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[MOM4616]近江DF金山耀太(3年)_近江に変化もたらす“戦術・金山”。左WB起用に応えて2点目演出し、貴重なゴールも

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近江高DF金山耀太主将(3年=シーガル広島ジュニアユース出身)は左WB起用に応えて2点目に繋がる仕掛けと3点目のゴール

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.6 選手権準決勝 近江高 3-1 堀越高 国立]

 初のファイナル進出をかけた決勝戦。近江高(滋賀)は今大会、3バックの左サイドで先発してきたDF金山耀太主将(3年=シーガル広島ジュニアユース出身)を左ウイングバック(WB)として起用した。

 金山は守りの要だが、以前「自分のポジションはセンターバック(CB)なんですけれども、攻撃参加する時のドリブル、前への推進力は武器だと思っているので、そこは見て欲しい。チャンスを作るだけでなく、個人としても止まらない選手になろうというのは思ってずっとやってきた」と語っていたように、攻撃面でより違いを生み出せる選手だ。

 インターハイ王者・明秀日立高(茨城)との3回戦では3バックの左サイドで先発し、0-1の後半開始から左WBへポジションを変えて流れを一変させている。チームの戦い方に大きな影響を及ぼしている“戦術・金山”と言えるような存在。DFながら10番を背負う金山はこの日、攻撃的なポジションでの起用に応えて2得点に関わる活躍を見せた。

 まずは1-0の前半13分、左サイドでインターセプトした金山はシーガル広島時代からのチームメートであるMF西飛勇吾(3年)とワンツー。目の前にいたDFを難なく剥がすと、前方に空いたスペースへ一気にドリブルで切れ込む。FW小山真尋(3年)とのワンツーから放とうとしたシュートは打ちきれなかったものの、味方の攻撃は続き、MF山門立侑(3年)のゴールに結びついた。

 さらに前半22分には、金山が待望の今大会初ゴールを奪う。味方をサポートする形で中央に顔を出した10番は、再び西からのパスを受けてドリブル開始。足裏でボールを転がしながら前進して右の小山へパスを通す。そして、ゴール正面にポジションを取ると、山門のシュートこぼれ球をコントロール。最後は、「本当にこぼれてきたところで冷静に流し込めた感じです」というように、正確な右足シュートをゴール左隅へ沈めた。

 今大会、近江は前半に思うような戦いができていなかった。だが、10番は左WBでその攻撃性能の高さを発揮し、前半で3点をリードする原動力に。朝方まで堀越高の映像を分析していたという前田高孝監督は、金山の左WB起用の意図について、「金山がWBの方が堀越さんには効果的じゃないかと思って起用しました。中にも入ったり、外にも出たり金山はできますので、金山をどこでフリーにするか考えながらやりました」と説明する。本人は良い部分もあった一方でボールを受ける前の動きなどを反省。それでも、彼のもたらした効果は大きかった。

 3年前、前田監督の熱心な言葉を受けて広島から滋賀の新興勢力へ。当時を振り返り、「キャプテンするようなタイプではないんで自分は。10番を背負うようなタイプでもなかったんですけれども、3年前の自分からは想像することができないくらい成長させてもらっていると思っています」と主将、10番を託されるまでになった自身の成長について説明する。

 その金山は、全国大会でも注目されるほどのプレーヤーへ進化。そして、「出たかった」選手権での日本一へあと1勝にまで迫っている。「思い描いていたこと以上ですね。本当に選手権に出たいな、って最初は思って近江の門を叩いてきて、ここまで来れるとは思っていなかったですけれども、この1年間を通して本当に自信もつけてきた自負はあるので(決勝も)しっかりと頑張りたい」。良いプレーをしても、常に「まだまだ」。また、「不甲斐ないキャプテンだった」と語るように、主将としての1年間にも満足はしていない。

 強い向上心を持ち続ける主将は、これまで同様、満足することなく前を向いて、最後までチームを引っ張る意気込みだ。「まだまだやれる部分があると思う。(ベストのプレーができずに)非常に悔しいですけれども、仲間が勝ちに繋げてくれて、次の舞台を用意してくれているんで、(決勝で)良いプレーができるように良い準備をしていきたい」。支えてくれる仲間、応援してくれる人たちのためにも決勝で最高のパフォーマンスを発揮し、日本一を勝ち取る。

(取材・文 吉田太郎)


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吉田太郎
Text by 吉田太郎

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