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「今日の1点が明日の勝利につながる」。或る大学サッカー部キャプテンの最後…四国学院大MF小村萌斗が後輩に託した思い

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四国学院大はインカレ初戦敗退

[12.7 インカレ1回戦 福岡大 2-1 四国学院大 流通経済大学龍ケ崎フィールド]

 34人の部員をけん引したキャプテンは、試合終了のホイッスルとともに涙を流した。四国学院大は全日本大学サッカー選手権(インカレ)1回戦で福岡大に敗戦。先発メンバーで唯一の4年生、主将MF小村萌斗(4年=山梨学院高)はピッチの上で大学サッカー生活にピリオドを打った。

 強豪・福岡大を相手に、前半から押し込まれる展開が続いた。それでも四国学院大はスコアレスのまま後半へ。2ボランチの一人としてピッチに立った小村は「ゴール前で堪える時間が長かったけど、前半0-0でいい感じでいけそうだった」と振り返る。しかし、後半からは福岡大の攻撃を浴びた。

 四国学院大は後半15分に均衡を崩されて先制ゴールを食らうと、同38分には2失点目。「相手のほうが1枚2枚レベルが上だった」(小村)。44分にはPAライン上から小村がシュートを放つもブロックに遭う。「気持ちが足りなかったですね」とゴールに届かなかった決定機を悔やんだ。

 90分間が過ぎ、四国学院大は公式記録上でシュート0本だった。それでもチームは意地を見せた。後半アディショナルタイム5分過ぎ、DF河村太暉(3年=鳴門高)のFKをDF森本泰成(1年=鳴門渦潮高)が頭で叩き込む。一矢報いた直後、主審が試合終了の笛を鳴らした。

 大学日本一を決める大会で、強豪は100人近い選手層からメンバーを選ぶ。その一方、四国学院大の部員数は35人。4年生は4人で、福岡大戦でメンバー入りしたのは先発の小村とベンチ入りしたMF佐藤涼(4年=福岡舞鶴高)のみ。キャプテン小村は劣勢を強いられても顔を下げない。常に下級生たちを鼓舞する姿が目立った。

 終了直後は涙に暮れたが、試合後に話を聞くと小村は晴れやかな表情を見せた。主将としてチームを率いた一年間に「みんなが支えてくれて僕の立ち位置があった。キャプテンとしてプレーできた」と感謝を口にする。

 山梨学院高では出場機会に恵まれず、悔しい思いが続いた。「絶対に見返してやろう」と四国学院大に進学。2年次の冬は「#atarimaeni CUP」でメンバー入りし、3年次の総理大臣杯では副将として試合でキャプテンマークも巻いた。

 全国で勝利の瞬間を迎えることはできなかったが後悔はない。「強い気持ちで4年間やってきた。結果として勝てなかったけど、本当にやり切れた4年間だった。この4年間、自分次第でどこまででも行けるということを体験できた」。単身四国に渡って過ごした思いがあふれてくる。

 終了間際にはルーキー森本がゴールを挙げた。小村は無得点に終わらなかったことに意味を見出し、後輩たちに思いを託す。

「今日の1点が明日の勝利につながると思う。それを信じて、自分たちの可能性を自分たちが閉ざさないように。四国でもまだまだ上に行けるんだぞという強い気持ちを持って、毎日のトレーニングに励んでほしい」。

 大学サッカーを終えた小村は卒業後、中国サッカーリーグに所属する三菱自動車水島FCへ。「働きながらですけど天皇杯はある。次こそはジャイアントキリングしたいです。第2章ですね」。冷めることのないサッカーへの熱を抱えながら、明日の勝利を掴むつもりだ。

四国学院大主将・MF小村萌斗(4年=山梨学院高)

(取材・文 石川祐介)
●第72回全日本大学選手権(インカレ)特集
石川祐介
Text by 石川祐介

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