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伝統の堅守に緩み 矢板中央は16強で涙…大卒プロ入り期待の素材ら次のステージへ

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惜しくも敗れた矢板中央(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[1.2 選手権3回戦 関東一3-2矢板中央 フクアリ]

 2年連続ベスト4の矢板中央高(栃木)は3回戦で涙を呑んだ。攻撃は例年以上に多彩だったが、伝統の堅守には緩みが出た。立ち上がりの前半6分に失点。初戦の米子北戦に続き、軽いプレーから先制点を献上した。高橋健二監督は「想定外の、早い時間帯の失点でプランが崩れた」と声を落とした。

「矢板中央の堅守であれば、ロースコアで1失点、またはゼロで前半は帰ってきて、得点を重ねていくのが理想だった」。リードされれば奪い返す力は発揮したものの、2-2で迎えた終了間際に決勝点を献上。高橋監督は「ゴールを隠しきれなかった」と悔しさをにじませた。

 1年生からゴールを守る全国屈指のGK藤井陽登主将(3年)をはじめ、攻守の要MF大畑凜生(3年)、対人能力が高いSB小出勇翔(3年)ら、昨年度レギュラーの半数が最上級生になった期待の年だった。100回大会の初優勝を目指し、課題だった攻撃面を強化。その成果は表れ、初戦はインターハイ準優勝・米子北を相手に、エースMF藤野和哉(3年)と技巧派MF片岡駿太(3年)がゴール。関東一戦もFW小森雄斗(3年)の身体能力とスピードが光り、FW久野木力丸(3年)の鋭いクロスがオウンゴールを誘発した。

 矢板中央は過去4度進出した準決勝で、いずれも得点を奪えずに敗退。4強の壁を破り、日本一を目指した挑戦だった。「去年も一昨年も得点力が少なかった。今年は攻撃陣も充実して、能力が高い選手たちがいるので、個性を生かしてチャレンジしてもらいたい思いでチーム作りをした。守備の部分が追いつかなかったのかなと、攻撃陣に時間を費やした部分があったのが、悔しい反省点かなと思います」。高橋監督はそう受け止めた。

 今年度、MF松井蓮之(法政大→川崎F)とMF稲見哲行(明治大→東京V)のJ加入が内定し、矢板中央出身選手の大学経由でのプロ入りが注目された。「入学段階でずば抜けた選手ではなくても、矢板中央にきて球際、運動量を身につけて、その中で一人ひとりの個性を磨いて成長してもらいたい。型にはめ込まず自分たちのトレーニングの時間を入れているので、そういう部分で大学に入ってから伸びている選手が多いのかと思っています」。

 3年生の高校サッカーはここで終わり、大卒プロ入りが期待されるGK藤井やMF大畑ら、多くの選手は大学に進学する。また、エース藤野はスペインに挑戦する。高橋監督は「新しいステージで、新しい歴史を作ってもらいたい。それぞれの道で再出発して、立派な大人になってほしい」とエールを送った。



(取材・文 佐藤亜希子)

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