beacon

憧れの“欧州出張”をA代表で叶えたDF森下龍矢、長距離移動も時差対策も「すごく刺激的で、難しいけど面白い作業」

このエントリーをはてなブックマークに追加

DF森下龍矢(名古屋)

 6月シリーズで日本代表に初招集され、初戦のキリンチャレンジ杯エルサルバドル戦で早速デビューも飾ったDF森下龍矢(名古屋)が、欧州遠征に臨む9月シリーズへの生き残りを果たした。「めちゃめちゃ嬉しいですし、レベルが高い中でプレーできることを本当に嬉しく思います」。合宿3日目の練習後には報道陣の取材に応じ、満面の笑みで喜びを表現していた。

 6月のキリンチャレンジ杯は国内での活動だったため、森下にとってはこれがA代表の選手として初の海外遠征。国内組は招集メンバー26人のうち4人だけで、J1リーグ戦日程の都合でMF伊藤敦樹(浦和)と二人での長距離移動になったが、日本を出発する時から高揚感に包まれていたようだ。

「僕もそんなに長く飛行機に乗る機会はないし、今回ちょっと良いクラス……ビジネスクラスに乗ってきたんですけど、いつもはエコノミーだから『なんだこれめっちゃいいじゃん』とか思いながら……(笑)」。機内では移動中のNetflixや到着後のコンセント事情など、たわいもない話をしつつ、時差ボケ対策の準備を進めていたという。

「たとえばトレーナーの方が『日本時間何時でドイツ時間何時だから、このタイミングで機内食が出るからいま寝ておこう』とかいろんな情報をくれて、自分のコンディションを考えていくんですが、今まで時間軸は一つだけだったじゃないですか、日本という。ただそれがドイツととかになって、時差がある中でやるというのはすごく刺激的だし、難しいけど面白い作業だなと思いました」(森下)

 もともと幼少期から海外に憧れがあったという森下。明治大時代には就職活動で欧州赴任を志しながら保険会社『MS&ADインシュアランスグループ』を第一志望にし、見事に内定を勝ち取っていた過去を持つ。結果的にはプロサッカー選手の道を選び、日本代表にも上り詰め、奇しくもパートナー契約を結ぶ同社の名前が記されたピッチでプレーすることになったが、今回はさらに念願の“欧州出張”のチャンスも掴んだ形となった。

「もしかしたらMS&ADのこれ(バッジ)を着けて来てたかもしれないですね……というのは冗談ですけど(笑)、でも本当に僕自身、海外にという前向きな意識や、海外に行きたいって気持ちがあったので、それがこうして大好きなサッカーを仕事としている中で行けるというのはすごく嬉しいなと思います」

 森下にとってはそれほど特別な海外遠征のチャンス。ここで少しでも多くのものを学び取り、今後のA代表定着、そして自身のサッカーキャリアにつなげようとしている。

「Jリーガーとして海外に来られることがすごく刺激的だし、(招集メンバーは)こっちを本拠地にしてプレーしている選手ばかりなので、そこからどれだけいろんなものを盗めるかが僕の今回の合宿の大事なところになると思っています」

「代表は2回目なのである程度みんなと話せるようになっているし、(ユニバーシアードなどで共に戦った)仲良しの三笘薫とか上田綺世と一緒にぺちゃくちゃ喋りながら私生活を過ごしていますけど、練習に臨む準備みたいなところは本当に一流の選手たちなので全然違うし、僕もそこに食らいついていくというか、新しい学びを得ながらやっていけているのですごく充実しています」

 欧州トップレベルで日々プレーしている同世代から刺激を受け、すでに彼らの取り組みを自身の日常に取り入れようとしている。「彼らは練習の1時間前からストレッチして、モビリティして、いまは午後練習だけど午前中には筋トレ場に行って、みんな筋トレをしている。人それぞれだけど自分のルーティーンみたいなものをすごく持ってるなと感じる。僕もルーティーンはあるけど、こうしたイレギュラーな日程のなかでどうやって自分のルーティーンをハメ込んでいくかはすごく難しい中で、それがいい経験になっていて、すごく学べているなと思います」。これまで練習後に筋トレをしていたが、今回の合宿では練習前の筋トレにトライし、自身の変化と向き合っているという。

 そうしたピッチ外の取り組みを続けながら、何より重要なピッチ内でのパフォーマンスも研ぎ澄ませていく構えだ。今回の欧州遠征ではまずドイツとカタールW杯以来のリターンマッチを控える。日本代表の常連選手であってもなかなか国同士で対峙する機会の少ない欧州の列強国とぶつかる貴重なチャンスだ。

 カタールW杯のドイツ戦について「前半で得た課題をしっかり後半にアジャストしてプレーしている姿がすごく印象的だった」と振り返った森下は「今回も僕たちのやり方とか、相手の出方もありますけど、上手くいくことばかりじゃないと思うので、途中でどれだけチーム全体が出た課題に対してアジャストしていけるかが大事になる」と展望。ドイツのスター選手たちを警戒しつつも、サイドの上下動という自身のストロングポイントを表現していく姿勢を強調した。

「アップダウンするに越したことはない。たくさん攻撃に関わって、ピンチになったらたくさん戻るのはチームにとってプラスになることだと思うし、僕がそれを良さとしているので、そこはもう思う存分やっていきたい。その中でその中でクオリティーをどれだけ上げていけるか。ただがむしゃらに走るだけじゃなくてとか、ただがむしゃらに戻るだけじゃなくてどこに戻ったら効果的なのか。どこに戻ったら効果的なのかというのはこの2、3か月、グランパスでしっかり取り組んできたので、それを思い切りプレーで表現できたらいいなと思います」。戦いに臨む気持ちはいつも万全。あとは残り2日間のトレーニングで準備を続け、自身の全てをぶつけていく構えだ。

(取材・文 竹内達也)
●北中米W杯アジア2次予選特集ページ
竹内達也
Text by 竹内達也

TOP