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ハリルホジッチ前日本代表監督会見要旨:後編(質疑応答)

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最後に立って挨拶するバヒド・ハリルホジッチ前日本代表監督

 日本代表監督を解任されたバヒド・ハリルホジッチ氏が27日、都内の日本記者クラブで会見した。(前編はこちら)

記者会見での質疑応答は以下のとおり

バヒド・ハリルホジッチ前日本代表監督
―協会がどういう思惑を持って解任したと考えているか。
「会長から言われたのは、選手を呼び、コーチとのコミュニケーション、信頼が薄まったことということだった。なぜか、最後の遠征で弱まったようだ。3年間、何も問題はなかったと認識している。私から疑問に思っているのは、だれとのコミュニケーションだったのか。選手からたくさんの励ましのメッセージをもらった。全部読みたいところだが、槙野選手は『JFAの決定について、非常に落胆している。ビックリもした。監督と何もコミュニケーションの問題はなかったと私は思っています。チーム内の一選手として申し上げたい。私たちのコミュニケーションを改善、さらに良くするのは必要かもしれないが、正直に申し上げます。もう一度、言います。私の認識では、そういった問題は存在しなかったと思っています。個人的には監督のおかげで私は随分進歩できたと思う。すごく厳しい監督でした。非常に厳しい指摘も受けた。そのおかげで今の私があると感謝したいと思っています。厳しい時間、苦しい時間もあったし、非常にうれしい時間もあったと思う。ハリルホジッチ監督のW杯を是非見たかった」というメッセージだった。

 時間があまりないので、全部のメッセージは読めないが、ベテラン、若手、トレーナー、メディカルスタッフからのメッセージもある。『監督は本当に厳しかったですね。それを苦ともせず、3年間ともに戦って参りました。おかげで、私は成長することができたと思います。私たちの父のような存在でした。親しみを込めて叱ってくれたのではないかと思います。この3年間本当に心から感謝しています。私たちを一人の男として成長させて、ここまでさせてくれたのは監督、あなたのおかげです。心よりの友情を』。テクニカルコーチからも励ましの言葉をもらっている。『一体どうしたんでしょうか。どうなったか私も分かりません。本当に信じられないし、本当に残念に思います』。彼はテクニカルコーチのメンバーの一人で、私と一緒に3年間過ごしてきた。

 もう一つは選手で、Bチームで一度だけ起用した広島の丹羽大輝選手です。広島からわざわざ飛行機に乗って、私を訪ねてきてくれた。『ありがとう』とわざわざ言いに来てくれた。一回だけの起用だった。それもBチームの。私が申し上げてきたことと現実、何がどうなっているのでしょうか。よく分からない。質問にきちんと答えられているか分からないが、もう一言言いたい。非常に家族的なスピリット、家族的なチーム、スタッフ全員が一つの大きな家族という形で私たちは仕事をしてきた。外国人は外国人、日本人は日本人ではなく、全員で一緒にディナーを食べようという機会を何度も設けた。おごるのは僕ですけどね。タダ飯だと思うと、みんなすごく食べるんです(笑)。W杯出場権を獲得した。本当は言わないほうがいいけど、一人ひとりにちょっとしたプレゼント、自分からのお礼の気持ちを込めて一人ひとりにプレゼントをした。“バヒドは見た目をほど憎たらしい奴ではない”と思ってもらえたのではないでしょうか。ピッチでは非常に厳しいかもしれないが、いつも厳しいわけではない」

―日本サッカー界がこんなひどい状況に陥った際に、サポーターはどう振る舞うべきか。サポーターに向けてのメッセージ。
「ありがとうございます。私のように傷ついている方が多くいると聞いて、このように励まし、サポートのメッセージをいただいたことは今までない。本当に今までこのようなことはなかったし、本当に深く傷付いた。なぜなんだろうという思いで、もう一度日本に来た。是非、一緒に東京の街を練り歩いて下さい。『ハリルだ』と多くの方々に道端でも声援を送ってもらえる。すごくうれしい。でも『何が起こったんでしょうか』とみんな質問してくる。これから私のほうから直接会長にも質問したいと思っている。私の得意分野である、最後の詰めという仕事をさせてもらえなかった。W杯ブラジル大会でも、かなり良い監督だったと自負している。W杯出場権を得られた日本でも、良い仕事をしたと思っている。初めて日本代表と仕事をしてきたにも関わらず、この続きができない。ここからだというときに、仕事ができなくなってしまった。やはり、非常に傷ついている。サポーターの方々と同じように深い傷を負っているが、まだ答えはない。でも本当にサポートしてくれて、ありがとうございます。心より感謝している。このように私をサポートして下さる方がこんなに大勢いらっしゃるのは、今まで本当に分からなかったかもしれない。一番素晴らしい試合、それはサポーターとの試合かもしれない。サポーターの心を得られた、そういった勝利をおさめたのだったら、すごくうれしいことだ。ありがとうございます」

