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[MOM922]福岡大FW北條真汰(4年)_全治半年の大怪我を2度経験…絶望から這い上がった主将が復活のゴール

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福岡大FW北條真汰(4年)

[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.7 インカレ1回戦 福岡大 2-1 四国学院大 流通経済大学龍ケ崎フィールド]

 絶望の淵に突き落とされたとき、人は真価を問われる。福岡大のキャプテンFW北條真汰(4年=鹿児島城西高)は周囲の力を借りながら、再び立ち上がることを選んだ。全治半年の怪我を2度経験しながら復活し、全国の舞台でゴール。「この大会で結果を出して、次のサッカー人生につなげようと思っている。一喜一憂するのは良くないが、今日の1点はすごく大きかった」と喜びを口にした。

 6大会連続でインカレに臨んだ福岡大だが、昨年度は夏の総理大臣杯も、冬のインカレも初戦敗退。今夏は大臣杯にも出ることができず、全国大会で初戦を突破してから2年が経っていた。それゆえに初戦は固くなる。そのことを見越した乾真寛監督は、延長戦も視野に入れて北條を温存。キャプテンはベンチから前半を見守る。「前半からチャンスが多くある中で、点を決め切れずにズルズルと行っていた」(北條)。そのままスコアレスで後半に折り返した。

 後半10分以降に投入するという指揮官の策どおり、北條は後半13分にピッチに立った。そして投入2分後の15分に結果を出す。左サイドのDF磯谷駿(3年=九州国際大付属高)の縦パスを、DF岡田大和(4年=米子北高/札幌内定)がダイレクトでクロス。グラウンダーのボールに反応したのは北條。「ピッチに入ったときに、しっかりと一本のチャンスを決め切れるようにと意識していた」。ダイレクトで合わせ、ゴールに突き刺した。

 仲間たちが大きな歓声を上げ、会場は一気に福岡大のムード。後半38分にはDF橋本悠(3年=鳥栖U-18)のFKで追加点を奪う。終了間際に1点を返されるが、そのまま逃げ切り、2年ぶりに全国大会で初戦突破を果たした。

 乾監督は「決めるべき人が決めてくれた」と気持ちを込める。「キャプテンらしいキャプテン」と指揮官が評する北條は、ここまで厳しい時間を過ごしてきた。

 大学2年生で迎えた昨年3月、デンソーカップチャレンジ(デンチャレ)に九州選抜として参加。そこで右ひざを負傷し、半年間をリハビリに費やした。無事回復を果たして3年生の後半は実戦復帰。だが、今年3月のデンチャレを終えた北條を再び悲劇が襲う。チームに帰還すると、一年前に負傷した足とは逆の左足に違和感があった。

「トレーナーの方と別メニューで調整していたんですが、低いハードルを片足で飛んで着地した時にグリっと」。左ひざの半月板損傷という大怪我。診断の結果はまたしても全治半年。「これも運命なのかなというのは感じました。メンタル的にはすごくきつかった」。大学卒業後もサッカーキャリアを続けたい北條にとっては痛すぎる離脱だった。

 乾監督によると、春先にはJリーグの数クラブから声がかかっていたという。しかし、長期離脱でその見通しは立たなくなった。二度目の絶望を味わった北條は、プロへの道をあきらめかけた。

「両親と電話してサッカーをやめようかなと言ったときもありました。2回目に怪我したときは本当に大事な時期だった。両親にしか言ったことはないんですけど、もう無理かなと弱音を吐いたことは何度もあった」

 心の支えになったのは家族、そして仲間たちからの「真汰なら大丈夫」という言葉だった。

「家族やお兄ちゃんがいつも助けてくれた。大丈夫、おまえなら大丈夫と常に声をかけてくれた。離脱している期間が多くても、みんなが帰ってくる場所を作ってくれた。リハビリしている期間もみんなが声をかけてくれた」

 この試合には両親もスタンドで観戦していた。多くの仲間も駆けつけてくれた。「その前で絶対に結果を出したいと思っていました」。復帰自体は9月以降にしていたが、なかなか結果に恵まれず。だからこそ、全国大会で決めたゴールは恩に報いる大きな一発となった。

 完全復活を果たした北條だが、これはまだ始まりにすぎない。注目度が高い全国大会で「人生を変えてやろうという気持ち」と力を込める。

「この先のサッカー人生を自分自身で掴める大会だと思う。そこに対する気持ちは誰よりも強い。全国という舞台で結果を出すことが、自分の存在意義にもなってくる。まだこういうプレーヤーがいるぞということをしっかりと見せられたら、という思いを持ちながらプレーをしています」

 福岡大が目指すは4強以上。北條という最後のピースが戻り、チームの士気は最高潮だ。「個人としてやるべきことをしっかりピッチで体現できれば、チームの結果もついてくる」。復活を遂げたキャプテンは、待ちに待った大学最後の舞台で自らの道を切り拓くつもりだ。

(取材・文 石川祐介)
●第72回全日本大学選手権(インカレ)特集
石川祐介
Text by 石川祐介

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