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日本代表西野朗新監督の就任会見要旨

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就任会見で握手する田嶋幸三会長と西野朗新監督

 日本代表西野朗新監督が12日、都内で就任会見を行った。

以下、就任会見要旨

西野朗監督
「このたびハリルホジッチ監督の後任として日本代表監督を受けることにしました。本来であれば、技術委員長の立場として日本代表チームの監督はじめコーチを支える、サポートするポジション。2年前、(技術委員長に)就任してから精一杯、代表チーム、監督へのサポートを考えてきた。ただ、最終的にロシアの直前でこのような状況になり、代表監督を引き受けたということで責任を感じている。この事態の中で精一杯、ロシアに向けてチームづくりをしていきたい覚悟でいる。2年間、現場を離れて技術委員長という立場で仕事をしてきたので、まずは指導者としての心身を整えて、選手を見て、日本サッカー界を見て、これからチームづくりをしていきたい」

―これまでハリルホジッチ監督が構築しようとしていた縦に速いサッカーは引き継いでいくのか。ここのところ日本代表で出場機会の少なかった香川選手、岡崎選手、本田選手という経験豊富な選手をどう捉えているか。
「(ハリルホジッチ)監督のスタイルというのは日本のサッカーに足りなかった部分でもあると思う。1対1に強さを求めたり、縦への攻撃に対する推進力を求めたり、これは今までのA代表だけでなく、各カテゴリが世界に行って、少なからずそういうものが足りない中で次のステージに進めなかった。言葉では『デュエル』『縦』とシンプルだが、実際の内容は高度なもので、それを選手たちに強く要求していた。そのスタイルは間違いなく日本代表チーム、日本のサッカーにとって必要なことではあると思う。縦への攻撃に関しても間違いなく必要だが、そのタイミングやその瞬間というのは質を上げた中でつくり上げないといけない。1対1の場面でもパワー的なところを要求したいが、そこは体格的、フィジカル的な要素の中でなかなか戦えないところもあり、別の角度からそういうものに対応していく必要もある。

 必要なことに関しては継続して考えていきたいが、日本化した、構築してきた日本のフットボールがある。技術力を最大限に生かしたり、戦い方においても規律や組織力で結束して戦っていく強さ、化学反応を起こしたうえで戦う強さ。そういうのをベースにした上で構築していくことが必要だと思う。継承していくスタイルの部分と、選手たちがもっと自分のプレー、パフォーマンスを素直に代表チームで出す部分。代表チームでは自クラブでプレーしている以上のものが当然出るはずで、選手がストレートにプレーできる状況をつくっていきたい。

 チームの編成については、今日コーチングスタッフを承認してもらったので、彼らとも協力して考えていきたい。非常に経験ある選手が最近のキャンプで招集されないとか、試合の出場機会が少ないとかあるが、現状のコンディションをしっかり把握しないといけない。ケガをしている選手が6週間、8週間試合に出ていない状況が海外組の中ではある。経験、実績のある選手だが、(ハリルホジッチ)監督もそのあたりの基準を持っていて、現状のコンディションを非常に気にしていた。それは間違いないことだし、これからの選考に関しても、過去の経験、実績、プラスここ1か月の状況を正確に見極めたうえで、最高の化学反応が起こるチーム、グループとしていいパフォーマンスが出る状況をスタッフの総力を挙げて選考していきたい」

―今回の解任の理由にコミュニケーション、信頼関係があった。一番近くで見ていて何が問題だったか。時間が少ない中、何が一番大事になるか。
「(ハリルホジッチ)監督の選手に対する要求は世界基準で、世界で戦うにはこういうプレーをしないといけない、こういう戦いをしないといけないというのを強く要求していた。戦術的なところでも選手一人ひとりの役割を厳しく要求していた。それは指導者として当然のことだし、それが全体としていい形になっていくことがチーム力を向上させていく。選手も要求に応えてプレーする。ただ、監督が非常に高い基準で求めているというのは感じた。それもよくあることだが、監督の意図と選手がやらなければいけない、やりたいプレーのギャップを合わせていかないと、チームとしてどうかというのはある。

