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[MOM920]日本大MF田中慶汰(2年)_「上手い選手」のその先へ。20年ぶりのインカレに挑む日本大の司令塔が貴重な先制ゴール!

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貴重な先制ゴールを挙げた日本大MF田中慶汰(2年=川崎フロンターレU-18)

[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.7 インカレ1回戦 日本大 4-0 高松大 AGFフィールド]

 磨き続けてきた技術が通用することは、この1年間で実感できた。だからこそ、求めるのは明確な結果。『上手い選手のその先』まで到達するために必要なことは、どれだけ勝利に直結する結果を叩き出せるかどうかだということは、もう十分過ぎるほどわかっている。

「『チームのためにやろう』と決めてこの大会に入っているので、その想いがうまく点に繋がって良かったかなと思います。インカレは20年ぶりと聞いたんですけど、新しい歴史を作るという意味でも、一戦一戦大事に戦っていきたいです」。

 実に20年ぶりに冬の全国へと進出してきた日本大(関東4)の攻撃を司るプレーメイカー。MF田中慶汰(2年=川崎フロンターレU-18)はゴールという“明確な結果”で、チームの初戦突破にきっちりと貢献してみせた。

 高松大(四国)と対峙したインカレのファーストマッチ。田中も「初戦ということもあって立ち上がりは硬かったですし、コーナーキックやチャンスが多い中で『なかなか入らないな』とは感じていました」と振り返ったように、日本大は攻める時間を多く作りながらも、スコアを動かせない。

 そのままスコアレスでの折り返しが濃厚になりつつあった前半45+1分。日本大が左サイドで獲得したCK。FW熊倉弘達(3年=前橋育英高)が丁寧に蹴り込んだキックは、ゴール前に混戦を生み出すと、その男の“嗅覚”が発動する。

「弘達くんから良いボールが来て、ニアに走りこんだ人がフリックしてゴール前にこぼれてきたところを押し込んだ感じです。いつもキーパーの前にいるので、あのあたりにはこぼれてくるかなとはいつも準備していました」。

 田中が押し込んだボールはゴールネットへ到達。ピッチに赤い歓喜の輪ができる。「やり続ければ入ると思っていたので、やり続けられて良かったなと思います。時間帯も前半終了ギリギリで、あそこで獲れるか獲れないかで後半の入りもだいぶ違っていたので、自分が獲れて良かったです」。日本大が1点をリードして、最初の45分間は終了する。

 1-0で迎えた後半13分。今度は14番が右サイドで魅せる。「(西山)蓮平くんがドリブルで1対1だったので、最初は『仕掛けてもらおうかな』と思ったんですけど、自分が後ろからスプリントを掛けられるなと」外を回ると、MF西山蓮平(4年=前橋育英高)から出てきたパスをそのままグラウンダーでクロス。DFに当たってこぼれたボールをMF平賀禎大(3年=佐野日大高)が押し込み、点差は2点に広がる。

「本当は弘達くんを狙って『早いボールを蹴ろうかな』と思ったんですけど、相手の足に当たっちゃいましたね」とは本人だが、これでさらなるリードを得た日本大は4-0で快勝。田中の2ゴールに絡む活躍が、20年ぶりとなる全国勝利の一翼を力強く担ってみせた。

「ライン間でターンするところや、狭い局面でプレーできるところだったり、後ろから追い越したりとか、相手の嫌がるところを突くプレーが特徴だと思っています」と話すストロングポイントは、高校時代にプレーしていた川崎フロンターレU-18で学んだものと、大学でさらに身に着けたものとのハイブリッドだ。

 田中の世代はプレミアリーグプレーオフで昇格を勝ち獲り、川崎F U-18の後輩たちに世代最高峰の舞台で戦う権利をプレゼントしたものの、「自分たちがプリンスリーグでやっていた時より注目度が全然違うみたいなので、『うらやましいな』とは思いながらも、『自分たちが上げたんだよな』という想いもちょっとありますね(笑)」と正直な胸の内を明かすあたりに、素直な性格も滲む。

「去年1年間はリーグ戦に1試合も出られなくて、今年初めて出させてもらったんですけど、最初は何をすればいいかわからなくて。でも、慣れていく内に自分の色も出せるようになってきた中で、今は対策されても止められないプレーヤーになりたいなという目標はあります」。手応えを掴みつつあるからこそ、さらに突き抜けた存在へ。そのためには、この大会での躍動が絶対条件だろう。

「先を見過ぎずに、一戦一戦チャレンジャーの気持ちで戦うというのは、自分たちがリーグ戦からやってきたことなので、今日みたいにしっかり目の前の試合に対して気持ちをぶつけていければなと思います」。

 見えかけている『上手い選手のその先』へ。日本大の攻撃を活性化させる14番。田中が足を踏み入れた、新たな歴史の扉をこじ開けるためのチャレンジは、まだまだ始まったばっかりだ。



(取材・文 土屋雅史)
●第72回全日本大学選手権(インカレ)特集
土屋雅史
Text by 土屋雅史

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