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[MOM3753]青森山田DF丸山大和(3年)_緑の鬼神が纏った絶対的な自信。相手エースを抑え込み、ゴールまで奪う獅子奮迅の働き

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攻守に奮闘したDF丸山大和がチーム2点目を奪う(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.2 選手権3回戦 阪南大高 1-3 青森山田高 駒沢]

“獅子奮迅”の働きとは、まさにこのこと。守っては相手のエースを封じ込め、攻めては得意のヘディングでゴールまで奪ってみせる。見るからに不安を抱えながらピッチに立っていた、あの頃の面影は微塵も感じられない。

「1年間を通して最初の頃は自信がなくて、立ち振る舞いも弱く見えて、周囲からもそう言われていたんですけど、だんだん試合を重ねていくうちに自信も付いていって、そういうことがあのゴールに繋がったと思います」。

 青森山田高(青森)が誇る不動のセンターバック。DF丸山大和(3年=クリアージュFCジュニアユース出身)の立ち姿、今や鬼神のごとし。

 マッチアップする相手は決まっていた。2試合で11ゴールという破壊的な攻撃力を誇ってきた阪南大高(大阪)。その中でも2回戦では1人で5得点を叩き出したスーパーエース、湘南内定のFW鈴木章斗(3年)がそのターゲット。丸山も「『凄く良いストライカーだな』ということは、しっかりリスペクトしていました」とその存在について口にする。

 日頃の主戦場である高円宮杯プレミアリーグでは、プロ入りが決まっている相手と兵刃を交えている。たとえば柏レイソルU-18のFW真家英嵩(3年)。たとえば清水エスパルスユースのFW千葉寛汰(3年)。年代別代表でもプレーする強烈なストライカーたちと丁々発止を繰り返し、その経験を自らの力に変えてきた。

 この日も指揮官からの指示は、ごくごくシンプル。「相手に絶対的なストライカーがいる場合には、監督から『そこは大和が徹底的に潰せ』と。今回も9番の鈴木選手には自分がマークに付いて、徹底的に潰すというのは言われていました」。相手にとって不足なし。やることは1つだけ。徹底的に、潰す。

 とにかく、高い。とにかく、強い。入ってきたボールは、ことごとく跳ね返す。「鈴木くんに関してはもちろん前評判も高かった中で、終始我々の丸山大和がヘディングではほぼほぼ勝てたんじゃないかなと思います」と黒田剛監督も賛辞を口に。『我々の丸山大和』というフレーズに、寄せる信頼の厚さが垣間見える。

 その強さは相手ゴール前でも発揮される。後半3分。右サイドで獲得したCK。MF松木玖生(3年)が蹴ったボールに、ニアへ飛び込んだ丸山はマーカーを引きずりながら、力強くヘディング。左スミに向かったボールはDFも掻き出し切れず、ゴールネットへ収まる。インターハイでもファイナルでの劇的な決勝ゴールを含む4得点。プレミアリーグEASTでも3得点を記録している“得点感覚”も、この大舞台できっちりと見せ付けた。

 青森山田に入学してからの2年間は、苦しい時間だったという。昨年度の選手権は30人の登録メンバーには入っていたものの、試合出場はなし。山梨学院高(山梨)に優勝をさらわれる姿を目にしても、ピッチに立てない状況に、どこか実感を持ち切れないでいた。春先の目標はレギュラー定着。周囲からの要求に応え切れず、悔しい想いを抱えたことも一度や二度ではない。

 だが、経験は人を変える。青森山田のセンターバックとして、かつての自分のように試合出場が叶わないチームメイトの想いも背負い、シーズンを通して戦い続けていくことで、炎のようなオーラを纏っていく。

 キャプテンの松木も「率先して声を出しながら、ヘディングでもファーストディフェンスでも勝ってくれていて、自ずとチームの雰囲気も良くなってきますし、『今日は良かった』とかじゃなくて、新チームが始まってから常に成長してきているセンターバックの2人がいるので、そこは頼もしいです」ときっぱり。今やDF三輪椋平(3年)と組むコンビは、世代屈指のセンターバックデュオと言っても差し支えないだろう。

 昨年の3月。レギュラーを掴みかけていた頃に話していた言葉が思い出される。「自分はピッチで戦っていなかったですけど、それでも山田の一員として試合を見ていて、決勝でああいう負け方をしたのは悔しいですし、来年は自分があのピッチで活躍して、優勝できるように頑張りたいと思います」。

 そこに立つと宣言した全国の頂が、おそらくは丸山にもおぼろげながら、いよいよ見え始めている。

(取材・文 土屋雅史)

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