 自分自身は選手たちの気持ち、心理的なところを監督にも伝えて、日本人選手たちのDNAの中でやれる部分はもっとあると、そういうコミュニケーションを自分も間に入りながら構築していこうとした。コミュニケーションが足りないということではなく、チームの中では当然やっていくこと。それが成果として出ないと、そういうふうに言われるが、そういう中でギャップがなかなか埋められない、選手たちが追いつこうとしても要求に応えられないというのは感じた。まだまだ選手にはそういう要求に応えられる力はあると思っていた。その先に監督ももっと高い要求があったかもしれないが、チームとしてバランスよく機能していたかと言うと、そのあたりのわずかな差はあったと思う。

 彼らのパフォーマンス、プレーが素直に出ていくことがあれば、間違いなく日本チームはいい形で融合し、結束して、プラスアルファの力が出てくると思う。結果は求めたい。W杯だから少なくとも予選(グループリーグ)を突破していく力を見せたいと思う。ただ、そこを求めるより、まずは選手の持っているプレー、パフォーマンスというのを確実に出してもらう、出させたい、表現させたいという気持ちでいる。そういうスピリットのある選手を招集して編成したいと思っている」

―田嶋会長から打診を受けたときの心境は。素直にプレーを出させるために選手に求めることは。
「先月の末に会長からは今回の打診をいただいた。その時は私自身、ハリルホジッチ監督を支えていきたい、サポートしていきたいという今までどおりの気持ちでいっぱいだった。ただ一方でチーム状況とのギャップもあり、あまりいい状況ではなかった遠征を踏まえて、自分の中ではこれから2か月でどう劇的に変えていくかを考えていたところだった。今回の決断に対して自分が要求されたということで戸惑いはもちろんあった。技術委員長の立場で精一杯やってきたつもりだったが、足りなかった部分も強く感じているし、監督同様(解任)ということになってもと思っていた。自分の中でしっかりこの大会で責任を果たそうというところに至るまでは、この要請に関しては戸惑いを持っていた。ただ、こういう事態なので自分がという思いで最後は引き受けさせていただいた。

 自分が選ぶメンバーなので、もちろん信頼しているし、日本代表チームの大きなパフォーマンスを生むための選手だと思っている。そういう選手たちに対しては、あまり個人のプレーに関しては制限をかけたくないと思っている。自チームでやっているプレーを私自身も評価して選びたいし、日本サッカーの良さ、強さはグループでの力、パフォーマンスだと思うので、連係、連続してやっていくプレー、そういう形を取れる選手を選考していきたい。まずは選手たちをいい状態に戻して、本来の自分のプレー、そしてグループとしてプレーできる感覚を持ってほしいということを伝えたい」

―監督として理想とするサッカー、代表で実現したいスタイルは。
「長い間、クラブの中での指導だったので、選手を生かしていく中でチームが成長していく、選手がいるからつくっていくというチームづくりだった。代表チームはある程度自分の理想とするサッカーに選手を当てはめていく逆の発想の中でチームづくりができる。五輪の時代、その前のユース代表時代にはそういう形でチーム作りをしてきた。自分の理想は反映できると思うし、たくさんの有望な選手が国内外にいるから、しっかり把握したうえでつくり上げていきたいと思う。志向が偏ってしまうところもあるので、有能なスタッフがたくさんいる。いろんなアイデアによって、また違う変化が起こる、それをやれるのがサッカーでもあるし、継続した力と変化によって大きな力を得ることができる。あまり偏った理想、志向ではなく、たくさん選択肢があると思うので、そういう感覚で選手を見ていきたい」

―チームを一つにするためにどんなアプローチをするか。
「決して現状がバラバラとか、崩壊しているとは思っていない。しっかり戦えていると思う。成果として個々のパフォーマンスを最大限に発揮できていない部分は感じるが、選手は代表のために最大限、自分のパフォーマンスを出すプレーは3月の遠征でもやっていた。そういう意味での伝え方。間違いなく融合していかないといけないし、コンビネーション、グループ、チームの中で機能していくことが大事だと思う」

