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目標の国立4強へあと1勝。本格強化8年目、「ボールは価値が高い」ことを学んできた近江が初の準々決勝進出

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滋賀の新興勢力、近江高が初の8強入り

[1.2 選手権3回戦 明秀日立高 1-1(PK2-4)近江高 等々力]

 2016年の本格強化開始から8年目。滋賀の新興勢力、近江高が初の準々決勝進出を決めた。それもインターハイ3位の日大藤沢高(神奈川)を破った初戦に続き、インターハイ優勝校の明秀日立高(茨城)も撃破。今年のプリンスリーグ関西1部で2位に入っている実力派は、全国舞台でもそのスキルの高さと強さを発揮している。

 元Jリーガーの前田高孝監督が、「やっぱり嬉しいですけれども、この前の前半もそうやし、きょうの前半も色が出せていないのが心残りなんですけれども……」と苦笑いしたように、2日前の初戦に続き、この日も入りは悪かった。

 球際の強度とカウンター攻撃が強烈な明秀日立にマイボールを引っ掛けられ、一気に裏返されてしまうシーンが即発。前半はファインゴールを決められるなど、明秀日立に良さを出させてしまった。

 それでも、後半開始から3バックのうち2枚をチェンジ。キーマンのDF金山耀太主将(3年)を3バックの左から、左WBへポジションを上げる。リスクを負うことをやや避けていた前半から、指揮官に「怖れずにやれ」と送り出された後半は立ち上がりからラッシュ。連続でチャンスを作り出すと、7分に左サイドから仕掛けたエースMF山門立侑(3年)が相手DFのハンドを誘い、自らPKを決めて同点に追いついた。

 後半はMF西飛勇吾(3年)、MF川上隼輔(3年)のダブルボランチとトップ下へ移行したMF浅井晴孔(3年)、山門が中心となって距離感の良いパス交換。右WB鵜戸瑛士(3年)と左WB金山もどんどん崩しに係るなど躍動感のあるサッカーを展開した。

 明秀日立の萬場努監督が「相手のスキルを上手く分断できなかった」と振り返ったように、近江は取り組んできた強みを存分に発揮していた。近江の前田監督は「『ボールは価値が高いんだよ』、と3年間伝えてきているんで。奪うにしても、扱うにしても。価値を持ってやってもらっている」と説明する。

 トレーニングで安易にボールを失えば、厳しい言葉を受けることも。山門は「ボールへの執着心は凄く言われます」。失わない技術力を身につけること、またすぐに「価値の高い」ボールを奪い返すことに時間を注いできた。山門は「後半は自分たちのサッカーができていたと思いますし、細かいところを繋いで崩していくという面では結構見せられたと思います」。練習の成果をインターハイ王者相手に表現してのけた。


 スタンドの後輩たちも自信になるような戦いで勝利。前田監督は「今日に関して言うと、いかに(主導権を握っていた時間帯を)もっと長くできるのか。(まだまだ不足している部分があるので、)見た1、2年生は『もっとやらないといけない』『もっと突き詰めないといけないな』と感じて欲しい」と期待する。その一方、昨年度まで選手権1勝と全国舞台で結果の出ていなかった近江が、強敵に勝つ力を示していることも確かだ。

 金山は「これまでの全国大会でやれていないことはなかったんですけれども、最後勝つ、勝利のところが勝ち取れていなかった中で、こうやって非常に難しい試合だったんですけれども2試合勝ち切れたことは良かったと思います」と頷く。2試合連続で先制されながらも追いついてPK戦で勝利。スキルの高さに加えて勝負強さも示している選手たちは8強で終わるのではなく、国立4強という目標を必ず達成する意気込みだ。

 金山は「まだ自分たちが掲げた目標は達成できていないですし、まだまだ次があるので、しっかり良い準備をしてやっていきたい」と語り、前田監督も「彼らが目標で『今年は国立を』と言っているんで、もう一個トビラを開けたいと思っています」とコメント。近江は12月に“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグ昇格を懸けたプレーオフに初挑戦したが、ブロック決勝で鹿児島城西高に0-1で敗れて目標の一つを実現することができなかった。再び目標まであと1勝に迫ったチームは今度こそ勝つ。2日後の準々決勝の対戦相手は、プレミアリーグ勢の神村学園高(鹿児島)に決定。初出場した20年度選手権で敗れている強豪にリベンジし、新たなトビラを開く。

(取材・文 吉田太郎)

吉田太郎
Text by 吉田太郎

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