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「点取らんかった3年生が悪いから、おまえは悪ないぞ」PK失敗に泣き崩れた初芝橋本2年MF角野有右斗へ…先輩が引き受けた敗北と責任

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初芝橋本高MF角野有右斗(2年)(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[12.31 選手権2回戦 初芝橋本0-0(PK7-8)堀越 駒沢]

 緊張のPK戦で失敗し、泣き崩れた。初芝橋本(和歌山)のMF角野有右斗(2年)は後攻となったPK戦の8人目キッカーを務めたが、相手GKに阻まれた。「めちゃくちゃ緊張した。あ、僕の番やと思って。蹴ったら外してしまった」と悔しさをにじませた。

 予選ではメンバー外だった。選手権の登録メンバーでは30人中の30番。1回戦でもメンバー外だったが、2回戦で初のベンチ入りを果たす。そして0-0で迎えた後半35分、3枚替えの一人として全国のピッチを踏んだ。「僕が出て勝たせたいという気持ちがあった」。阪中義博監督からは豊富な運動量を認められており、「走り回って、ボールを取って、前に運ぶように」と指示を受けた。

 それでも角野投入から5分で後半は終わった。PK戦では後攻・初芝橋本も7人目まで決め切るも、先攻・堀越高は8人目もPKを沈めた。すでにサドンデス。失敗した瞬間に敗退が決まる場面で、角野が後攻・8人目のキッカーとして立つ。右足シュートはゴール左隅に向かったが、相手GK吉富柊人(3年)に止められた。角野はその場に突っ伏した。

 3年生の高校サッカーを終わらせてしまった。「3年生に申し訳ないという気持ち。もう今はそれしかない」。初芝橋本は敗戦のショックで動けずにいたが、GK大竹野勇斗(3年)が角野のもとへ。今にも崩れそうな体を支えながら、後輩に言葉をかけた。

「おまえは悪くない。点取らんかった3年生が悪いから、おまえは悪ないぞ。おまえには来年があんねん。来年がんばれよ」

 阪中義博監督は、角野の失敗に本音をポツリ。思わぬ場面にめぐり合わせてしまったことに「正直、申し訳ないことをした。あいつにレッテルを張ってしまった」と優しさをのぞかせる。だが、この試合の先発11人は3年生だったこともあり、来年度は2年生のさらなる奮起が必要だ。「これをバネにしてもらいたい。角野はこれから成長するんちゃうかなと思うんです」と期待を寄せた。

「来年はこのピッチにもう一回戻れるように」と角野自身も成長を誓う。2年生を支えてくれた先輩への恩返しのためにも「いまの3年生を超えられるような学年にする。国立の舞台に立てるようにがんばりたい」。失敗を意味あるものに変えるべく、新たな一年に目を向けていた。

(取材・文 石川祐介)

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石川祐介
Text by 石川祐介

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