[12.21 インカレ準決勝 筑波大0-1明治大 流通経済大学龍ケ崎フィールド]

　攻めても攻めても、ゴールネットは揺れなかった。明治大(関東3)のシュートを1本に抑え、ボールポゼッションを高めてゲームを進めた筑波大(関東1)だったが、0-1で敗れて4強で姿を消した。

「どっちに転ぶか分からない拮抗した試合が出来たことは、仲間にもですけど、まずは明治大学さんに感謝したい」。主将MF山内翔(4年=神戸U-18/神戸内定)は涙を堪えながら、時折笑みを浮かべるようにして大学生活ラストマッチを終えた思いを話してくれた。

　試合開始直後から2人で激しくボールを奪い合う場面が見られた。「彼とは小学生の時からの付き合い。インカレの舞台でできるのは本当に嬉しかった」。山内とFW太田龍之介(4年=岡山U-18/岡山内定)は、マッチアップに心を躍らせていた。

　京都府出身の2人は、小学生の時に所属したフォレストFC京都のチームメイト。「人が集まっている」と噂を聞きつけた太田が、5年生の時に加入して2年間一緒にプレーした。試合ができるギリギリの人数しかいなかったというが、2人のほかにテゲバジャーロ宮崎入りを決めている常葉大MF高瀬生聖(4年=山辺高)が在籍するなど、「黄金世代」と胸を張れるほどの自慢のチームだった。

　また太田は今大会初戦となった関西学院大戦でも、同チームでチームメイトだったMF佐藤陽太(4年=京都橘高)と対峙していた。「このラストのインカレで当たれたのは本当に運命。小学校の時に一緒にやった仲間とここで再会できたことは、純粋に嬉しいですし、感じるものがありました」。懐かしさ、別々の道に進んで過ごした10年の月日。湧き上がる感情のすべてが、彼らにしか味わえない特別なものだった。

　お互いの存在はこれからも支えになっていくはずだ。来春から山内は神戸、太田は岡山といずれも高校時代を過ごしたチームに戻って、プロ生活をスタートさせることになる。太田は言う。「翔はずっと大学サッカーをリードしてきて、この間も(U-22)代表に選ばれて、J1に行く。自分は翔との差も感じている。J2からのスタートですけど、いつか絶対に追いついて、追い越したいと思っています」。

　決勝進出を決めた試合後には、太田がしゃがみ込む山内のもとに一番に近づいて、声をかける場面があった。「最後は自分がいかないとと思ったし、翔にも絶対に優勝してと言われた。そこは絶対に意地でも優勝したいと思います」。奇しくも相手は故郷・京都の京都産業大に決定した。またも感じさせられる「運命」。24日の決勝(カシマスタジアム、12時キックオフ)は、目の前で敗れていった旧友の思いも背負ってピッチに立つ。

(取材・文　児玉幸洋)

---

●第72回全日本大学選手権(インカレ)特集