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初戦失点の後悔とアジア大会への覚悟…U-22日本代表GK藤田和輝が90分間保った“たった1本”へのアラート

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ピンチを防いだGK藤田和輝

[9.25 アジア大会GL第2節 U-22日本1-0パレスチナ 杭州]

「前回の試合でああいうミスをしてしまったので絶対にゼロで抑えたい気持ちがあった」

 20日に始まったアジア大会。初戦に続いてU-22日本代表のゴールを預かったGK藤田和輝(栃木)は、前の試合での1失点について強い悔いを残していた。

「イージーな形だった」と振り返るのは、カタールの選手が放り込んできたロングボールが結果的に奇襲となってGK頭上を破るゴールになってしまった場面だ。やや不運な形にも見えたが、藤田はその場面をハッキリと「ミス」と断言した上で、「この大会で試合に出させてもらっている責任を果たさないといけない」と強い覚悟を持ってパレスチナとの第2戦に臨んでいた。

 試合はほぼ一方的に日本が押し込んでいく流れの中で散発的にカウンターが飛んでくるというGK泣かせの流れだった。ただ藤田は「常にアラートでいることを徹底した。たった1本のボールでピンチになることは前回の試合で学んだこと」と研ぎ澄まし、「たった1本」に備え続けた。

 その1本はかなり唐突な形で訪れた。後半14分、相手が放り込んできたロングボールを、フリーだったDF山崎大地(広島)がヘディングで味方に繋ごうとして相手に渡してしまったことで、攻守が一気に切り替わった。素早いパス交換からDFの背後を取られて抜け出される日本にとっては最悪のショートカウンターが成立しかけた場面だが、藤田はまさに「アラート」だった。

「ミスは誰にでもあること。あそこから裏へのパスが出てくることは予想できたので、まずは(そのパスに対して)先に触ることを意識した。それが難しいとなったら、できるだけ寄せて、あとはシュートストップ」

 抜けてきた相手に対して構えつつ、ワンタッチでのボレーシュートへ鋭く反応。「得意なプレーだし、自分の良さを出せた」と胸を張ったように、機敏なセービングで失点必至の状況を見事に切り抜けてみせた。

「あそこで失点していたら難しくなったと思う」と振り返るように、一気に流れを持っていかれかねない場面だった。また第1戦の反省を踏まえ、どれほど試合を支配していても常に集中してピンチに備え、素早く対応できた点もポジティブなこと。「浜野GKコーチにも言われてきたこと」を実践するプレーだった。

 もう一つの持ち味である「新潟のときからずっとやって来た」ビルドアップに絡む部分では相手が前から追ってこなかったことで余り出せなかったが、「第1戦ではそこ(ビルドアップ)でも持ち味を出せていたし、この代表で求められる部分」については自信も持っている。よりタフな相手が増えるノックアウトステージでは、そちらの個性を発揮する機会も増えるはずだ。

 藤田はこの大会について問われて「僕が生き残っていくために」とも言った。パリ五輪を目指すチームには、「海外でやっているような選手もいるし、試合に出ているGKも多い」としながらも、「まだまだこれからオリンピックの枠にも入っていけると思っている」と強調する。今季、栃木では28試合に先発出場しており、そこでのプレーを通じて自信も積み上げたからこその言葉だろう。

 そのためにまずは今大会、ゼロ失点を積み上げてチームの勝利に貢献しつつ、一番良い色のメダルを目指していく。

(取材・文 川端暁彦)

●第19回アジア大会特集ページ
川端暁彦
Text by 川端暁彦

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