―ハリルホジッチ監督はグループリーグで対戦する3チームを分析していたと思うが、分析の結果は引き継がれているのか。
「(ハリルホジッチ)監督自身、本大会に向けて3チームのスカウティング、分析を強く求めていた。その蓄積はあるし、間違いなくベースになる。ここから1か月の動向に対するスカウティングもさらに強くやっていかないといけない。急激に変わることも予想されるので、テクニカルスタッフの分析力は強く要求していきたい。細かいところまで分析をかけると、パワー的にも負担がかかるので、そういうスタッフのメンバー編成も考えていく必要があると考えている」

―指導者としてのブランクがあったが、自分に求められていることは。ハリルホジッチ監督はガーナ戦のあとに23人を発表する考えを示していたが、どの段階でチームを決めるか。
「自分を整えるというところでは確かに2年間、サポートの形でチームを見てきた。感覚的には同じ戦いをしてきたが、そういう部分はさらに研ぎ澄ませていかないといけないと思う。ゲームに対する感覚、チームに対する感覚はまた違うと思うので、そういう意味では戻さないといけないなところは多分にあると思う。それはこれからつくっていきたい。スケジュールに関しては5月14日までにラージ(予備登録35人)を決めないといけない。(5月下旬の)キャンプに入るメンバーもその直前に決めなければいけない。5月30日のガーナ戦が終わったあと、23人プラスアルファをどう考えていったらいいのか。そのあたりのスケジュールは正確にはここでお伝えできないが、ガーナ戦が終わってからになっていくと思う」

―攻撃的なサッカーをチャレンジするのか、守備的なサッカーで勝ちに行くのか。
「ゲームというのはいろんな状況があるし、オフェンシブに戦える時間もあれば、総合的なチーム力によってディフェンシブな戦い方を強いられる時間帯もある、そういう中で勝機を常に求めていく。ゲームの流れをコントロールできない中でも、勝負に対してここというところの全体的な意識を共有する。こういうことがあればこういうチームに対しても十分戦える、勝機があると。それはスタートメンバーだけでなく、戦術の変更やメンバーのスイッチも含めて考えていきたい。当然、攻撃的な志向を求めて、得点を生んでいくゲーム展開にしたいと思うが、それだけではない。スカウティングでウイークポイントがどこにあるか、ストロングがどこにあるのかというのを踏まえて全体の意識を統一する。できればオフェンシブな戦い方を求めていきたいし、選手にもそういうスピリットでゲームに入ってもらいたいとは思っている。どんな相手に対しても勝機がどこかにあるという意識の統一感、ゲーム運び。FIFAランキングがそのまま当てはまらないのがこの世界だと思う。対戦国に“日本はやりにくい”“いろんなことを仕掛けてくる”と思わせる部分が増えてくれば、そういう確率も上がってくると思う」

―U-21監督の森保氏をコーチに加えた理由は。5月の合宿までどういう動きをするつもりか。
「スタッフ編成はすべて日本人スタッフ、そして今、代表チームに関係しているスタッフでカバーしたいという思いがあった。優秀なスタッフとオールジャパンでという中で、アンダーカテゴリーの活動もあるし、強化を図らないといけないが、彼自身の指導経験、インターナショナル的なところも協力してもらいたいと思った。将来的なところでも、手倉森、森保の2人はこれからの世代を当然引っ張っていってもらわないといけない指導者でもある。他のスタッフに関しても、自分自身は今までそう多くのスタッフではやってこなかったが、世界を経験できる中でGKコーチ、コンディショニングコーチ、メディカルも含め、できるだけ経験を持ってもらいたいということも考えて入ってもらった。自分の今後はまだスケジューリングしていないが、(海外と)往復する時間がどうかだが、全員に発信したい部分はあるし、個人的に伝えたい部分もある。(時間の)猶予があれば、まだ動き自体は決めていないが、海外組の状況も実際に見たうえで、会ったうえで、伝えたい部分も考えている」

