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「最低でも決勝、最高で全国」。新たな歴史へ、駒澤大高撃破の東京実が東京B準決勝進出!

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後半7分、東京実高の選手たちがFW岩野隆斗のゴールを喜ぶ

[10.23 選手権東京都Bブロック準々決勝 駒澤大高 0-2 東京実高 清瀬内山A]
 
「最低でも決勝、最高で全国」。東京実が過去最高タイに並ぶ準決勝進出だ。第101回全国高校サッカー選手権東京都Bブロック予選準々決勝が23日に行われ、東京実高が2-0で駒澤大高に勝利。東京実は11月5日の準決勝で成立学園高と戦う。

 東京実は2年ぶりの4強入り。片山智裕総監督は「年間を通して、『最低でも決勝、最高で全国』という話をしている。ウチの学校は準決勝までしか野球も、サッカーも行ったことがないんですよ。だから彼らにはずっと、『決勝』と」。女子柔道で2度の五輪金メダルを獲得した谷亮子氏の「最高でも金、最低でも金」をもじった合言葉の実現へ、あと1勝とした。

 対戦した駒大高は今年、関東大会予選準優勝、インターハイ予選4強。東京実はその強敵を前半から押し込んで見せる。全体的にやや重心の重い駒大高に対し、東京実はハイプレスと右サイドからの積極的な攻撃。「相手の左がストロングだったので、逆にそっちに人数を掛けて。『やるかやられるか』なので、『やっちゃおう』と。それがハマった感じです」(片山総監督)。また、アンカーの10番MF宇田川陸飛(3年)がセカンドボールの攻防など攻守両面で利いていたこともあり、優位に立って試合を進めた。

 駒大高は注目の大型FW加茂隼主将(3年)が強引に局面をこじ開けに行ったり、シュートを打ち切るシーンも。加えて、右SB平井涼真(2年)の柔らかいドリブル、またセットプレーも交えて攻め返す。37分にはMF松原智(3年)が絶妙なターンから一気に持ち上がり、そのまま左ポスト直撃の右足シュート。前半半ば以降はボールを保持する時間を増やして押し込んだが、得点を奪い切ることができない。

 後半4分、東京実が先制点を奪う。MF佐藤星南(3年)の左CKをニアのDF尾形優槙(3年)が完璧に頭で合わせて1-0。スタンドの控え選手たちと喜びを爆発させた東京実は、その3分後に再び歓喜の瞬間を迎える。前線からプレスを掛け、FW岩野隆斗(3年)が相手GKのキックをチャージ。こぼれ球に素早く反応した岩野が、左足シュートでゴールを破った。

 2点ビハインドとなり、前へ出るしかない駒大高は松原の仕掛けなどからセットプレー、クロスの本数を増やした。だが、東京実は片山総監督が「(宇田川をアンカーへコンバートしたタイミングで)ちょうど人がいなかった。誰かなと思って(各カテゴリーを)見た時に、『コイツはなかなか物怖じしないな』と思って、(日大)豊山とT3(東京都3部リーグ)の頂上決戦みたいなところで初めて使ったんですけれども、普通にやれちゃって。彼は結構将来有望かなと。メンタル崩れないですし」と称賛するDF田中玲音(1年)、DF須田透真主将(3年)、尾形の3バックを中心とした堅守。駒大高の精度が上がらなかったこともあって東京実が2点リードを維持したまま残り時間を削っていく。

 駒大高は加茂が気持ちの込もったプレーを続け、平井や松原がシュートまで持ち込む。だが、急いで攻めてカウンターを受けるなど1点が遠い。交代出場選手も運動量を増やして走り切った東京実が2-0で快勝。須田は「とにかく嬉しいの一言ですね。次(準決勝)の成立(学園)のところまでは東実の歴史としても行ったことがあるので、そこを乗り越えないといけない。最低限でも決勝へ行ってその後に全国行こうと自分たちの共通意識としてあります」と語った。

 須田は今年のチームについて「本当に個性豊かで色々な攻撃のバリエーションがあったりとか。本当にまとめるのは大変ですけれども、その分、一つになったら凄い力になる」と説明。そのチームメートたちに対し、「とにかく『歴史は変えなきゃいけない』と何回も話していて、『必ず自分たちの代で歴史を変えよう』と」。インターハイ予選2次初戦で敗退するなど、悔しい思いもしてきたチームは、夏頃からまとまりが出て強さを発揮して来ている。

 片山総監督がゴール、一人ひとりへのメッセージ、戦術をテーマに作成するモチベーションビデオも初戦から一戦ごとに時間が増加。須田が「本当にここからが楽しいところだと思うので全て出し切るだけ」と語るように、コーチ陣の熱い思いも感じながら選手たちのモチベーションはさらに高まっている。強敵を見事に撃破したが、大事なのは次。「最低でも決勝」を懸けた準決勝を突破し、東京実の歴史に新たな1ページを刻む。

(取材・文 吉田太郎)
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