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東京五輪の“下剋上”再び…FW林大地がA代表デビューへ決意「いくらでも序列はひっくり返る」

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FW林大地(シントトロイデン)

 日本代表初招集のFW林大地(シントトロイデン)が27日、追加招集後初めて報道陣のオンライン取材に応じ、「素直にうれしかった。追加招集だったけどA代表に行くということで、選んでいただいたからにはお客さんじゃないとあらためて思った」と心境を語った。24日のオーストラリア戦(○2-0)は「行くからには最高の準備をして、いつチャンスが巡ってきてもいいように準備していた」というが、合流スケジュールの関係もあってベンチ外。ホームで行われるベトナム戦(29日)に向け、ここから本格的なアピールに入っていく構えだ。

 東京五輪5試合に先発出場した林は、FW大迫勇也(神戸)が代表活動直前のJ1リーグ戦で負傷したのを受け、19日に追加招集でA代表入り。W杯出場権がかかるオーストラリアとの大一番を前に大抜擢を受けた。ところがシントトロイデンは20日夜にリーグ戦があったため、長距離移動を経てシドニーに到着したのは試合前々日22日の深夜。「飛行機でもストレッチをしたり、できることはたくさんある。その中でも最高の準備をしていた」というが、オーストラリア戦に向けたトレーニングにはほとんど参加できなかった。

 合流後唯一の全体トレーニングとなったオーストラリア戦前日の公式練習も、ベンチ外が予定されていた林はフル参加が叶わず。森保一監督はオーストラリア戦の試合後、「今日のベンチ入りメンバーで、FWの選択肢として浅野(拓磨)と上田(綺世)の二人で考えた。どちらを先発で使うかはギリギリまで悩んだ」と明かしており、もともとオーストラリア戦の起用対象ではなかったとみられる。

 それでも林は闘志をたやさなかった。前日練習で「やっぱり試合に出たいし、練習を見ていても自分が入った時にどうできるかを考えていた」という林は「いいことではないけど、前日練習でも怪我が起きたりすることもゼロではないので、チャンスが来てもいいようにしっかりイメージはできていた」ときっぱり。FW浅野拓磨、FW上田綺世にアクシデントが起きることも想定し、真摯に準備を進めていた。

 また結局オーストラリア戦ではベンチ外で試合を見つめることになったが、目の前でW杯出場権を掴み取った一戦からは大きな刺激も受けた。「正直、この間のオーストラリア戦をA代表の一員としてピッチ外で同じ思いで戦って、先輩方と同い年とか、いろんな選手が戦っているのを見て、他人事とは思えないというか、自分が中心になって出たいと思った。自分も競争の中にどんどん入っていきたいと強く思った」。追加招集のチャンスを掴んだことで、新たな思いが芽生えたようだ。

 そうした熱い気持ちは29日のベトナム戦で爆発させていく構えだ。オーストラリア戦の勝利でW杯出場権が確定し、チーム全体が新たなトライをスタートさせる初戦。おそらく先発には大幅な入れ替えが行われる見込みで、林にチャンスが巡ってくる可能性が高い。

 林といえば昨年3月、東京五輪を間近に控えたU-24日本代表に追加招集で初選出。アルゼンチンとの連戦では、1試合目こそベンチ外だったが、2試合目でデビュー戦初ゴールを記録した。すなわち、五輪へのステップアップは今回の状況と重なる部分が大きい。林自身はそのことについて「いろんな方に似たような形だねって言っていただいているけど、自分的にはあまり気にしていない」と冷静に語るが、“下剋上”の再現は狙っているようだ。

「自分の経験で言えば、五輪はまさに3月まで一度もアンダー代表にも選ばれたことはなかったし、いくらでも序列はひっくり返るというのは自分が一番体験した」。そう当時を振り返った林は「ただ中途半端な気持ちや準備をしていたら絶対に起こることも起こらない。しっかりやって、そこからいろんなタイミングが重なってどうなるかという感じ。イメージできているというか、自分にある可能性を信じてしっかりやるしかない」と意識を高く掲げ、日々の練習に取り組んでいく姿勢を強調した。

 林は26日に行われた帰国後初のトレーニングでも、6対6のミニゲームや居残りシュート練習などで積極的にアピール。「しっかり練習できたのが昨日が最初だったので、代表にずっといる選手とサッカーをするのが楽しかった」と笑顔を見せつつ、「自分の特長を見せていかないとチャンスは転がってこない。チャンスを掴み取りにいきたい」と決意を語った。

 ベトナム戦で求められるのはFWとして最も重要な“結果”だ。東京五輪では攻守の最先鋒として好パフォーマンスを見せたが、残したゴールはゼロ。「五輪でもFWで一番試合に出たけど、結果だけ見たら点は取っていない。FWは点を取ってナンボだと思うので、点を取りたい」。東京五輪経由でカタールへ。林大地はベトナム戦で1年前の再現を果たし、再び世界への挑戦権を掴み取りに行く。

(取材・文 竹内達也)
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