―ハリルホジッチ監督はメンバー候補のラージリストをつくっていたが、それがベースになるのか。
「できればフラットな状況で考えたいとは思うが、(技術委員長としてハリルホジッチ)監督の下でリストを作成してきた中でベースとなる選手は変わらないと思う。これからもその選手たちをベースにしたうえで考えていくことがベストだと思う。グループでとか、ユニットでとか、そういう中での力も必要なので、新しい選手というのももちろん考えたいところではあるが、チームをつくっていく上では今までのラージのメンバーをベースにして考えていきたいと思っている」

―W杯で勝つ確率を1%でも2%でも上げるための監督交代と会長は説明していたが、西野監督は日本が勝つ可能性は何%だと考えているか。
「勝てる確率を高めていくには、選手たちのプレー、本来持っているパフォーマンスをしっかり出させた上でそういう結果が付いてくると思うので、そこを追求したいし、選手たちにも強調したい。選手たちのパフォーマンスをしっかり代表チームの中でも出していける状況を求めていきたいと思う。こういう事態になって、選手たちはいろんな気持ちを持っているはず。これは1%、2%どころではない。選手たちはこの状況に危機感であったり、日本サッカーに対する強い気持ちをさらに持ってくれたと思っている。現に昨日、一昨日のゲームを見ていてもそういう選手たちの気持ちは伝わるし、いろんな意味で勝てる確率というはかなり高まっていると思う」

―W杯での目標は。
「かつて五輪で2つ勝っても上(決勝トーナメント)に上がれなかったことを経験している。W杯でも6ポイント取っても上がれないことは考えられる。そういう予選(グループリーグ)だが、1試合1試合、ベストを尽くしてチャレンジしていく姿勢で戦っていきたい。濁すようだが、予選(グループリーグ)は突破したいと思う。その力を信じてチームをつくっていく2か月だと思う。ただ、選手には数字的な目標を大きく与えるつもりはない。彼らは当然、特に経験ある選手はそう思っていると思う。現状より選手たちはいいプレー、いいパフォーマンスを出してくれる。そういう中でコロンビアに挑んでいきたい。十分チャレンジできる状況になると思う」

―予定している3試合以外に非公式の試合を組む可能性はあるか。
「当初の(ハリルホジッチ)監督の予定だと、5月19、20日が国内組の(中断前)最終戦で、それが終わったあと、あまり休暇なく招集してキャンプに入り、(5月30日の)ガーナ戦に向かっていくということだった。4月、5月の国内組のマッチスケジュールを見ると、ACL敗退というところもあるが、ルヴァン杯も含めて試合の数自体は相当な数で、私自身はいい形でリフレッシュして、わずかだがそういう時間を持ったうえでキャンプに入ってもらいたいと思っている。海外組も5月2週ぐらいで終わってしまうスケジュールで、中南米のメキシコのスケジュールは4月で終わってしまう。コンディション、リカバー的な日数がバラバラn中でガーナ戦に入らないといけない。そこを合わせていくことが大事で、ガーナ戦の前にトレーニングマッチも考える必要はあるのかなとは思っている。40日以上の拘束になるし、その前の国内のスケジュールもタイトな中で、どう選手のメンタリティーをキープするかが大事。ストレスになるような状況であれば考えていきたいが、(選手によって)状況が違う中でガーナ戦に入っていくうえで必要があればと考えている」

―選手との信頼関係を構築するうえで大切にしていることは。
「信頼関係というのは数字でも測れないし、雰囲気で感じるのかどうか。私自身、スタートで使っている選手以外はどうなのかなというのはずっと感じていたが、逸脱する選手というのも、チームの方向性、ベクトルが合っている中、一つの目標に向かっている中でのことであればまったく問題ないと思う。チームを良くしたい、勝ちたい、タイトルを取りたい、出場権を取りたい。その目標に全員が向かっていく状況が大事で、選手によって試合に出場できたりできなかったりというのはある。最後は指導者の方向性、情熱、選手に対する気持ちをストレートにぶつけているかだと思う。チームの中でいろんなコミュニケーションを取った中で構築していく。そこがチームづくりの大変なところだと思うし、代表チームはスポットで集まって、ストレスを抱えたまま戻してしまう選手もいるので、そのケアという意味では密に(コミュニケーションを)取っていかないといけない作業かなと思う」

(取材・文 西山紘平)

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