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選手権で勝つために「ゼロ」徹底。2発の2年生FW横山ら選手層の厚さも示した帝京が3-0で東京A準決勝へ

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後半40+7分、帝京高FW横山夢樹(17番)が決めて3-0

[10.23 選手権東京都Aブロック準々決勝 帝京高 3-0 多摩大目黒高 清瀬内山A]

 帝京が狙い通りの戦いで難敵を突破――。第101回全国高校サッカー選手権東京都Aブロック予選準々決勝が23日に行われ、インターハイ準優勝の帝京高が3-0で多摩大目黒高に勝利。帝京は11月5日の準決勝で國學院久我山高と戦う。

 先制点が決まったのは後半残り8分になってから。帝京は、日比威監督が「多摩大はプリンスでも十分戦えるチームだと思う。能力高い。バランス高いし、距離感も良かった」と評した多摩大目黒相手に難しい戦いを強いられた。それでも、慌てることなく選手権で勝つための戦いを貫徹。選手権優勝6回の名門は、2試合連続無失点で09年度以来の全国大会出場へあと2勝とした。

 日比監督は、試合開始前のミーティングから「ゼロ」を強調していた。慌てずに無失点で試合を進め、延長戦を含めた100分間で仕留める――。近年の選手権予選では、優勢に試合を進めながら隙を突かれる形で失点し、敗退。加えて、前日に同じ東京の関東一高やともに埼玉の強豪校である西武台高、武南高が敗れているだけに、帝京は失点しないことを重視して試合に入った。

 その帝京は、日比監督が「(相手は)帝京のプレッシャーが思った以上に速く感じたんじゃないかなと思います。それくらい彼らは行っていた」というほど切り替えの速い守備。対する多摩大目黒もMF稲田陽太(2年)やDF鈴木善(3年)らスキルの高い選手たちが、ボールを保持しながら真っ向勝負を挑んでいた。

 帝京はボールを奪い切れず、FW伊藤義人(3年)らに背後を狙われるシーンもあった。だが、俊足CB梅木怜(2年)が的確な対応。また、押し込まれ、セットプレーを与えてもシュートを確実にブロックし、またDFラインがオフサイドを取るなど決定打は打たせずに試合を進める。

 その帝京は前線でエースFW齊藤慈斗(3年)が力強い動きを連発。齊藤の突破やセットプレーから決定機を作ったが、多摩大目黒GK栗本直輝(3年)やDF陣の好守に阻まれ、またMF橋本マリーク識史(3年)の決定的なシュートがクロスバーを叩くなど先制することができない。

 多摩大目黒は後半20分、速攻から鈴木が思い切った攻撃参加。稲田がフィニッシュへ持ち込んだものの、枠を捉えることができない。帝京はノルマの無失点を継続。CB大田知輝(3年)が「ボールに対してFWから蓋をして少しでも良いボールを蹴らせない。自分たちはハイラインでCBでも奪えるし、後ろに蹴ったらマイボールにもできるというのを狙っている」というディフェンスを表現したことが勝因となった。

 帝京は、圧倒的なキープ力と強さを見せた齊藤やMF押川優希(3年)、FW伊藤聡太主将(3年)らがボールを保持し、ダイナミックなサイド攻撃も交えて相手にプレッシャーをかける。そして、終盤の3ゴールで多摩大目黒を振り切った。

 後半32分、MF田中遥稀(3年)の左CKを起点とした攻撃から大田がヘッド。これは決め切れなかったものの、DFのクリアに反応した大田がジャンプヘッドをゴールへ叩き込んだ。さらに34分、帝京は自陣からクリア。これで「試合入った時から絶対に点を決めるという気持ちだった。勘でなんかこっちに来るなと思ったので身体が反応してくれた」という交代出場FW横山夢樹(2年)が、DFと入れ替わる形で一気に抜け出し、右足シュートを流し込む。

 帝京は40+7分にも相手を押し込むと、横山が右足シュートを突き刺して3-0。今季J3で2桁得点のU-19日本代表FW横山歩夢(松本)を兄に持つ横山は、「来年もちろんエースという気持ちがありますけれども、今年しっかり自分が点を獲ってチームを勝たせるということをやりたい。兄は最近調子良くて代表とか入っていて凄いと思いますし、自分も負けていられないなという気持ちがあります。ここで2点を決めて自信になったので、次の準決勝は1本をしっかりと決めたい」。兄は東海大高輪台高(東京)2年時にチームを初の選手権予選決勝へ導くなど大活躍。1本を大事に自主練からシュート練習を繰り返してきた横山は、自分も2年時から結果を残し続ける意気込みだ。

 この日、帝京はインターハイ準決勝で決勝点のMF山下凜(3年)やU-19日本代表候補DF入江羚介(3年)らが交代出場。そして、インターハイで出番の少なかった2年生FW横山が2発と、選手層の厚さも示して準決勝進出を果たした。齊藤が「(5勝し、決勝進出した)インターハイが結構デカいかなと。自信になって、80分で守備が安定して守れるようになっている。(後ろが守ってくれるので)あとは1点決めれば良いみたいになっている」と語ったように、インターハイでトーナメント戦を勝ち上がった経験は大きな自信に。破壊力十分の攻撃と守備が噛み合い、プリンスリーグ関東1部でも2位につける帝京が、選手権の東京都予選を今度こそ勝ち抜く。

(取材・文 吉田太郎)
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