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青山学院に6発快勝の國學院久我山を牽引する10番。MF山脇舞斗はカナリア軍団と西が丘で決着を付ける

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國學院久我山高の攻撃を牽引するMF山脇舞斗(3年=ブリオベッカ浦安U-15出身)

[10.28 選手権東京Aブロック準々決勝 國學院久我山高 6-0 青山学院高 駒沢補助競技場]

「高校3年間で選手権が一番大事で、本当に負けたら引退という形になってしまいますし、メチャクチャプレッシャーはあります。でも、そこで勝てたら良い景色を見られると思いますし、やっぱり高校生活はここに懸けてきているので、自分の持っている力を発揮しつつ、絶対に勝ちたいですね」。

 國學院久我山高の10番を背負うMF山脇舞斗(3年=ブリオベッカ浦安U-15出身)は、改めてここからの戦いに気を引き締める。第102回全国高校サッカー選手権東京都予選Aブロック準々決勝が28日、駒沢補助競技場で行われ、連覇を狙う國學院久我山は青山学院高と対峙。6-0で勝利を収め、ベスト4へと駒を進めている。

 西が丘行きを懸けた一戦は、立ち上がりから國學院久我山が攻め込むものの、なかなか得点を挙げるまでには至らない。青山学院も右からDF熊谷英生(3年)、DF山澤剛瑠(2年)、DF打木翔太(3年)が並んだ最終ラインの3人に加え、右のMF栗林蒼大(2年)、左のMF柴幸太郎(3年)もスペースを埋めた5バック気味の布陣で対抗。最後の局面では身体を張りつつ、ゴールポストも味方に付けながら相手の攻撃を凌いでいく。

 だが、20分に試合は動く。國學院久我山は右サイドへの展開から、DF平原大煌(2年)がフィニッシュ。こぼれに反応したFW高梨通晴(3年)がボールをゴールへ流し込むと、39分にも再び高梨が追加点。青山学院もFW中原佑太(2年)が裏への抜け出しからチャンスを掴みかけるも、前半は國學院久我山が2点をリードして40分間が経過した。

國學院久我山はFW高梨通晴(3年)が2点目をゲット!


 後半も青山学院は粘り強く守る。2分と8分にはGK長澤広大(3年)が連続ファインセーブ。攻撃面でもMF木暮遥(3年)を中心に時折チャンスの芽までは作り出したが、シュートには持ち込めない。すると、16分には國學院久我山に3点目。中央から左サイドへ流れた山脇が左足で放ったシュートは、右ポストの内側を叩いてゴールネットへ転がり込む。

「あまり点が入らなくて、痺れを切らしていたので、決められて良かったです。自分の役割は試合を決定づけることなので、その役割は果たせたかなと思います」という10番の一撃でリードを3点に広げた國學院久我山は、以降もDF太田圭駿(2年)、MF伊東航(1年)、FW佐々木登羽(3年)といずれも途中出場の選手が得点を重ね、終わってみれば6-0の快勝。5年連続となる準決勝進出を手繰り寄せた。

 1年時からレギュラーを張り続けてきた山脇は、ある試合を引き合いに出して、この日のチームの出来を戒める。「去年の岡山学芸館戦はずっと攻めていたのに、点を決められずに、結局PK戦で負けてしまったので、今日も何回か決めなくてはいけない場面もあって、それを外しているようでは全国では絶対に勝てないですし、本当に相手が強くなってきたら決定機が1本あるかないかというところで、どう決め切れるかが大事なので、自分も含めてもっと決定力を上げないとなと思います」。

 昨年度の高校選手権。3年ぶりに全国へと出場した國學院久我山は、初戦の近大和歌山高戦に3-1と勝利したが、岡山学芸館高と対峙した3回戦は、押し込む展開の中で1点を奪えず、最後はPK戦で敗退。結果的にその相手が日本一まで駆け上がっただけに、悔しさばかりが募ったことは想像に難くない。

 その試合にもスタメン出場していた山脇は、「予選ではインターハイで準優勝した帝京に勝っていたので、ある程度は全国のレベルをわかっていたつもりだったんですけど、自分たちはPKの練習もしていなくて、本当に強いチームはそこまでやるのかと思いました。凄く悔しかったですけど、学べることもあったので、それを今年の自分の代で出したいなと考えてきました」ときっぱり。勝利のために細部にこだわる姿勢を貫いてきた。

 この夏には新たな基準を手に入れる試合も経験した。旭川で開催されたインターハイ。初戦となる2回戦で激突したのは、プレミアリーグEASTで首位を快走していた青森山田高。優勝候補筆頭とも目されていた強敵相手に、國學院久我山は後半9分までに5失点を献上。終盤に2点は返したものの、2-5というスコアで完敗を突き付けられる。

 その試合にもフル出場した山脇は、「山田はフィジカルが強くて、足元も普通に上手かったですけど、立ち上がりさえ悪くなければ結果はわからなかったかなと。ただ、自分を含めて3人ぐらいしか去年の全国を経験していないので、みんなの場慣れしていないような空気が連鎖して、チームとしてうまく行かなかったのかなと思いました」とその80分間を振り返りながら、「あそこで負けたところから練習の強度も上がりましたし、みんなにより勝ちたいという気持ちが芽生えたので、良い方向に行っていると思います」と言葉を続ける。全国のステージで感じた手応えと課題を糧に、最後の選手権へと歩みを進めてきたわけだ。

 準決勝の対戦相手は帝京高に決まった。昨シーズンはインターハイ予選準々決勝と選手権予選準決勝の2度に渡って激突し、どちらも好ゲームを繰り広げながら、前者は帝京が、後者は國學院久我山が勝利し、そのまま全国大会まで勝ち上がっている。

 どちらの試合もピッチに立っていた山脇の決意が力強く響く。「次の試合で負けたら“1勝2敗”で負け越しになってしまうので、そこにも焦点を当てたいですし、帝京も去年負けた借りを返しに来ると思うので、本当にみんなで良い準備をしていきたいです。僕は去年の大舞台を経験しているので、そこでどれだけチームを高いレベルまで練習で引き上げられるかが大事ですし、試合でもみんなを引っ張っていけたらなと思います」。

 昨年の大エース、塩貝健人(現・慶應義塾大)から10番を受け継いだ國學院久我山が誇る攻撃の支柱。次に狙うはカナリア退治。積み重ねてきた3年間の集大成。西が丘のピッチを華麗に舞う山脇の姿が、今から楽しみだ。



(取材・文 土屋雅史)
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土屋雅史
Text by 土屋雅史

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