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脳裏をよぎった苦い記憶…東山DF新谷陸斗、過去を払拭して“再び”国立の舞台へ

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東山高DF新谷陸斗(3年)(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[1.4 全国高校選手権準々決勝 東山高 0-0(PK4-3) 日体柏高 駒場]

 苦い記憶が、少しだけ脳裏をよぎったという。しかし、その過去を払拭するかのように、東山高DF新谷陸斗(3年)は右足を力強く振り抜いた――。

 初のベスト4進出を狙う東山だったが、激戦区・千葉県を初めて制して選手権に乗り込んできた日体柏高に苦しめられた。最終ラインから丁寧にパスをつながれるだけでなく、状況に応じて最前線に構える190センチFWオウイエ・ウイリアム(3年/柏内定)目掛けたロングボールを放り込まれるなど、押し込まれる時間帯が続いてしまう。

 しかし、前半11分と同34分の危機をGK佐藤瑞起(3年)のビッグセーブでしのぐなど、簡単には得点を許さなかった。「厳しい展開の中で相手の良さが出て、苦しめられる状態になってしまった。それでも無失点で、佐藤瑞起がスーパープレーで守ってくれた」。自身も「うまいし、強かった」というオウイエに粘り強く対応。「上回られている部分はあったけど、自分の良さであるスピードを活かして対応できた部分もあった」とゴールを許さなかった。

 0-0のまま前後半終了のホイッスルが吹かれ、勝敗の行方はPK戦に委ねられることとなった。東山の一番手で登場したのが新谷だった。

 苦い経験を味わったのは、約5か月前だ。インターハイに出場した東山は3回戦で矢板中央と対戦。先制されながらも追い付くと、1-1のままPK戦に突入した。ともに4人目までを成功させる中、先攻の5人目としてペナルティスポットに向かったのが新谷。しかし、シュートは枠を外してしまい、後攻の矢板中央に決められてベスト8進出を逃していた。

 そして、迎えた日体柏戦のPK戦。夏は5番手を務めた新谷は1番手で登場。「インターハイのときは、自分が外してしまう不甲斐ない形で終わってしまった。インターハイのフラッシュバックではないけど、そういう意識もあった」。少しだけ苦い記憶が脳裏をよぎったようだが、「蹴りたい気持ちもあったし、皆も蹴らせてくれた」と右足から蹴り出したボールは見事にネットを揺らし、歓喜のガッツポーズを決めた。

「東山の代表として、責任を持って1本決めることができて良かった」

 PK戦でも守護神・佐藤瑞起がストップする活躍を見せ、チームはPK戦を4-3で制して初のベスト4進出を決めた。「子供の頃からの夢、選手権で国立の舞台に立ちたいとずっと思っていた。選手宣誓もさせて頂いて、そこにもう一回戻ってこようという意思は誰よりも強かったと思うので本当に嬉しい」。開会式で選手宣誓を務めた舞台。今度はプレーするためにピッチ上に立ち、さらなる躍進を目指す。

(取材・文 折戸岳彦)
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