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[MOM4604]近江MF山門立侑(3年)_小柄なエースがインハイ王者相手にもブレない技術発揮。重圧感じずに2度のPKも成功

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PK戦4人目、近江高MF山門立侑(3年=西宮SS Jrユース出身)が右足シュートを決めて決着をつけた。

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.2 選手権3回戦 明秀日立高 1-1(PK2-4)近江高 等々力]

 168cm、64kgの小さなエースが貴重なゴールを決めた。後半8分、近江高(滋賀)はMF山門立侑(3年=西宮SS Jrユース出身)が左サイドからドリブルで仕掛けると、対峙したDFのマークを外してエンドライン際からクロス。「SBの裏をずっと狙っていて、抜け出した時にパスが来て、浮き球のクロスを上げようと思った」。これがカバーしたDFのハンドを誘い、PKとなった。

そして、自らPKスポットへ、同点の絶好機だったが、全くプレッシャーを感じなかったのだという。「プレッシャーは全然感じていなくて、自分の世界に入って蹴れたので良かった」。冷静に右隅へ決めて同点。これで2試合連続ゴールとなった。

テクニカルな選手が多い近江の中でも山門のスキルは特に光る。ボールタッチが非常に柔軟。相手を引き付け、足を出してきた瞬間に入れ替わっていく。前半、近江は劣勢だったが、その中で背番号8は積極的にチャレンジし、チャンスを作り出そうとしていた。

「自分は去年も全国で経験をさせてもらっていて、プレッシャーの中でやるという部分は経験している。自分が引っ張っていかないといけないと思っていて、プレーでどんどん見せていこうと思っていました」。自信を持っているという狭い局面で相手の守りを突破。得点後にも決定機を演出するなど、その柔らかく、アグレッシブなドリブルがインターハイ王者・明秀日立高を苦しめていた。その山門はPK戦で勝利を決めるPKも難なく成功。チームを初の8強へ導いた。

 元Jリーガーの前田高孝監督は、夏明けの時期にエース格の山門がもう一段階突き抜けることを期待していた。壁に当たって苦しんでいたという秋頃。山門は「一個自分の中で上手くいかない時期が続いていて、分かってはいたんですけれども、自分がゴールを決めたりとかがなかったので、ゴールへの意識、前への意識というのは強く持ち始めて、そこから良くなってと思います」。今大会はこれで2戦連発と好調。小柄なエースが攻撃の中心としてチームを引っ張っている。

 前田監督は「落ち着きますよね。柔らかいですし、良さを出してくれていますし。ああいうちっちゃい子が活躍してくれたらサッカー少年の励みになるんちゃうかな。上手いですよね。こういう舞台でもコントロールがブレない」と嬉しそうに語っていた。

その山門は「技術を大事にしているチームにしたい」「繋いだり、スイッチした、崩したりという面白いサッカーをしていたし、全国も出ていた」という理由で近江へ進学。そこで磨いてきた武器をまだまだ発揮し、自身も小さくてもできることを示す考えだ。

「やっぱり自分は身長がなくて、小さい頃からずっと小さいままやったんですけれども、技術のところはずっとこだわってきて、タッチだったり、相手を外す動きだったりとか、小さい人でも全国でも戦えていけるところを見せていきたい」

 エースの活躍を見せているが、本人は満足していない。「前の試合もこの試合も点を決められているけれど、まだ同点ゴールしか決めることができていないので、そこからもう1点取ってチームを勝たせるようなプレーをしていけたらなと思います。目標のベスト4、もう1個勝てば行けるんで、そこへ行くために次の試合は大きな壁になると思うんで、自分のゴールでチームを勝たせていきたい」と誓った。次戦はU-17日本代表MF名和田我空(2年)や仙台内定FW西丸道人(3年)らを擁する神村学園高(鹿児島)との戦い。山門が超高級のアタッカーたちにも負けない力を示し、目標の準決勝へ進出する。

(取材・文 吉田太郎)


●第102回全国高校サッカー選手権特集
吉田太郎
Text by 吉田太郎

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