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[MOM843]関西学院大FW木村勇大(4年)_京都内定FWが全国初戦で“強胆の決勝パネンカ”「ストライカーはPKもチャンス」

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関西学院大FW木村勇大(4年/京都内定)

[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.11 インカレ2回戦 静岡産業大1-2関西学院大 味の素フィールド西が丘]

 エースストライカーが胆力を見せつけた。関西学院大は前半に先制するが、後半39分に同点ゴールを許す。だが、その2分後にPKを獲得した。途中出場のFW木村勇大(4年=大阪桐蔭高/京都内定)がPKで選択したのは“パネンカ”。「あんまり怖くなかった。蹴る瞬間までGKは見えていたので入るかなと」。冷静にPKを沈め、勝利に導いた。

 今シーズンの後期リーグは、京都サンガF.C.への参加やU-21日本代表、全日本大学選抜での活動などもあり、不参加が続いた木村。チームに合流してもコンディション調整が続き、インカレ初戦もベンチから試合を見守った。前半33分にFW山田剛綺(4年=京都橘高/東京V内定)が鮮やかに先制ゴール。だが、終盤にかけて流れを奪われる。後半37分に木村が満を持して投入された。

 しかし、木村投入から2分後に静岡産業大に同点ゴールを決められる。勢いに乗る相手をしり目に、木村は「おいしい展開だな」と不敵に笑う。持ち味のフィジカルで相手のマークを蹴散らし、ゴールに突き進む。流れを引き寄せると、失点から2分後にMF倍井謙(3年=名古屋U-18/名古屋内定)が敵陣内で相手のハンドを誘発。PKを獲得した。

 倍井は木村にPKキッカーを託した。「彼から吸収するものはたくさんある中で、信頼している4回生であり、すばらしい選手。決めてくれと思って託しました」(倍井)。木村は仲間の思いを受け止める。「みんなのために決めないとだめだと思った。みんなが信頼してくれたので、有難いなと思いました」(木村)。

 大一番での勝敗を分けるPKはカタールW杯でも頻繁に起こり、注目を浴びている。緊張は普段のプレーを乱して思わぬ失敗を誘発。だからこそ慎重なキックを選びがちな中、木村が選んだのはゴール中央にチップキックで蹴り込む“パネンカ”だった。横たわる相手GKの頭上を越えるように、ボールは静かにゴールネットを揺らした。

 公式戦での“パネンカ”は初めてだという。「時間も88分でキャッチされて負けていたら大戦犯。けど、あまり怖くなかった。蹴る瞬間まではGKは見えていたので入るかなと。パネンカはデータにないと思うし、あんまり見たこともないので、やろうかなと。パネンカで決めたほうが面白いかなと思ったので、ちょっとやっちゃいました」(木村)。

 昨年の京都内定から今シーズンはJリーグデビューも果たした。来季からプロの舞台に上がるストライカーは、PKにも恐れを抱かない。「サンガに合流しているときも、練習の中でPKキッカーを任せてもらうときもありました。来年から2桁得点を目標にしている。ストライカーはPKも得点を取る大事なチャンス。そこはストライカーとして、自分が蹴って決められれば」。得点への貪欲さがPKの恐怖を上回った。

 大学最後の舞台で好スタートを切った。「後期リーグはずっとチームから抜けていて、帰ってきてからもコンディション不良が続いて、リーグの優勝に後期はまったく貢献できなかった。優勝してくれたみんながすごく頼もしい」。仲間への感謝は結果で恩返しをするつもりだ。「こうやって点を決めてチームを勝たせることが自分の仕事。最後は自分がストライカーとして点を決めて、日本一に導ければベストかなと思います」。有終の美を飾るべく、大学屈指のストライカーは眼を光らせた。

(取材・文 石川祐介)
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