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名門・帝京が「一番大事」な初戦を3-0で突破。悲願の選手権出場、日本一に挑戦し、「胸の星を10個に」:東京A

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後半17分、帝京高は1年生FW宮本周征(22番)が貴重な追加点

[10.22 選手権東京Aブロック3回戦 東京農大一高 0-3 帝京高 東久留米総合高G]

 14年ぶりの選手権へ、日本一へ、帝京が3-0発進――。第102回全国高校サッカー選手権東京都Aブロック3回戦が22日に行われ、帝京高が3-0で東京農大一高に快勝した。帝京は28日の準々決勝で東久留米総合高と戦う。

 緊張の初戦。試帝京の選手たちには「なんでこんなに上手くいかないんだろう」という思いがあったという。前半4分、MF山崎湘太(3年)の鋭い左クロスが相手DFのオウンゴールを誘って先制。だが、なかなか次の1点を奪うことができなかった。

 石川創人監督が「逃げることはしたくなかった。やってきたことを貫いて、ボールを大事にして、前から行こうと」と説明した東農大一は勇気を持ってハイラインで対抗。右SB長谷川尚樹(3年)が身体を投げ出して相手の突破を阻止し、GK米川和輝(3年)も好セーブを見せた。

 また、CB三谷海地、MF田中捷喜、MF吉田健人、MF宮崎隆世主将を含めた3年生6人が中心となって引かずにしつこくボールを奪いに行った。帝京はロストこそ少なかったものの、ボールを大事にし過ぎた面があり、後方でボールを繋ぐ時間が増えてしまう。

 東農大一は、ボールを奪うとSBも高い位置を取って果敢な攻撃。エース宮崎がロングシュート、カットインシュートへ持ち込んで会場を沸かせる。一方の帝京は今治内定のU-18日本代表候補FW横山夢樹(3年)が左サイドからのドリブルでPAへ侵入。38分には、抜群のキープ力を見せていたMF土本瑶留(3年)のスルーパスから横山がPAを攻略する。だが、MF樋口晴磨(3年)の決定的な左足シュートは枠を外れてしまう。

 帝京の日比威監督は「相手の立ち位置を見て、考えて、シンプルに裏を突くとかあっても良かった。メリハリがないと。相手の脅威にならないといけない」と指摘。ボールを支配していたものの、相手にとって怖い攻撃をすることができていなかった。

 後半4分にはDF背後へ抜け出した樋口の左足シュートがポスト。逆にカウンターから東農大一MF宮崎に突破を許すシーンもあった。それでも、今治内定のU-18日本代表CB梅木怜(3年)がスピードを活かしたカバーリングで再三相手の攻撃の芽を摘むなど、CB田所莉旺(2年)らとともに決定打を打たせない。

 その帝京は交代出場したMF橋本拓人(3年)とFW宮本周征(1年)が日比監督も評価する働き。後半17分、敵陣右中間で抜け出した宮本が縦へ持ち込み、豪快な右足シュートで待望の2点目をもたらす。さらに37分には左CKのこぼれ球を橋本が左足ボレーで決めて3点目。後半も泥臭く、またアグレッシブに戦った東農大一を振り切り、3-0で初戦を突破した。

 インターハイ予選で初戦敗退している帝京にとっては、何より勝つことが重要。その1勝を同じく重視している無失点で勝ち取った。プリンスリーグ関東1部からややメンバーを入れ替えた中で前向きな勝利。だが、梅木は「選手権の一番目は一番大事というので、そこを勝てたので、今日の課題とかを一週間で改善して次に繋げていきたい」と引き締める。

 帝京は国見高(長崎)と並んで戦後最多タイの選手権優勝6回。09年度大会を最後に選手権の舞台から遠ざかっているが、15年の日比監督就任から非常に連動性の高い攻撃スタイルを確立し、昨年のインターハイで18年ぶりの決勝進出、全国2位に食い込んだ。年々選手層が厚みを増し、クオリティも向上。激戦区のプリンスリーグ関東1部でも昨年、今年と上位争いを演じており、実力は全国上位と言えるだろう。だが、日比監督は「トーナメントで強い帝京じゃなくなっている」と一発勝負で勝ち抜くことが簡単ではないことを理解している。

 ここからの3試合、力みすぎずに自分たちがやってきたことを表現できるか。今夏の敗戦からチームは変化。昨年からレギュラーを務める梅木は、「取り組みだったりは少し変わったと思う。夏休みの遠征や各カテゴリーでハードだったと思うんですけれども、そこをしっかりと乗り越えてみんなで高め合って行けたかなと思っています」と説明する。そのチームで必ず、全国切符を勝ち取る意気込みだ。

 土本は「ここ十数年出れていないんで、責任を持って、絶対にまず都で1位になってしっかりと全国取りたいと思っています」と語り、梅木は「必ず全国に出て、胸の星を10個にできるようにやっていきたい」。インターハイを含めて10度目となる全国制覇がチームの大目標。それを実現するために、目の前の戦いを一つ一つ勝ち続ける。
 
(取材・文 吉田太郎)
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吉田太郎
Text by 吉田太郎

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