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本職はボランチながら全試合で最終ラインで途中出場の近江MF川地一颯、ケガを乗り越えて「考えていなかった」国立のピッチへ

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近江高の最終ラインでプレーするMF川地一颯(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[1.6 選手権準決勝 近江 3-1 堀越 国立]

 近江高(滋賀)が戦った準々決勝までの3試合で、先発はないがすべての試合で途中出場をはたしているのがMF川地一颯(3年)だ。3バック中央のDF西村想大(3年)を除く左右のセンターバックを入れ替えることが多い同校において、左右どちらも対応できる川地の出番は、ハーフタイムの前後にやってくる。

 準決勝の堀越戦では、後半4分にピッチへ。そのまま左センターバックに入った。投入直後には堀越の10番であるFW中村健太(3年)の裏抜けに対応。後半アディショナルタイムにはFW高谷遼太をペナルティエリア内で倒してしまいPKを献上してしまったが、粘り強い守備を見せている。

 登録上は167cmのMFとあるように、本来のポジションはボランチだ。「3年生の5月くらいからセンターバックに」コンバートされたといい、まだ半年余りのDF歴だ。「相手が大きいときは、自分で考えて競り合いに行ったりして、できる限りのことをやれ」と前田高孝監督からは言われているという。「プリンスリーグとかでもずっと途中から出場させてもらっていて、そこでも失点とかせずに相手を抑えることだけを意識して、勝利を目指していました」と試合の中で自信をつかんでいった。

 最終ラインの顔ぶれを代えることに近江の選手からネガティブな声は聞こえない。守備の中心を担う西村は「このチームは誰が入っても信頼できる」と言えば、ゴールマウスを預かる GK山崎晃輝(2年)も「練習でも想定しているので、問題なかったです」と続ける。

 川地にとって苦しかった3年間がようやく報われようとしている。Fosta FCから近江に進学するも、ケガとの戦いが待っていた。

「1年生のときに6月から9月までサッカーができなくて、10月に復帰したんですけど、復帰して1週間でまた同じところをケガして、そのときは5ヶ月ぐらい休んで。2年のインターハイ(県予選)のときに、両足のスネを疲労骨折して4か月くらい休んで」とケガを繰り返していた。2年次のケガ明けからは「順調にサッカーをしていたんですけど3年生になって昔のキズが傷んでくるときがあって、練習も抜けたりしていました」と諦めかけていた夢の舞台に、「自分が最後に出るなんて考えてなかった」と喜びを噛みしめる。

 自身のストロングポイントを「体の強さ」と挙げる川地。圧倒的なフィジカルを誇る青森山田との決勝でも、活躍の場は巡ってくるはずだ。

(取材・文 奥山典幸)

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奥山典幸
Text by 奥山典幸

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