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夏からまた変わった神村学園が鹿児島で初の6連覇へ王手。仲間の犠牲心に応えるためにも、必ず日本一への挑戦権摑む

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前半33分、神村学園高はMF高橋修斗(中央)のゴールを喜ぶ。アシストのC大阪内定MF大迫塁(左)も笑顔

[11.11 選手権鹿児島県予選準決勝 神村学園高 2-0 出水中央高 白波スタ]

 悔しい夏を糧に、また仲間のために戦う神村学園が全国大会出場へあと1勝とした。11日、第101回全国高校サッカー選手権鹿児島県予選準決勝が行われ、神村学園高が2-0で出水中央高に勝利。神村学園は6年連続10回目の全国大会出場を懸けて、12日の決勝で鹿児島実高と戦う。

 6連覇となれば、激戦区・鹿児島県で初の快挙。神村学園の有村圭一郎監督は特別意識しないことを前置きした上で、「一つひとつ積み上げてきた結果が6連覇を狙える位置にいる」。そして、母校・鹿児島実、恩師である故・松澤隆司監督の記録超えに挑戦する決勝へ向けて、「何一つ成し遂げたわけではないので、いつも通りやらせます」と語った。

 神村学園は準決勝でシュート28本と圧倒。5-4-1システムで守りを固めた出水中央に対し、神村学園はDFラインから前線までの選手が流動的に動き、ボールに係わって押し込み続ける。

 そして、ゴール前ではボルシアMG(ドイツ)入りが発表された“高校最強”FW福田師王(3年)が動き出しを繰り返す。また、右の181cmSB有馬康汰(2年)と左のU-16日本代表SB吉永夢希(2年)の両DFが積極的にシュートや縦突破からのクロス。だが、出水中央もカウンターで応戦し、1トップのFW野村一颯(2年)が思い切りの良いシュートを打ち込む。また、MF松下怜央(3年)のロングスローで相手ゴールを脅かすシーンもあった。

 先制点は飲水タイム後の前半33分に生まれた。神村学園は「常に前に入っていくところは意識していました」というC大阪内定MF大迫塁(3年)が、敵陣中央から左へ流れながらドリブル。最後は、平行の左足クロスに走り込んだMF高橋修斗(2年)が左足ダイレクトで決めた。

「それまで、クロスを何となく上げていた。(どうしても競り合いで)福田が勝つので。でも、PAのところまで侵入して、という話をしました」と有村監督。狙いとする形から、清水MF高橋大悟を兄に持つレフティーのゴールで先制点を挙げた。さらに3分後には、大迫の右CKをニアのCB中江小次郎(3年)が頭で合わせて2-0と突き放す。

 神村学園は後半にも大迫がクロスバー直撃の左足ミドルを放ったほか、意図的に下がってボールへの係わりを増やした福田がゴールを狙う。後半9分にはU-16日本代表FW名和田我空(1年)を投入。そのドリブルも交えて出水中央にプレッシャーを掛けた。

 それでも、出水中央は前半から好守を見せていたGK上脇瑞輝(3年)が後半もファインセーブを連発。また、カバーリングやシュートブロックで存在感のある動きを見せていたDF平喜一郎(1年)中心の5バックが、集中した守りを続ける。そして、カウンター攻撃。MF戸島滉心(3年)のスルーパスで野村が抜け出すシーンもあった。

 神村学園は完璧ではなかったものの、成長株のCB大川翔(3年)、CB中江、そしてアンカー気味にプレーしたMF笠置潤(3年)がほぼ隙を見せずに無失点。スペースがない中でラストの質など課題は残ったものの、快勝で決勝進出を決めた。

 神村学園は優勝候補の一角に挙げられたインターハイで初戦敗退。大会直前に主力選手を含めて新型コロナウイルスに感染してしまい、明らかなコンディション不足で日本一への道を断たれた。大迫は「(コロナの影響は)偶然ではなく必然だと思っていて、何かあったからそうなったと思うし、だから結局勝てなかったと思う」。その反省から個人、チームとして本当に隙をなくして日々を送ることにこだわってきた。

 今大会も「一つひとつのプレー、戦うところ、セカンドの回収とか突き詰めて圧倒して勝たないといけない。ただ勝つだけじゃダメだという認識がある」と大迫。この日は攻め続ける中で幾度かカウンターを受けるシーンもあったが、各選手が切り替え速く守ることなどを徹底した。夏から変わったチームは、特長の攻撃面でもより多彩に。ベンチに入れない仲間たちが作り出す空気感も選手たちの後押ししている。

 大迫はその声出し、サポートに感謝。そして、「(自分たちのことを)犠牲にしてでもやってくれる選手がいることを考えたらやるしかない」。全国大会に出場すれば彼らにも新たな出場チャンスが出てくるだけに、その機会を必ずもたらす考えだ。

 決勝へ向けて、大迫は「神村学園の良いところは1点獲ったら2点獲るところだし、9点獲ったら10点獲るところ。その姿を見て神村学園に入ってきたので、その神村学園の姿を体現したい。(個人的にも)県大会は本当に自分が鹿児島県でする最後の大会。大迫塁のプレーを鹿児島県全体に見せて、鹿児島県全体に応援してもらえるように。そういう気持ちで臨みたい」。大迫は1年時からエース番号14を背負ってきたが、全国大会での最高成績は昨夏のベスト8。高校サッカーの難しさ、また“面白さ”を学んできた。そのレフティーは、今夏の敗戦後「最後、絶対勝ちます」と誓った通り、チームメートともに鹿児島県の歴史を塗り替えて初の日本一に挑戦する。

前半33分、MF高橋修斗が先制点

前半36分にはCB中江小次郎(20番)が頭で加点

(取材・文 吉田太郎)
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