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初参戦のプレミアリーグで培った準備や身体の使い方のわずかな部分も差に。神村学園が目標の「国立で勝つ」へ前進

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神村学園高が準々決勝進出

[1.2 選手権3回戦 神村学園高 2-1 神戸弘陵高 等々力]

 プレミアリーグの経験が勝利に結びついた。前回大会3位、攻守に注目タレントを擁する神村学園高(鹿児島)だが、この日は神戸弘陵高(兵庫)に研究され、前半はシュートゼロと苦戦。切り替え速く守備ブロックを作る相手にゴール前のスペースを閉じられ、ワイドの選手も孤立する状況を作られてしまった。

「ボールを差し込めない状況が前半だったと思います」と有村圭一郎監督。「(多彩な攻撃の神村学園)らしさは全然やれるレベルじゃなかったという感じがします。スペースをなかなか開けてもらえなかったのが要因だと思います」と加えた。

 また、神戸弘陵はFW北藤朔(3年)をはじめ、スキルの高い選手たちが揃う。奪われたボールを正確に繋がれ、決定的なシーンも作られた。だが、前半のピンチはGK川路陽(3年)がファインセーブで阻止。すると、指揮官から檄を受けた後半はチームの積極性が高まり、後半2分にU-17日本代表左SB吉永夢希(3年)の仕掛けからMF新垣陽盛(2年)が先制点を叩き出した。

 追いつかれたものの、セットプレーからU-17日本代表MF名和田我空(2年)が決めた決勝点によって2-1で勝利。決めるべきチャンスで確実に決めた力、そして最後の局面での粘り強い守備も勝因だった。

 後半4分には、ゴールカバーしたCB難波大和(3年)が身体を投げ出してラインギリギリでスーパークリア。試合終盤の猛攻を受けた時間帯には、吉永がスライディングタックルを決めるシーンもあった。そして、40+2分にGK川路が再びビッグセーブ。紙一重の勝負で勝ち切った。

 この粘り強さは、23年に初参戦した“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグWESTで培われたものだ。有村監督は「(プレミアリーグでの戦いは)一瞬たりとも気を抜いたらやられるような状況ですし、キッチリやっとかないと点を取られてしまうような状況でもありますし、逆にこっちもキッチリやらないと点数取れなかったりもあるので、ちょっとした準備や、ちょっとした身体の使い方だったり、そういうのがこの1年間で伸びたなと思います」と説明する。コンマ何秒の判断や最後の半歩を踏み出せるかどうかなど、「ちょっとした準備や、ちょっとした身体の使い方」が最後に相手との差となった。

 また、指揮官はプレミア効果について、「1、2年生がプレミアで多く経験できて、この選手権でも活躍できているのが大きいと思います」と口にする。プリンスリーグや県リーグとは異なるスピード感の中で、新垣やCB鈴木悠仁(2年)、U-16日本代表MF福島和毅(1年)ら多くの下級生が成長。7試合連続未勝利など苦しい経験もしたが、厳しい環境で揉まれながらも残留を勝ち取った自信も今大会に活かされている。

 FW西丸道人主将(3年)は「(DFに助けられたし)下級生が頑張ってくれた。チーム全体で勝ち取った勝利だと思います」。前回大会3位の神村学園の目標は国立競技場に戻って、今度は勝つことだ。MF大迫塁(C大阪→いわき)やFW福田師王(ボルシアMG)ら先輩たちが昇格してくれたプレミアリーグで磨いてきた力も強みに目標達成へ。新垣は「国立で2勝するという目標はあるけれど、目の前の試合に集中して勝たないと国立にも戻れないのでそこに集中していきたい」。まずは難敵・近江高(滋賀)との準々決勝突破に集中する。

(取材・文 吉田太郎)


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吉田太郎
Text by 吉田太郎

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