―真実を探しに来日したと言っていたが、解任された理由の真実とは。
「残念ながら真実を探しに来たと言ったものの、まだ真実は見つかっていない。何人かの選手が不満を漏らしているとは聞いている。会長とやり取りをしているようだが、テクニカルスタッフの何人かともコンタクトを取っていたようだ。西野現監督が、その中でどういった役割を果たしたかは私には分からない。私が代表監督のとき、彼は『注意した方がいいかもしれない。選手が何か不満を漏らしている』と言いかけていたので、何か問題があったのだとしたら、本当だったら、会長が事前に『こういう問題が起こっている。どうするんだ、ハリル』と言ってくれればよかった。西野さんも事前に警笛を鳴らすなり、インフォメーションをくれれば良かったのではないか。

 あるスタッフと話したが、なぜ私の方のスタッフ、ジャッキーやモアンヌ、GKコーチとは話をしなかったのか。その選手は2名いるのでしょうか。不満を漏らしている選手は2名でしょうか。私の方には『感謝している』『ありがとう』『残念だ』というメッセージを15人くらいが直接送ってきてくれている。会長から前もって『バヒド、問題があるみたいだ』と教えてほしかった。解雇権を持っているので、解雇することについては問題ではないと思う。何か問題があったのなら、その原因は何なのか聞いてきてほしかった。会長の決断はもちろん正しい。私がすごくショックを受けているのは、『問題だ』とだれも何も教えてくれなかったことだ。そして突然、会長自らパリまで来てくれたが、突然の解雇だ。コミュニケーションと信頼関係が薄れているという内容が分からない。最初に申し上げたが、日々のミーティングや月曜の全体会議など、コミュニケーションは取っていたつもりだ。たくさんの仕事を私一人ではなく、スタッフ全員で構築してきた。なので、どういうことなのか、どうしてなのかという答えが知りたい」

―W杯で日本代表を応援するか。
「私は日本の永遠のサポーターです。いろんなことを混ぜることができない、まっすぐな性格なので、今まで関わってきたチームそれぞれと常に親密な関係を築きたいし、私の忠誠心は変わらない。日本チームおよび多くの選手たち、スタッフたちとまだ心が通っていると信じている。みんなどのような事態でこうなったか分からないまま。日本、これからもずっと頑張ってください。これは本当に心からの言葉だ。リップサービスではない。私のことについては好きなだけ、いろんなことを言ってください。ただ、私の忠実な、まっすぐな、正直な気持ちは心からのものだし、それについては揺るぎないものだと思う。今回の事態について何と申し上げたらいいのか。非常に心残りだ。どういうことなんでしょうか。

 もう一つお願いがある。個人的なメッセージになるが、許してほしい。チームに関わったすべての人たち、そしてサポーターにも先ほど感謝の言葉を申し上げたが、熊本県にも私は個人的に感謝したいと思っている。本当に特別なメッセージを直々に熊本県からもいただいた。W杯前に熊本に足を運ぶと約束したので、熊本にも行きたいと思っている。こういう状況なので、(監督は)代わってしまったが。熊本県と約束したのが、試合ごとに熊本のバッジをつけるということだった。次回、私は観光客として熊本に足を運ぶことだろう。友達から聞かれる。『君は日本に行くのか』と。もちろん、絶対に自信を持って、次も日本に来れる。今までやってきたことは仕事にしろ、一個人としても、自分で自分のことを言うのもあれだが、誇りに思っている。私も、そして私の家族も日本が大好きだ。素晴らしいところを観光した。北にはちょっと足を運べていないのが残念だが、まだ生きていますから。だから、またお目にかかりましょう」

―コミュニケーション不足が解任理由と聞いているが、同じような理由で解任されたことはあるか。
「初めてだ。今まで聞いたことがない。コミュニケーション(という言葉)はあまりにも意味が広すぎて、具体的にだれと、どういうことかというのを教えていただきたいと逆に思う。再来日から滞在5、6日目だが、多くの人と話をしてきた。私にはよく事情が分からないことが、私の知らないところで行われているような気がする。W杯の日本代表23人を選ぶというのは、日本だけでなく、どこの国であってもたくさんの軋轢が起こる問題だと思う。監督および選手にとって、W杯出場という意味はどういうものだろうか。監督や選手にとって素晴らしいプロモーション、名誉なことではないか。すべての試合で負けたとしても、W杯に出たということは非常にポジティブなイメージではないか。傷ついている理由は、すべてが整い始めていたところだったからだ。W杯に出るぞ、と。これから千葉、オーストリア、ロシアでの遠征が控えている。すべての準備を今後、事務局側と整えていこうとしていた。細かいディテールまで詳細を詰めていくところだった。どれだけ大変な仕事量か。10回くらいは日本対コロンビアのビデオを見たと思う。

