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理想像はベリンガム…大津の188cm大器MF碇明日麻、J2水戸から世界挑戦へ「日本人でああいうプレーができたら世界に行ける」

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大津高MF碇明日麻(3年=FCK マリーゴールド AMAKUSA U15)

[1.2 選手権3回戦 昌平 2-2(PK5-4) 大津 浦和駒場]

 188cmの長身とポリバレントな能力で注目を集めてきた大器の冬は、全国ベスト16という悔しい結果で幕を閉じた。大津高MF碇明日麻(3年=FCK マリーゴールド AMAKUSA U15)はPK戦での敗退に「運もあるので仕方ない部分もあるけど、いまは率直に悔しい」と肩を落とした。

 技術の高い攻撃陣が並ぶ昌平高との選手権3回戦。今季の基本ポジションである最前線で起用された碇は、自慢の空中戦で次々に結果を出した。

 まずは0-0で迎えた前半37分、MF古川大地(3年)のクロスから空中戦を競り合うと、こぼれ球からFW山下景司(2年)が先制点を奪取。同点に追いつかれて迎えた後半28分には、同じく古川の右CKを高い打点で折り返し、FW稲田翼(3年)のゴールをアシストした。その他の場面でも、味方のクリアを次々にマイボールにする働きを継続。終始、攻撃の中心に君臨していた。

 ところが、この働きが勝利につながることはなかった。2度にわたって先行した大津だったが、いずれも10分以内に同点ゴールを献上。碇によれば「点数を決めた後もしっかり守り切ろう、クリアもはっきりやって粘り強くやろうと話した」と準備は怠らなかったそうだが、この2失点がPK戦での敗戦につながった。試合後には「点数を取った後に追いつかれるのはまだまだ甘かったということ」と課題を口にするしかなかった。

 1年時はボランチのジョーカーとして全国選手権準優勝に貢献し、昨季はCBの一角で2年連続のベスト8に導いた碇。今季は長身を結果に活かすべくFWにコンバートされ、高円宮杯プレミアリーグEASTで20得点を挙げて得点王に輝いたが、最後の冬はノーゴールのまま終えた。「自分の点数ではなく、味方が結果的に決めてくれてよかった」とアシストには手応えを口にしつつも、「結果にこだわると、自分としては悔しい」と厳しい自己評価を下した。

 それでも地元の大津で3年間を過ごし、重ねてきた成長は大きな財産となった。「入学してきた時はちょっと自信がないような感じだったけど、自信を持ってプレーできるようにしてくださった山城先生(山城朋大前監督)、平岡(和徳)総監督の教えがあってこそ今の自分がある」。卒業後はJ2の水戸ホーリーホックに進むことが決まっており、「今後はプロキャリアになるので、結果を残して、少しずつ恩返ししていきたい」と新たなステージでの活躍を誓う。

 1年時からの活躍でJ1クラブからも大きな注目を集めていた碇だが、あえてJ2リーグからの出発を決断。「個人的にはJ1にポンと高校生が入ってもレンタルされるケースが多いと思う。そのことを考えると、水戸さんの話を聞いて、若手選手を育てる能力であったり、環境の面も含め、自分が成長できるのは水戸でしかないなと。水戸でキャリアをスタートさせることで今後のサッカーキャリアも成長すると思った」。現実的な選択で地道にキャリアを描こうとしている。

 それでも将来的な目標は高く持っている。理想像とするのは今季レアル・マドリーに加入し、ラ・リーガで得点ランキングトップに立っているイングランド代表MFジュード・ベリンガムのようなプレースタイル。「高さもあって、足元の技術もあって、前への推進力もある。ああいうボランチが理想」(碇)。前線起用で培った得点力も重なる部分であり、「前はブスケツ選手を見ていたけど、前に行けるベリンガム選手のほうが自分のスタイルに合っているかなと思う」とプレー映像から学びを深めているようだ。

 またベリンガムに自らを重ねながら「チャンピオンズリーグの得点シーンを見ても前に推進力を持っているし、日本人でああいうプレーができたら世界に行けると思う」と世界挑戦を思い描く。来年のU-20W杯に向けたU-19日本代表の招集経験はないが、「プレミアリーグで結構点を取っていたので入るかなと思っていたけど、まだどこか足りない部分があるんだと思う。来年は試合で結果を出さないと呼ばれないと思うので自覚を持ってやっていきたい」と野心を見せた。

 そのためには来季、水戸でいち早く出場機会を掴み、結果を出したいところだ。「強度の部分は違いも体感すると思うけど、早い段階で慣れたい。そしてプロの世界では結果が大事になるので、ボランチで試合に出る以上は相手からボールを取る数であったり、自分の良さは攻撃だと思うので、点を取れる選手になれたら」。世界基準の素質を持つ若武者は、1年目からJリーグのレギュラーの座を狙う。

(取材・文 竹内達也)

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竹内達也
Text by 竹内達也

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