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徹夜で仕上げたメンバー全員への手紙…飯塚DF松島朝日「みんなが一緒に戦ってくれた」

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松葉づえ姿で観戦するDF松島朝日(3年)

[1.2 選手権3回戦 日体大柏高 1-0 飯塚高 柏の葉]

 敗戦の瞬間を松葉杖をついた生徒は、ピッチ脇から見届けた。

 昨年12月31日に行われた2回戦、飯塚高の背番号2、DF松島朝日(3年)は、前半終了間際に左足首を負傷。相手に引っ掛かって転んでしまったところを上から踏まれた。

 瞬間的にプレーの継続は難しいと自覚があるほどの怪我だったが、痛みをこらえてピッチに戻った。しかししばらくして自ら交代を要求。「前半だけでも出て貢献したいと思ったけど、痛すぎてこれ以上やってもチームメイトにかけると思った」。病院に直行すると、左足首の靭帯損傷で、全治2か月と診断された。

 それでもチームのために何か出来ることはないかを考えた。そして中辻喜敬監督と相談の上で、メンバー全員に手紙を書くことにした。「昨日徹夜して、一人ひとりに書いて、試合前のロッカールームで渡しました」。選手らは次々とテーピングに2番を書き込み、試合に臨んだ。「みんなが一緒に戦ってくれたと思います」。

 特に期待をかけた選手がいた。試合前日、手紙を書く提案とともに、中辻監督から「お前なら代わりを誰に託せるか」と聞かれた。そこで指名したのが、2年生のMF溝口敢大だった。FWからDFまでをこなすユーティリティな選手で、中辻監督も同意見だったという。

「溝口への手紙には、取れると思ったら思い切って取りに行っていいし、ファウルになっても前を向かれたら遅らせたり、楽しんでやってほしいと。あとは託したと書きました」。後輩のプレーへの評価を問われると、「ハードワークしてくれたので、悔いは残っていないです」と清々しい表情で話した。

 卒業後は地元の広島県の福山大学に進学してサッカーを続ける。まずは怪我をしっかりと治すことが先決だが、今回の怪我を教訓にしながらも、怪我を恐れないプレーをしていきたいとも強調する。「怪我にビビッてプレーするとまた怪我すると思うので、自分らしく、前向きにプレーしていきたいと思います」。松島のサッカー人生において、今日という日はまだまだ通過点に過ぎない。

(取材・文 児玉幸洋)
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