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今年の強みと“らしさ”噛み合う東海大高輪台が延長戦勝利。「東京都ナンバー1になる」へ前進

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延長前半3分、東海大高輪台高FW古川拓海(9番)の決勝点をMF柳本華弥主将らが祝福する

[10.23 選手権東京都Bブロック準々決勝 正則学園高 1-2(延長)東海大高輪台高 清瀬内山A]
 
 東海大高輪台が延長戦勝利! 第101回全国高校サッカー選手権東京都Aブロック予選準々決勝が23日に行われ、インターハイ予選4強の東海大高輪台高正則学園高が激突。延長戦の末、東海大高輪台が2-1で勝ち、準決勝(11月5日)へ進出した。

 新チーム結成当初は、“高輪台らしくない”と評されることもあったという。ボールを保持しながら、質の高いポジショニングとテクニック、連動性で勝負する例年と比べるとやや異質のチーム。川島純一監督が「強みはロングカウンターじゃない? 例年のチームよりも走れます。データも取っているけれど全然違う」という世代が、走力と諦めない気持ち、そしてトレーニングで培ってきた“高輪台らしさ”も発揮して初優勝へ一歩前進した。

 対戦した正則学園にとっては、31年ぶりの準決勝進出を懸けた8強決戦。東海大高輪台の川島監督が「正則、上手です。噛み合わない感じが予想通りです」と評したように、試合はそれぞれの良さを出しながら攻め合う展開となった。

 正則学園はGK宇野孝博(3年)が試合を通して安定したキャッチング。飛び級でU-20モンゴル代表にも選出されている強力FWウガンバト・テムレン(2年)が迫力のある動きを繰り返し、“裏街道”にもチャレンジしていた。またFW佐々木柊哉(2年)とFW内山哲平(3年)の両翼もキープ力が高い。前半18分には4人、5人が絡んでの崩しからMF佐藤瑠斗(2年)がスルーパス。この攻撃でベンチは大いに盛り上がっていた。

 ただし、試合の流れは徐々に東海大高輪台へ傾いていく。いずれも昨年の経験者である10番MF柳本華弥主将(3年)とMF石井海翔(3年)のダブルボランチを軸に、チームの“生命線”右の秋田大空(3年)、左の笠原凌太(3年)の両SBを活用。また、前線で目立っていたFW古川拓海(3年)の正確なポストワークも交えてスピーディーにボールを動かすなど、拮抗した展開で徐々に差を示していく。

 そして前半37分、柳本が狙い済ました動きで相手のビルドアップをインターセプト。一気に前進して左へパスを送ると、サポートしていたMF安部武沙士(3年)が左足でゴールへ流し込んだ。

 柳本は「察知する力が自分は結構高いと思っていて、守備の部分でも活躍できて攻撃の部分でも良い起点になれれば良い。(このシーンは)監視しつつ、『ここだ』というところへ3列目から飛び出して、ああいう形でボールを獲れることは結構多くて、良いところに7番の武沙士がいたので出したら決めてくれたので良かった」。主将のビッグプレーとチーム一のサッカーIQを持つ安部の正確なシュートによって東海大高輪台が先制した。

 だが、正則学園は後半10分、同点に追いつく。右サイドの内山がこぼれ球を拾って縦へ。そして、右中間でサポートしていたMF塚口凱偉(2年)が右足を振り抜く。鮮やかな孤を描いたミドルシュートがファーサイドのゴールネットへ突き刺さり、1-1となった。

 正則学園は後半、ハイサイドへの配球。これにウガンバトが走り込み、スローインを獲得する。そして、ウガンバトがロングスローを連発。19分にはウガンバトのスルーパスで内山が抜け出すなど、自信を持って戦う正則学園が流れを掴んでいた。

 一方の東海大高輪台はMF橋口巧(2年)ら交代出場の選手たちが攻撃を活性化し、後半終了間際にはCKから波状攻撃。立て続けにあわやのシーンを作り出したが、正則学園の粘り強い守りの前に勝ち越すことができない。逆に正則学園は40+5分に千載一遇の好機。左スローインから佐藤が出したパスで右外の内山が一気に抜け出す。飛び出してきたGKを右への動きでかわした内山が右足を振り抜くが、シュートはわずかにゴール右へ外れた。

 1-1で延長戦へ突入。その前半3分、東海大高輪台FW古川が右足ダイレクトでミドルシュートを放つ。ファインショットがゴール右隅に決まり、2-1。正則学園は延長後半、ボールを繋いで攻め返したが、「(2人とも)安定していたかなと思います。上も負けなかった」(川島監督)という生駒匡悟、早稲田淳平の2年生CBコンビを中心に守った東海大高輪台が3年ぶりの準決勝進出を決めた。

 東海大高輪台の柳本は「何があっても諦めない気持ちや相手よりも声を出して走るというところは結構意識高くやっていた。その結果、延長戦の最初に点を決められて粘り強く守り切れた」と頷く。

 伝統的な“高輪台らしさ”と、勝つためにやるべきことの両方を求めてきた成果。柳本は「(結果に加え、)熱いゲームをする、走って声を出してというところでも『東京都ナンバー1になる』ことを求めてきて、また勝つためにどうするべきか、練習で意識してきました。自分はチームみんなの顔色や雰囲気を意識している。悪かったら自分が変えないといけないし、キャプテンとして意識して“高輪台らしさ”を作り上げてきた」と言い切る。

 過去には好ゲームをしながらも、勝ち切れなかったことが幾度もある。だが、内容・結果に対して前のめりになりすぎることなく、良いバランスで戦う今年はインターハイ予選、選手権予選と連続で4強入り。今後も相手関係なく、自分たちのサッカーを展開することに集中し、東京で一番のチームになる。

(取材・文 吉田太郎)
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