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A代表初招集も別メニュー続くMF川崎颯太が心境吐露「自分自身は諦めずに…」収穫は海外組からの学び

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MF川崎颯太(京都)

 21歳で日本代表に初招集されたMF川崎颯太(京都)は合流から1週間が経った現在も、合宿直前に出場したJ1リーグ戦での負傷が響き、全体練習に完全合流できていない。18日の取材対応では20日のキリンチャレンジカップ・ペルー戦に向けて「2日前にも練習に入っていないというのは厳しい状態だと思うし、(出場の)可能性は限りなく低いと思う」と厳しい現実を受け止めつつも、「なんとかリハビリしてきたし、今日までコンディションを上げてきたので、試合が終わるまでは自分自身は諦めずにいようと思っている」と意気込みを語った。

 川崎は今月11日に行われたJ1第17節・新潟戦で、相手選手との交錯によって右足を負傷。合宿初日の12日には「試合に出るためにここに来たので、それを優先して最善のケアをしてもらって、試合に出られるように調整した」と意欲を燃やしていたが、15日のキリンチャレンジ杯・エルサルバドル戦までは一度もピッチで練習できず、16日から合流した後も対人要素のあるメニューには入っていない。

 川崎はペルー戦を2日後に控えたこの日、自身の状態について「だいぶ痛みも腫れも引いてきて、ランニングや普通にパスするとか、強い動きもできるようになってきたけど、シュートとか強いキックで少し痛みが出てしまっていて、まだ調整している」と説明。「ステップとか強い動きは出ているので対人に入れるとは思うけど、シュートが打てないとかロングボールが出せないとプレーを制限した中では中に入るのが認められていなくて、悔しいけど仕方ない」と悲痛な心境を明かした。

 そうした中でも川崎は代表チームに帯同することを決断。「自分としてはまずは20日の試合になんとしても出られるように持っていく気持ちがあったので離脱したくないという思いを伝えたし、チームも僕の意見を尊重してくれた」。A代表という貴重な場で何か収穫を得るべく、宿舎などでは積極的に周囲の選手とコミュニケーションを交わしているようだ。

「ほとんどの選手と会話はできていて、海外に行っている選手は海外の環境であったり、海外のレベルで生の声を聞けているので刺激になっている」

 そんな充実感をのぞかせた川崎は、特に交流している選手としてMF三笘薫(ブライトン)、MF相馬勇紀(カサピア)、FW上田綺世(セルクル・ブルージュ)、DF伊藤洋輝(シュツットガルト)の名前を列挙。「練習メニューであったり、1週間のスケジュール、筋トレの頻度、クラブの環境や試合への取り組み方も聞いている」と会話の内容が踏み込んだものになっていることも明かした。

 さまざまなクラブの事情を聞いた中での印象的なエピソードとしては「チーム全員が筋トレできる施設があるのはすごいなと思った。京都サンガだと全員が筋トレするとなるとぎゅうぎゅうになってできないけど、それが全員ができる環境であるとか、終わってすぐにご飯が食べられる環境とか、お風呂とかサウナとか水風呂があるという点でも、一流のクラブはすごいなと思った」と環境の違いを挙げた川崎。そうしたコミュニケーションを通じて「自分がいずれ海外に行く時にいいイメージができている」とも述べ、自身も後に続いていく野心をのぞかせた。

 またエルサルバドル戦翌日の16日からは一部メニューに合流しており、間近で見つめるトレーニング風景からも大きな刺激を受けている様子だ。

「W杯もテレビで見ていたりした中で、ピッチでゲームには一緒に入れていないけど、一人一人の要求もあって、一人一人がちゃんと考えながらサッカーをしていると感じた。だからこそプレーの切れ目で近いポジションで話したりとか、要求し合ったりというのがあって、素晴らしい。京都サンガでも見られる光景だけど、代表は短期間で擦り合わせないといけない意味で、より声や話が活発に行われていることが刺激になった」

 同じポジションでプレースタイルも似ているMF遠藤航(シュツットガルト)からは“プレーの連続性”を見習った。

「自分との違いとしてはイレギュラーが起きた時の対応が本当に速い。味方がパスミスをしたあと、すぐに切り替えて守備をして、最後にシュートブロックをしたシーンが今日もあって、プレーの連続性があるなと。一つ一つの技術もあるけど、それ以上にプレーが切れ目ないところ、集中を切らしていないところはまだまだ自分が至らないところだなと思った」。さらに「自分も意識するだけで変われるところだと思うので身につけないといけない」と言葉を続け、自身のプレーにも活かしていく構えを見せた。

 また川崎はパリ五輪を目指すU-22日本代表の常連選手。A代表帯同のため今月の欧州遠征には帯同していなかったが、これから再び活動に入ることがあれば、自身が欧州組の選手たちから学んだA代表での基準を、今度は周囲に伝える役割が求められる。

「要求し合うところであったり、擦り合わせていくところは五輪でなお必要になる。前々から活動はしているけど、どんどん人が入れ替わったりしているので、その中でも剛さん(大岩剛監督)のしたいサッカーを達成するために自分たちが話したり、監督・コーチを巻き込んでみんなで意見をぶつけ合うのが必要だと思った。それを自分が五輪の活動に入るために実践していきたい」

 そして何より重要なのはもし今回の活動で出場機会が得られなかったとしても、個人としての成長をここからも続けていくことだ。A代表の場で自身の持ち味をアピールし切れなかった悔しさを乗り越え、Jリーグの舞台でさらなるパフォーマンスを発揮していく姿が求められる。

「練習に入れなかったりして、悔しさは残っているけど、自分が日頃からJリーグで、J1でプレーしているところを評価してもらっていると思うので、だからこそこの悔しさはJ1で。J1で自分がもっといいプレーをすることで次も呼んでもらえると思う。そう信じてこれから日頃の練習や試合で出していけたらと思っている」。大きな期待を感じさせた21歳での初招集。パリ五輪まであと1年、北中米W杯まであと3年、飛躍のチャンスはまだまだ残されている。

(取材・文 竹内達也)

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