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必ず選手権の舞台へ…5発快勝で決勝進出の松商学園、亡き友とともに「一緒に全国に行きたい」

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渡邉康大さんのユニフォームとともに写真に収まった松商学園高イレブン

[10.29 選手権長野県準決勝 松本県ヶ丘 1-5 松商学園 サンプロアルウィン]

 第101回全国高校サッカー選手権長野大会の準決勝が29日に行われた。松本県ヶ丘高と松商学園高の対戦は、DF岩井柊翔(3年)の先制点を皮切りに5点を奪った松商学園が5-1で勝利した。

 キックオフと共に試合を優勢に進めたのは、松商学園だった。MF雪本泰雅(3年)が「前半の立ち上がりから相手に圧をかけたい、雰囲気から相手を圧倒したいと思っていました」と振り返る通り、ボールを奪ったら素早くサイドに展開。右の雪本と左のMF森田優聖(2年)が積極的に仕掛け続けた。前半5分には雪本の突破によって右CKを獲得すると、岩井がヘディングシュート。GKに阻まれた所を自らが押し込んで均衡を崩した。

 先制点が生まれてからも、松商学園は「目指しているのは攻撃でも守備でも攻撃的なサッカー」(MF安藤竣、3年)にチャレンジし続けた。「県ヶ丘は下から繋いで崩していこうというスタイルなので、奪ってから速く攻めようと準備してきた」(高山剛治監督)のも奏功する。25分には相手のビルドアップミスを拾ったMF洞澤想(3年)のスルーパスから、FW市ノ瀬純大(3年)が2点目をマーク。33分にもDF平林来夢(3年)からのパスを受けた洞澤が右クロスを上げ、反対サイドの森田がゴールネットを揺らした。

 前半のうちに3点のリードを奪ったが、「3点獲ってからプレスやスライドで隙が生まれた」(安藤)のは反省点。40分にはMF塚田亘(2年)のクロスから、FW小松颯眞(2年)にヘディングシュートを決められ、松本県ヶ丘に1点を返された。後半も松本県ヶ丘のペースは続き、4分には奪ったままの勢いで右サイドを上がったDF斉藤篤(1年)のパスから、塚田にシュートを打たれたが、DFがブロックして難を逃れた。

 嫌な流れが続いたが、10分には右サイドを破った雪本のパスから、市ノ瀬がこの日2点目を奪い、再びペースを引き寄せた。15分にも洞澤のパスから、右サイドを抜け出した雪本がゴールを決めて、松商学園が5‐1で試合を終えた。試合後、高山監督は「子どもたちを素直に純粋に褒めたいとは思うのですが、まだここが終わりではない。先があるので改善しなければいけないことは多いかなという気持ちでいます」と喜びつつも、課題を口にした。

 選手自身も準決勝での勝利に満足していない。今年は必ず全国に行かなければいけない理由がある。今年5月、3年生GKの渡邉康大さんが交通事故により、この世を去った。「康大は凄く明るいというか、ずっと笑っていた。試合前にも凄く笑顔で勇気を貰っていた」(雪本)というムードメーカーがいなくなり、チームに与えた動揺は大きかった。「最初は引きずりました。1週間、2週間は全く元気が出なかった。なぜか分からないけど、涙が出てきたりもしました」。そう振り返るのは安藤だ。

 渡邊の死を受け止め、今は必死で全員が前を向いている。「康大への想いは相当強いというか、試合前は常に康大のことを考えている。全国に連れていくというよりも、一緒に全国に行きたいというのが自分の考え。自分が躍動できているのも、一緒に頑張っているという気持ちがあるから」(雪本)。全国大会まで、残り一勝。「あとは決勝で勝つだけ。次も部員全員と康大で頑張っていきたい」と雪本が続ける通り、渡邊さんを含めたチーム全員で憧れの舞台に立つつもりだ。

(取材・文 森田将義)
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