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[MOM4591]明秀日立DF飯田朝陽(3年)_疑惑の判定で失点関与も気持ち切らさず「魂」の同点弾

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明秀日立DF飯田朝陽(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.31 選手権2回戦 東海大仰星 1-1(PK5-6)明秀日立 等々力]

 疑惑の判定で失点に絡む形となったが、チームメイトにも支えられ、気持ちを切らすことはなかった。前半12分の東海大仰星の先制点の場面。FW小林旺誠(3年)がシュートの前に競り合いの中で明秀日立高(茨城)のDF飯田朝陽(3年)を後ろから押しているようにも見えたが、主審の笛は鳴らず、得点が認められた。

 不運な形で失点に関与することになった飯田は「審判の判定に関しては受け入れられない部分もあった」としながらも、「それを言っても仕方がないし、失点してからは自分たちの戦いを見せて勝ちたいと思っていた」と必死に気持ちを切り替えようと努めた。

 それでも萬場努監督によると、「ハーフタイムで戻ってきたときは平常心を保つのが難しそうだった」という。チームメイトに「ごめん」と謝る飯田に対し、「メンバー外の選手やベンチの選手が勇気を与える働きかけをしてくれて、そのころには落ち着いていた。悪い言葉で言うと、“イジる”感じで、“こういうこともあるよ”と」(萬場監督)。あえて冗談交じりに励ますことで飯田を立ち直らせようとした仲間のサポートもあり、飯田自身、「前向きな言葉をかけてくれて、後半はリラックスして入れた」と吹っ切れていた。

 すると、そんな男にサッカーの神様が微笑んだ。後半27分、MF吉田裕哉(3年)の右CKに飯田が完璧なタイミングで合わせるヘディングシュート。飯田の打点の高い一撃で1-1と試合を振り出しに戻した。「自分たちを信じて戦って、自分のゴールで追いつけてよかった」。PK戦でも2人目のキッカーを務めた飯田はゴール右を狙ったキックがGKに触られながらもゴールラインを越え、何とか成功。「本当にホッとした。蹴ったとき『あっ』と思った」と苦笑いを浮かべた。

 起死回生の同点ゴールも、気持ちで押し込んだPKも、チームメイトから「魂」と呼ばれる飯田の真骨頂だった。「ディフェンスのときにスライディングで奪ったり、気迫あふれるプレーが周りからは『魂』に見えるのかなと思う」。失点に絡む悪夢のスタートから最後はヒーローとなったセンターバックに萬場監督も「取り返すチャンスをセットプレーで与えてもらった。失点のあとにどう振る舞うか。前半あれで崩れなかったし、この経験も彼のためになったと思う」と目を細めた。

(取材・文 西山紘平)

●第102回全国高校サッカー選手権特集
西山紘平
Text by 西山紘平

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