[12.31 選手権2回戦 帝京大可児高 1-3 佐賀東高 味フィ西]

　敗れた悔しさは、当然ある。しかし、涙は流さなかった。帝京大可児高のキャプテンを務めるMF吉兼伶真(3年)は、高校サッカー最後の一戦を終えて「やり切りました」と清々しい表情を見せた。

　試合は前半から動いた。13分、クロスからMF右近歩武(3年)に決められて佐賀東に先制されながらも、18分に背番号10を背負うエースFW加藤隆成(2年)が鮮やかなパスワークをゴールへと結び付け、帝京大可児が追い付く。しかし、34分にまたもやクロスからDF甲斐桜助(2年)にヘッドでネットを揺らされ、佐賀東に1点のリードを許して後半を迎えた。

　後半に入ると、帝京大可児がボール保持率をより高めて押し込む時間帯が続いた。中盤の底に入る吉兼は左右に的確なパスを散らしてリズムをもたらすだけでなく、果敢な突破で縦への推進力を生み出すなど、攻撃をけん引する。しかし、人数を割いた佐賀東守備陣を崩し切るには至らない。

「距離感が遠くて、正直みんな足が止まっている感覚があった。自分たちは相手の逆を突くスタイルでやっているのに、見たところに出したり、そういう甘さが出たと思う」

　後半15分にはFW田口大翔(3年)に決められ、リードを2点差に広げられてしまう。途中からトップ下へとポジションを移し、よりゴールに近い位置でプレーした吉兼は最後までゴールを目指したが、その後帝京大可児にゴールは生まれずに1-3で敗れた。

　ボールを保持して相手に圧力をかけ続ける攻撃的なサッカーを披露。帝京大可児らしいサッカーを表現したが、「ボール保持しているだけでは勝てない」と唇を噛む。「3点目を取られた後に引かれたので、1点の重みを感じた。まだ足りないと後輩たちも感じていると思うので、このサッカーを極めて勝てる帝京大可児のサッカーにしてほしい」と続けた。

　試合後には涙を見せるチームメイトも多かったが、吉兼は「涙は出なかった」という。その理由は「やり切った」から。「悔しいですけど、やり切りました、高校サッカー、ありがとうって感じです!! チームメイトにもありがとうという言葉しかない。本当に楽しかったです、ここのサッカー。悔いなしです!!」。

　吉兼の高校サッカーはこの日で終わりを迎えたが、サッカー人生は続いていく。「選手権を経験できたのは大きかった」とこの経験を無駄にすることなく、進学するびわこ成蹊スポーツ大でのさらなる進化を誓う。

(取材・文　折戸岳彦)

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●第102回全国高校サッカー選手権特集