[1.8 選手権決勝 青森山田高 3-1 近江高 国立]

　青森山田高(青森)に再び“最強”の看板をもたらしたキャプテンは、国立競技場で胴上げをされた。2年ぶりの栄冠を手にした主将・DF山本虎(3年)は「点を決めたかったけど、日本一になれたことが何よりもうれしい」と喜びを語った。

　決勝の舞台でも緊張なくプレーをしてみせた。「こんなに最高の舞台でできることは人生であまりない。緊張して何もできなかったらもったいないと思っていた」。強敵・近江高(滋賀)の攻撃を受けるも、山本は頼れる仲間とともに堅守を築いた。

　前半33分にMF福島健太(3年)のゴールで先制に成功し、1-0で前半を折り返す。だが後半に入ると「ちょっと守備が行けなくなった時間帯があった」。近江の交代策にもハマって後半2分に失点。1-1と同点に追いつかれた。

　しかし、キャプテンは「後半に失点した後はすごくよかった」と胸を張る。目が覚めた青森山田は前線からしっかりとプレスを仕掛ける。改善した“いい守備”から“いい攻撃”を展開。後半15分にエースFW米谷壮史(3年)が勝ち越しゴールを挙げ、同25分にはオウンゴールでダメを押す。3-1で優勝を決めた。

　自宅は青森山田から徒歩3分の距離。幼いころから強豪を見てきた山本は青森山田中に進学する。「松木玖生さん(FC東京)や宇野禅斗さん(町田)と一緒に練習をさせてもらっていた」という逸材は、中学から青森山田高の公式戦にも出場するほど順調に育った。

　松木の世代は2年前にインターハイ、プレミアリーグEAST、そして選手権の3冠を達成。高1で見届けた山本も、その背中を追った。しかし、昨年度の選手権は準々決勝で敗退。ひとつのタイトルも手にすることなく終わってしまう。高3になった山本はタイトル奪取を誓った。

　だが、その道のりは険しい。インターハイでは3回戦敗退。「自信があったからこそショックでした」。キャプテンとして青森山田を背負うプレッシャーは大きい。それでもタイトル奪取に燃えたのは、幼いころから見てきた“強い青森山田”を復活させるためだ。

「3冠を取った代の後、去年の3年生は一番プレッシャーがあったと思う。1冠もできずに終わってしまった一年だった。だから、もう一度強い山田を取り戻そうと一年間を過ごしてきた」

　プレミアリーグEAST、ファイナルを制し、選手権で再び頂点に立った。高校サッカーを終え、次の舞台は大学サッカーへ。来年度からは東洋大でプレーを続ける。正木昌宣監督の涙を見て、山本は「ちょっと泣きそうになりました」。それでもうれしさが上回る。「もう最高です」と満面の笑顔で国立競技場を後にした。

(取材・文　石川祐介)

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