強靭なフィジカル、そして巧みに腕を使ってボールを保持しようと奮闘する。シュートは開始早々に放った1本に終わり、「自分のパフォーマンスには悔しさが残る」と唇を噛んだが、必死のキープがなければ、チームはより多くの時間を守備に割くことになっただろう。

「ディフェンス陣が本当に頑張ってくれた。こういう試合を勝てるのが今年の僕らの強さだと思っているので、GKを含めたディフェンス陣全員に感謝したい」

　この日、見せ場は限られたのかもしれない。だからこそ、次戦に向けて闘志を燃やしている。「勝つことができて、チームとしても自信がついたと思う。次の試合では自分がもっとチームを助けられるように頑張りたい」。2回戦・前橋育英戦ではチームを勝利へと導くゴールを貪欲に狙っていく。

(取材・文　折戸岳彦)

---

●【特設】高校選手権2021
▶高校サッカー選手権 全試合ライブ&ダイジェスト配信はこちら