beacon

[MOM919]鹿屋体育大FW加藤大晟(3年)_フィジカル無双のレフティが躍動!“再コンバート”の元CBストライカーが好アシスト!

このエントリーをはてなブックマークに追加

鹿屋体育大FW加藤大晟(3年=浜松開誠館高)がパワフルなシュートを打ち込む

[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.7 インカレ1回戦 常葉大 0-1 鹿屋体育大 AGFフィールド]

 その力強さは、まるで重戦車だ。飛んできたボールを豪快な胸トラップで収めると、そのままマーカーを引きずりながらでも前へ、前へと突き進む。その上に繊細な精度を誇る左足まで有しているのだから、対峙する相手にとってみれば厄介以外の何物でもない。

「ハイボールを収めることと、前への推進力のあるドリブルは自分の持ち味だと思っているので、今日は調子が良かったですね」。

 フォワードへの“再コンバート”を経て、鹿屋体育大(九州2)の前線に送り込まれているフィジカル系レフティ。FW加藤大晟(3年=浜松開誠館高)の強烈な個性が、全国のピッチで確かな輝きを放った。


「基本的には繋ぎながらというスタイルなんですけど、トーナメントということもあって、『危ないときはシンプルにやろう』という感じでやっていました」(加藤)。初戦で常葉大(東海2)と対峙したチームは、まずはリスクを回避しつつ、長いフィードも交えながら前へとボールを供給していく。

 結果的にこの戦い方は、16番を背負ったフォワードの持ち味を遺憾なく発揮させる。少しアバウトなパスでも屈強な身体を使ってボールを収め、シンプルに周囲へ繋いだかと思えば、強引に前を向いてドリブルで仕掛けるシーンも。その推進力には常葉大のディフェンス陣も明らかに手を焼いていた。

 前半21分にはFW片山颯人(2年=米子北高)のパスを右サイドで受けると、そのままカットインしながらGKにキャッチを強いるシュートまで。直後にも今度は左で片山のパスを呼び込み、打ち切ったフィニッシュは枠の右へ。さらに25分にも、左からDF吉川敬進(2年=JFAアカデミー福島U-18)がクロスを上げると、こぼれに反応した枠内シュートはここもGKに阻まれたが、強引とも言えるようなプレーにゴールへの意欲を滲ませる。

 ただ、「結構チームメイトから『空いてるよ』と言われていたんですけど、自分で打っちゃって、もったいないシーンが多かったですね」と口にするように、加藤はなかなかゴールを奪えない中でも、自己分析がきっちりできていた。

 32分。左サイドで前を向いた加藤は、「片山から『見て』と言われていたので、あの状況で1回片山を見ようと思ったら、良いところに走ってくれていたんですよね」とピンポイントクロスを供給。飛び込んだ片山のヘディングは、鮮やかにゴールネットを揺らす。

「冷静に中を見れましたし、クロスも結構自分でもびっくりするぐらい綺麗なボールが上がったので(笑)、良かったと思います」。攻勢を強めながらもスコアを動かせない状況で、加藤の完璧なアシストが先制弾を呼び込むと、これがそのまま決勝ゴールに。「後半は押し込まれる形が多くて、苦しい時間が続いたんですけど、粘り強く守れたので1-0で勝てたのかなと思います」と胸を張ったレフティが、得意の左足でチームの初戦突破にきっちり貢献してみせた。

 フォワードでのプレーは“再コンバート”の末に、だという。「大学に入ってからセンターバックをやっていたんですけど、2年生になる前のオフシーズンに、フォワードの先輩がケガしてしまって、フォワードの枚数が足りなくなったことがあって、自分が『ちょっと試しにやってみないか?』みたいな感じで言われたんです。もともとは中学までフォワードをやっていて、高校でセンターバックになったんですけど、その時にフォワードをやってみたら結構良くて、そこからずっとフォワードです」。

 この日の対戦相手の常葉大は静岡のチーム。加藤が高校時代に所属していた浜松開誠館高の“元チームメイト”も、メンバーリストに名を連ねていた。「常葉大とは開誠館の時によく練習試合もしていましたし、今日も相手には開誠館の先輩も後輩もいたので、『絶対負けたくないな』と思って挑みました」。

 当時はセンターバックだったこともあって、フォワード起用には高校の“元チームメイト”も驚いていたに違いないが、「でも、『身体能力を使ったプレーは変わらないな』と思われているんじゃないですかね。その中でフォワードとしての良さは見せられたかなと思います」ときっぱり。任されているポジションこそ違えども、成長した姿をかつての仲間に堂々と披露してみせた。


 静岡から鹿児島へと進学したのには、大きく3つの理由があるという。「高校の先輩の吉田真那斗選手(横浜FM内定)が行っているというのもありましたし、鹿児島にはプロのチームがいっぱいキャンプに来るので、そういうところで対戦する機会も多いだろうなと。あとは鹿児島は田舎なので、関東とか関西に行くよりもサッカーに打ち込めそうなところも考えて、鹿屋にしました」。

 2つ目の理由でもある、キャンプに来たプロのレベルを体感できるという意味では、あるストライカーが印象に残っているそうだ。「レイソルとやった時に、細谷真大選手は収め方とか体の当て方が本当にうまいなと感じて、『お手本にしたいな』と思いました」。最近ではA代表にも招集されつつある俊英を基準に置きつつ、さらなる成長への意欲も携えている。

 まずは初戦を突破した今回のインカレでも、目指すべき地点は明確だ。「4年生にはお世話になっているので、一緒に勝ち進みたいというのはもちろんですけど、自分個人としても得点やアシストで目に見える結果を出して、そこからプロに良い形で行けるように頑張りたいと思います」。

 183センチ、81キロという立派な体躯に、備えた左足の威力を踏まえると想起するのはクリスティアン・ビエリか、アーリング・ハーランドか。「まだ自分でもフォワードらしくはないと思っていて(笑)、点を獲るというよりは基点になる感じなので、点を獲れるようなストライカーっぽくなりたいなと思います」。逸材の予感十分。フォワードへの“再チャレンジ”を続ける鹿屋体育大の16番。加藤がこの大会の有力なブレイク候補に、勇ましく名乗りを上げた。



(取材・文 土屋雅史)
土屋雅史
Text by 土屋雅史

TOP