 言い忘れたことがある。今年の2月に海外組の長谷部(誠)や(川島)永嗣、吉田(麻也)、長友(佑都)に会いに行った。そういったベテラン選手とコミュニケーションを取り、最近どうしているのかというような調査もしてきた。そのときには特にコミュニケーションの問題は起こっておらず、選手たちは非常にモチベーションが高かった。なぜか1か月後にはコミュニケーションが薄らいだ。だれとのコミュニケーションの話をしているのか分からない。準備はすべて整ったところで次の監督に受け渡す形になったが、その監督にとっても、非常に大きなチャレンジだと思う。これから4週間ともに働けると、ワクワクしていたところだった。どこまで行けるのか本当に分かっていたけれど、会長が来て『では、さようなら』と。突然の出来事だし、事前に何も知らされていない。何でなんでしょうかね。逆に私が知りたい。教えて下さい、みなさん。

 歴代監督にも話を聞いたが、『分からない』『何でなんだろう』と。おまけにこの時期にだ。どうしてなんだろうか。この時期に、こういった結果で本当にいいのだろうか。準備はしたと言っても、舞台はW杯だ。今の私がどんな心の内か分かってもらえるだろうか。街で出会う一ファン・サポーターが、私にどういった声をかけてくれるのか見てもらったら、分かってもらえるのではないだろうか。この段階で協会は、かなり大きなリスクを背負ったのではないかと思う。フランスでは『日本でそんなことが起こるの?』ということをよく聞いた。日本はリスペクト、お互いに尊重しあう国だと聞いていたし、そう思っていた。いかがだろうか。みなさんに問いかけたいと思う。代表監督に関する、こういったことは、いかがなんだろうか。

 きっと『ウクライナに負けたでしょ』というリザルトをバンとぶつけられたら理解できたと思う。会長にベルギーに来てもらおうと思ったが、『別件が入っている』と言われてしまった。『W杯まで一直線で頑張らないといけない。いろいろ準備しないといけないから、是非来てください』と言ったが。みなさんからの質問がないので、私から申し上げないといけないが、会長が記者会見のときに『テクニカルコミッティー(技術委員会)がコミュニケーションや信頼関係でたくさんの修復をしようと試みた』と話していたが、テクニカルコミッティーの存在すら私は知らなかった。だれも私のところに来て、話をしたことはないので、私は知らなかった。私のオフィスに来てもらったときに、握手はしたかもしれないが。

 西野さんはあとから加わったが、技術委員長の役を初めてこなす方だった。確かに彼とのコミュニケーションは非常に少なかったかもしれない。挨拶はもちろんしたが、すべてのトレーニング、会議で常に一緒にいた。このリストで行こうかと提案したとき、現地のローカルの選手を起用したりもしたので、彼の意見を求めたりもした。あまり多くを語らない人だった。試合中だが、第2GKコーチとともに選手たちの観察をしてくれとお願いした。ハーフタイム前に彼らは観察から降りてきて、いろんな情報をくれる。それでハーフタイムにロッカールームで彼らに話ができる。すべてのトレーニングにも彼は参加していた。いつも『良かった』と言ってくれた。一度だけ、西野さんに聞かれたのが、『フランスでの技術委員長の業務は何をするのか』と聞かれた。

 私の知らないところで、どういったやり取りがあったかは不明だ。あえて聞いていないが、他のメディカルスタッフが話をしたりすることはあったし、会長は私が望めば会うということをしてくださったようだ。そして技術委員長が、ベルギーで選手が一人、不平不満を言っているということを一度だけ聞いた。非常に友好的な関係性を保てていたという気が私はしていた。問題はどこにあったのか、みなさんからも是非聞いてもらいたいと思う。しゃべり過ぎたかな(笑)」

「最後に記者の方々にも一言申し上げたい。本当に心より御礼申し上げる。本当に心より、正直に申し上げる。私に入ってくる情報量は非常に少ない。批判もあると聞いている。日本の記者の方々は、それでも私には優しい人々だったと思う。このタイミング、この時期というのは非常に特殊なタイミングだ。何が起こっているのか本当に分からない。どうか記事を書くみなさん、客観的に記事を書いて下さい。私のことをどう言っても構わないが、日本代表は今すごい窮地に陥っていると思う。これから頑張って準備をしていくことだろう。フットボールの世界ではW杯はこれ以上ない試合になる。危険性をはらんだ、素晴らしいW杯だ。お願いだ。どうか彼らに準備の時間を与えてあげてほしい。日本代表、どうか良い試合、良いW杯をしてほしいと思う。記者の方々から今まで、全員ではないが、記者会見が終わるごとに拍手をいただいてきた。その拍手に本当に心より御礼申し上げます。ありがとうございました」

「本当はまだ多くのことを語りたかったが、『ちょっと時間オーバーです』と言われてしまった。またみなさんにお目にかかれるのを本当に心より楽しみにしています。心よりありがとうございました」

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