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[MOM931]明治大MF常盤亨太(3年)_有り余る献身の原動力は「最後まで笑顔でいてほしい」先輩たちへの恩返し

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明治大MF常盤亨太(3年=FC東京U-18)

[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.13 インカレ3回戦 明治大 2-0 仙台大 ブリオベッカ浦安競技場]

 チームのために90分間を走り続けた。明治大MF常盤亨太(3年=FC東京U-18)は攻守に高い献身性を発揮し、前回大会で敗れた仙台大を撃破。「絶対に勝たなきゃいけない相手だった。4年生と少しでも長く試合がしたかったので、そのために次の90分を掴み取るための一戦だった」と勝利を喜んだ。

 前半22分、常盤が躍動した。中盤のFKから相手に跳ね返されると、一気にカウンターのピンチ。しかし、PA手前で警戒していた常盤がすかさずボールを追走。相手にボールが収まる瞬間にスライディングタックルを仕掛け、ボールだけを華麗に刈り取った。

 直後、そのままゴールに結びつける。ボールを奪うとすばやく立ち上がり、敵陣を目指す。ゴールが見えた瞬間、選択肢が脳内を巡った。選んだアクションはシュート。「風が強くてアップのときからイメージできていた。ゴールに直結するボールで誰かが触ったり、そのまま入ればと」。右足キックで内巻きの弾道を描くと、PA内のFW太田龍之介(4年=岡山U-18/岡山内定)が触れてゴールネットを揺らした。

 栗田大輔監督に求められているのは運動量や献身性。先制点につながったスライディングタックルは「運動量や泥臭いところ、チームのためになるプレーが自分のプレー。ああいうスライディングも勝つためのプレーが出た」と胸を張る。この試合では守備だけではなく攻撃面でも魅せた。意識したことは「ゴールから見る」プレーだ。

 後半35分には大きなチャンスを作った。FW中村草太(3年=前橋育英高)の突破に相手GKが飛び出すと、パスを受けた常盤は無人のゴールにすばやくロングシュート。わずかにゴール枠を捉えられなかったが、明大の決定機となった。「ゴールから見る」という考えを、常盤が言葉にする。

「太田さんや中村は(相手守備陣の)背後にボールを収められる。その収めたところの横に、運動量を出してしっかりと出ていく。まずゴールから見て(コースが)空いていたら打つし、相手が消してきたらパス。その優先順位を間違えずに今日はできた」

 リーグ戦では11試合出場も、一年を通してベンチを温める時間も多かった。栗田監督は「本当に順調に成長してきてくれた」と目を細める。「ここに来てレギュラーを掴んでリーダーシップを発揮してくれている。そういう積み重ねがああいう結果につながった」と今日の出来を称えていた。

 大学3年目も終盤を迎え、常盤のサッカーキャリアにとっても大事な大会となる。しかし「自分のことは本当にどうでもいい」と語気を強める。「プロサッカー選手になりたいという思いはある。だけど、別にこの大会でプロになってやろうとかそういうのではない。本当にチームのために、4年生のために戦う。そのなかで(プロに向けて)何かあればいい」。ひとつ上の先輩たちへの思いを語った。

 3年生の常盤にとって、4年生は入学したときから一番付き合いの長い代だ。「自分たちが何も知らずに入ってきた1年生のとき、いまの4年生につきっきりで仕事を教わった。ときには厳しい指導もある。だけど、そういったことで社会に出ていくために必要なものを厳しく教えてもらった」。自身がピッチに立つということは、出られない4年生もいるということ。その思いも背負っているからこそ、ともに戦い続けるための勝利を欲していた。

 負ければ即終了、勝ち続けても残り2試合で今シーズンは終わる。常盤のいまの思いは「何より4年生と少しでも長く試合がしたい」。21日の準決勝ではリーグ戦で1分1敗の筑波大と対戦。「4年生に最後の最後まで笑顔でいてほしい」と願いながら、自らの手で優勝を掴み取るつもりだ。

(取材・文 石川祐介)
●第72回全日本大学選手権(インカレ)特集
石川祐介
Text by 石川祐介

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