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[MOM4530]堀越FW高谷遼太(3年)_「ファイナル男」の面目躍如!ここまでノーゴールのストライカーが“超土壇場”で劇的同点弾!

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土壇場で同点弾を叩き込んだ堀越高FW高谷遼太(3年=ヴェルディSSアジュント出身)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.11 選手権東京都予選Bブロック決勝 修徳高 1-1 PK2-3 堀越高 味の素フィールド西が丘]

 何となく予感はあったという。決勝戦を迎えるシチュエーションは2年前と同じ。それならこちらも2年前と同様に、大事な結果をこの重要な局面で手繰り寄せられるんじゃないかと。さすがに、あんな劇的な時間でそれが実現するとは思っていなかったけれど。

「一昨年も決勝の舞台までノーゴールだったので、そういう流れもあったのかわからないですけど、薄々は『決められるんじゃないか』と感じていました。『今日は自分が点を獲るしかないな』と思って試合に挑んだので、そういう形でチームに貢献できて良かったなと思います」。

 大舞台になればなるほど、この男の集中力は研ぎ澄まされる。堀越高が誇る絶対的ストライカー。FW高谷遼太(3年=ヴェルディSSアジュント出身)の驚異的な勝負強さが、東京ファイナルの土壇場も土壇場で、眩い光を放った。

「決勝戦なので難しい試合にはなると思ったんですけど、その通りになりましたね」と高谷も振り返った選手権東京都予選Bブロック決勝。修徳高と対峙した試合は、前半から堀越が攻勢に。開始4分にはMF仲谷俊(2年)の右CKに、高谷が合わせたヘディングはクロスバーにヒット。今から考えれば、この一撃が入らなかったことは、その後の試合展開を難しいものにしていく。

 押し気味に進めていた前半をスコアレスで折り返すと、後半5分に一瞬のスキを突かれて失点。堀越は1点を追い掛ける展開に。何度かチャンスは掴みながら、なかなかゴールを陥れられず、リードされたままで時間ばかりが経過していく。

 それはもうほとんど80分間が終わりかけていた最終盤の40分。右サイドでFW中村健太(3年)からのパスをMF渡辺隼大(2年)が受けた瞬間に、9番の頭の中には明確なイメージが浮かび上がる。「サイドに展開された時に、『中では絶対に競り勝てる』と思って待っていたので、良いボールが上がってきて、あとは当てるだけでした」。マーカーの前に躍り出ると、高谷の頭に軌道を変えられたボールは、綺麗な弧を描いてゴール左スミへ飛び込んでいく。

「自分は正直言うとあの軌道は見ていないんですよ。そのあとにたぶん倒れて、ボールを見ていなくて、入ったあとしか見ていないので、どうなったのかわからなかったんですけど、決まっていたので良かったかなと思います」。全速力でチームメイトたちが待つアップエリアへと駆け出していく。



 “2年前”もそうだった。東京制覇の懸かった選手権予選決勝。そこまで1つのゴールも挙げられていなかった1年生ストライカーは、その大舞台で大会初得点を記録。チームも勝利し、全国への扉をこじ開ける。“持っている”男の面目躍如、再び。両手の人差し指を天に突き上げ、自らのゴールを祝ってみせる。

 もつれ込んだPK戦。先攻の堀越は1人目が失敗し、あとのない状況で迎えた3人目。この大事なキッカーを任された高谷は、ペナルティスポットへと歩みを進めていく。「自分も足が攣りかけていたので、最後までどこに蹴るか悩みましたけど、キーパーが良い反応をしていたので、『取れないコースに蹴ろう』と思って、あそこに蹴り込みました」。ボールが飛び込んだのは、どんなGKでも絶対に取れない右上ギリギリのコース。その強心臓ぶりが頼もしい。

 最後は5人目で決着が付いた。相手のキックがクロスバーに当たると、堀越の2年ぶりとなる東京制覇が決定する。「1点を追い掛ける展開で、後半の最後の39分ぐらいまで得点も入らなくて、でも、この勝利は最後まで諦めずにみんなで戦えた結果なのかなと思いますし、まずチームが勝つことが一番ですけど、その中で苦しい展開だったら自分がやらないといけないなとは思っていたので、ゴールを決められて良かったです」。まさにストライカーの仕事、完遂。高谷が記録した起死回生の同点弾が、絶体絶命のチームを鮮やかに救ってみせた。

 1年時に経験した選手権では、2試合に先発で出場したものの、ゴールは奪えず。いわゆるトップレベルとの大きな差を感じる機会になったという。「2年前は走り勝てず、球際も行けず、自分の中では後悔しか残らない結果で終わってしまったんですよね」。

 だからこそ、高校ラストイヤーで引き寄せたリベンジの晴れ舞台では、もう活躍する以外の選択肢は残されていないと言っても、言い過ぎではないかもしれない。「また全国の切符を獲れたということで、一昨年より良い結果を残したいですし、もっと言うならば堀越史上最高を超えられるように頑張りたいなと思っています」。

 笑った高谷の言葉が力強い。「予選では今大会初ゴールがここまで遅れたので、チームには申し訳ないと思っていますけど、これを機に全国でも得点したいなと思っています」。

 ここから先はすべてが間違いなく大舞台。掲げた『堀越史上最高』の結果となる全国4強を実現するためには、高谷の披露してきた確かな勝負強さを、どの試合でも過不足なく解き放つ必要があることは、きっと本人が一番よくわかっている。



(取材・文 土屋雅史)

●第102回全国高校サッカー選手権特集
土屋雅史
Text by 土屋雅史

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