beacon

[MOM4525]帝京三MF嶋野創太(3年)_8年ぶりの山梨県制覇弾、延長激戦に終止符打つファインゴール

このエントリーをはてなブックマークに追加

帝京三高MF嶋野創太(3年)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.11 選手権山梨県予選決勝 日本航空高 2-3(延長)帝京三高 JITス]

 8年ぶりの山梨県制覇を成し遂げる決勝ゴールを決めた。帝京三高MF嶋野創太(3年)は延長後半2分、自らのドリブルで敵陣に入り込んでカットインから右足一閃。最後にゴールネットを揺らし、選手権切符をその手で掴んだ。「いまは正直、めっちゃうれしい」と試合後に喜びを語った。

 帝京三は日本航空高と拮抗状態のまま、スコアレスで前半を折り返すと、後半13分にFKからFW遊佐凜太朗(3年)のゴールで先制に成功する。すると、1-0の状態で同21分に交代カードを使用。MF秋間翔太(3年)を下げ、ベンチスタートだった嶋野を投入した。

 相良和弘監督は試合後にその策を語る。4-4-2の左サイドハーフで先発した秋間は前半のハードワークで相手の右SBを消耗させることに成功。「後半スタートから航空のアプローチが遅くなってきた。ヘディングで返せなくなってきていた。嶋野はスピードがある。そこを生かしていけと」。高さのある日本航空の空中戦を封じ、地上戦で優位に立つための嶋野投入だった。

 だが、試合は徐々に劣勢に傾いた。帝京三は後半29分にFKからFW櫻井元舟(3年)が追加点を奪うが、その後は相手の得意技でもあるセットプレーを浴びる。後半34分、同39分に2失点を喫し、2-2と同点に追いつかれてしまった。

 投入当初から「雰囲気変えてやろうと思っていた」という嶋野だが、劣勢を跳ね返すことはできない。後半36分にはFW小澤波季(3年)のパスを受け、PA左から右足ダイレクトを放つも、ゴール右外にわずかに外れる。しかし、頭を抱える嶋野を支えたのは周囲の声だ。ベンチからは「大丈夫!」とエールが飛んだ。

 相良監督は今大会の嶋野の調子自体は「良くなかった。ちょっと迷いがあった」と振り返りつつ、教え子を信じ続けた。「(後半36分の)入りそうだったやつを外したけど、もういいからと仕掛けさせた」。仲間やスタッフの声を耳にし、嶋野の迷いは振り切れる。「励ましの言葉をいただいて、それで自分も落ち着けた」。そして2-2で迎えた延長後半2分に躍動する。

 日本航空のカウンターを防いだ帝京三は、逆カウンターで一気に攻勢を強める。自陣からつなぎ、中盤のMF山岡陸翔(2年)が前線にパス。それを受けたのは嶋野だ。「もう無心で、ボールが来たら自分でゴールに行くと考えていた」。加速した嶋野はPA左に入り込むと、相手のマークをカットインでかわして右足を振り抜く。「ちらっと見て(ゴールの)ニアサイドが空いていたので」。鋭い弾道はゴール左隅を突き、決勝ゴールとなった。

 それまでの失敗には「ちゃんと決め切るところで決め切れなかったのは自分の反省」と振り返りつつ、嶋野は「最後まであきらめないでやるということは自分でも思っていた。最後までできたのでよかった」と笑顔を見せる。指揮官も「ああいう形はトレーニングで見ていた。よく決めた。彼のいいところはスピードとシュート力。それが出た」と目を細めていた。

 胸に宿すのは“帝三魂”だ。「自分自身、帝京第三のユニフォームを着させてもらっているので、自分がやらないといけないと思っている」とその自覚を口にする。山梨を制覇した誇りと帝三魂とともに、全国では「自分たちらしく、最後まであきらめずにやっていきたい」と力を込めた。

(取材・文 石川祐介)

●第102回全国高校サッカー選手権特集
石川祐介
Text by 石川祐介

TOP